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かつて🐟だった俺たちへ【ポケモン】1,222字

 
 そいつはピチピチ跳ねるだけ。

 名前は大仰なのに何の役にも立たない。


 私はRPGの戦闘が苦手だ。同じ事の繰り返しに感じて飽きてしまう。

 ポケモンもそうだ。だから私の歴代の旅の記録はいつも途中で止まっている(とはいえ最近のシリーズはプレイしていないが……)。

 最初の3匹から1匹を選ぶところと、適当にゲットした虫ポケをお手軽に最終進化させるところまでが楽しさのピークではないかなぁと個人的には思っている。

 そしてもう1つ。私のお気に入りのポケモンを進化させるところ。いや、お気に入りなのか?

 焦燥感、義務感、必然性、情け、嫌悪、憐憫、期待、投影、気まぐれ、暇つぶし、ドラマ、感動、達成感、区切り、etc.

 何はともあれ、私は必ずあるポケモンを育てていた。そしてそれが進化した辺りで満足して遊ばなくなっていた。つまりは、私にとってポケモンとはそいつの育成とイコールだったと言える。

 詐欺師のオジサンから高額で売りつけられるポケモン、そいつしか釣れないボロの釣り竿でいくらでもゲットできるポケモン。一切の戦う技を覚えない役に立たないポケモン。

 そう、それがコイキング。

王冠を被った金魚

 コイというか金魚が王冠を被ったような姿だったと思う。

 ポケモンを進化させるには経験値を得る必要がある。経験値はバトルしないと得ることができない。しかし、コイキングは戦う技を覚えないのでバトルできない。

 コイキングに経験値を積ませるにはどうするか。他のポケモンの経験値を横取りするのである。

 コイキングを一度でもバトルの場に出せば、戦わせずにすぐに他のポケモンに取り替えたとしても経験値が貰える。この繰り返しで経験値という名の何かをコイキングに与えていくのである。

 バトルの場に出さなくても経験値が貰えるチートな道具もあるらしいが、博士の助手は私にはくれなかった。

 その代わりに名前は忘れたが与えるとレベルアップするドーピング剤のような物はコイキングに打ちまくったと思う。値段が高いので買わずに道に落ちていたものだったと思うが。

 経験を積んだ気になっているコイキングもレベル20までいくと進化するのである。ブルーアイズホワイトドラゴンに。名前は忘れたが龍みたいなやつ。つよつよポケモンである。

王冠だけが名残

 つよつよになったらなんかもういいかなって興味がなくなる。別にこの進化した龍は好きじゃないが、冷遇されていたコイキングが鯉の滝登りの如く龍になる過程に面白さを感じるのだ。

 自分に重ねていたのかもしれない。ポケモンをしていた当時、私は何でもないコイキングみたいな人間だった。凡庸で竿垂れれば釣れるどこにでもいるポケモン。


  今じゃあ私も、進化して……ブルーアイズに……。

 
 いや、考えたらレベル19で止まっていましたわ。あとレベル1でつよつよポケモンに進化できるんだけどなぁ。

 
 誰か手助けしてくんない? 

 あと経験値1万あれば進化できる気がするんだわ。

 1万あれば今度は勝てる気がする。勝ったら必ず返すから1万円貸してください。


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見出し画像に写真をお借りしました。


エッセイ風











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