数式の美学

昔見た福山雅治主演、ガリレオシリーズの映画『容疑者Xの献身』のワンシーンで、犯人役の堤真一が言った「あの数式は美しくない」というセリフが妙に印象に残っている。
そのセリフがきっかけで、学生時代の2人は意気投合するというバックストーリーだった。


私は中3くらいから数学が苦手になり、高校ではもうちんぷんかんぷん、受験も数学を受けなくてもいい学部を選んだ。
そんな数学嫌いの私だが、数年前子どもたちに勉強を教える仕事をするようになったことで、数学の学び直しをした。
すっかりあやふやになっていた分数計算あたりから始めたのだが、ひさしぶりに触れる計算問題に、パズルを解いていくような楽しさを感じ、そういえば中学の時も方程式や因数分解までは楽しかったなぁと思い出したりしていた。
そして少し長い計算式になると、いかに途中式を短く簡素にできるかという楽しさを感じるようになった。
「あの数式は美しくない」というセリフに、自分の中で共感できたと思えた瞬間だった。
内容は雲泥の差だとは思うが、数学の面白さは、数式の美学を追求する事だと感じた。
その感覚を、自分の教室で学んでいる子どもたちにはたびたび伝えている。
計算はゴールへの道はいく通りかあるが、どの道を進むかがセンスが表れるところだと。

先日ひとりの生徒と間違った問題の直しを一緒にしているときに、「私だったらこんな風に解く」とアドバイスをすると、生徒から「あぁ、それは美しいですね!」という言葉が返ってきた!
この時の喜びを分かってくれるだろうか?
小学校5年生の子が、数式に美しさを感じてくれた!
私がたびたび言っていた事が、この子には伝わっていたんだ!と嬉しさが爆発してしまった!
その後もずっとその生徒と、こうしてみたらどう?ここは良いね!など、一問一問あーだこーだ言いながら解き進め、あっという間に時間が過ぎていった。
少数の0.125を分数にすると125/1000だが、そのままで通分して足し算するよりも、1/8に約分してから通分して計算すれば、ほぅらこんなにスッキリ!という程度の内容なのだが、そのひとつの計算に、年の差を超え同じ感覚で向き合えた事がとても嬉しかった。

小さな頃から通ってくれている子どもたちは、私が敵わないくらいの計算力を身につけている。
暗算力が高いと、どんな途中式で進んだのか分からないくらい省略して、答えに辿り着く子もいる。
じっとしていられなくて、親にこの子は勉強ができないからと連れてこられたけれど、数学的なセンスは抜群ですよと言い続け、今では学校の問題は超簡単と言って自信にあふれている子もいる。

あれ、なんだか、やっぱりこの仕事が楽しいと思えてきた。
もう仕事を辞めようと思ってグルグル思い悩んだのは、この感覚を思い出す為に必要な時間だったのだろうか?
深夜の自問自答は出口が見えないから、もう寝よう。
でもなんだか、気分が良い😊

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