見出し画像

地域限定旅行業務取扱管理者試験に合格しました

観光庁の定める国家資格である『地域限定旅行業務取扱管理者』の令和5年度試験を9月に受験していて、今月合格発表があり、無事に合格しました。

地域限定旅行業務取扱管理者試験合格証の画像
合格した証拠写真

個人的には結構インパクトのある出来事だったので、色々書き留めておくことにします。


何をできる資格なのか

地域限定旅行業務取扱管理者は、旅行地域を限定したツアー商品を販売できるようになる資格です。

いわゆる「日帰り紅葉狩りバスツアー」とか「2泊3日バリ島リゾートツアー」的な旅行商品は、『募集型企画旅行』と称され、その旅行パッケージを誰でも企画・販売できるわけではなく、日本の法律では旅行業の許可を受けた事業者だけが販売できることになっています。

旅行業の許可には第一種・第二種・第三種・地域限定の4種類があり、旅行業の許可を取るには営業所に旅行業務を取り扱う次の専門資格を持った者が在籍している必要があります:

  • 総合旅行業務取扱管理者(第一種のみ実施可能な海外旅行を取扱できる)

  • 国内旅行業務取扱管理者(国内旅行を取扱できる)

  • 地域限定旅行業務取扱管理者(地域限定旅行を取扱できる)

旅行業の登録制度に関する一覧表の画像
「旅行業の登録制度①(種類・登録業務範囲)」(観光庁)を加工して使用

地域限定旅行業とは何か

地域限定旅行業は、拠点地域(旅行業許可を受けた営業所の所在する市区町村)またはその隣接自治体や、接続する交通機関のある遠隔自治体を発着地とする範囲での企画旅行を実施できる旅行業者です。

元々は拠点地域と隣接自治体だけだったのが、平成30年より地域の交通・観光の実態を踏まえた特例により改正され、隣接していない地域でも交通機関がつながっていれば発着地とすることができるようになりました。

地域限定旅行業の実施区域を説明する画像
「第三種旅行業・地域限定旅行業の実施区域が見直されました」(観光庁)を加工して使用

第1〜3種旅行業は登録要件として決して安くない財産条件と営業保証金の供託が必要になるのですが、地域限定旅行業はその金額が最も低く設定されているのが特徴です。

地域限定旅行業が設置された背景

地域限定旅行業という区分が創設されたのは2013年です。着地型観光の促進をする上で、先述の財産要件等による参入障壁を低くして地域の事業者が旅行商品を開発しやすくするために設置されました。法改正当時の報道を引用します:

 地域限定旅行業は、着地型旅行の商品化を進めたい地域の観光協会や旅館ホテル、NPO法人などが旅行業へ参入しやすくするため、業務範囲を限定したうえで営業保証金の供託額と基準資産額を100万円以上(第3種は300万円以上)に引き下げて新規参入を促す。これまで旅行業参入には営業保証金供託額の高さがハードルになり、着地型旅行推進の1つの障壁になっていた。

「地域限定旅行業を創設 観光庁が法改正」Travel Vision,2013年1月8日,2023年10月25日閲覧

どういう試験なのか

試験は次の3科目に関する知識を問う出題がされます:

  1. 旅行業法

  2. 旅行業約款・運送約款・宿泊約款

  3. 国内旅行実務・国内運賃料金

約60%以上の正当率を、各科目で達成できれば合格です(全科目合計の60%ではない)。

試験は年1回、毎年9月の初頭に実施され、試験会場は関東(東京or神奈川)と関西(大阪or兵庫)のみです。回数はともかく、会場が東京と大阪しかないのは厳しい……というか着地型観光人材の創出という観点からすると、2大都市でしか開催しないってのはいかがなものか。

なお合格率は例年40%前後で推移しています。

なぜ受験したのか

地域限定旅行業の存在を知ったきっかけ:郡上での経験

私が地域限定旅行業の存在を知ったのは2019年頃です。当時は、偶然出会った岐阜県郡上市という山間の地域に強い興味をもち、自分が住んでいる名古屋市と郡上市とを頻繁に行き来する二拠点生活を送っていました。

郡上は「郡上おどり」という、ユネスコ無形文化遺産にも認定された伝統の盆踊りが有名です。郡上おどりは、高速バスや鉄道が通っていて遠方からのアクセスが比較的容易な八幡地区で催され、毎年多くの観光客が訪れます。

私はそうやって郡上を訪ねる人たちの認識が「郡上=郡上おどり」だけで終わってしまうのが、本当にもったいないと感じていました。郡上に足繁く通い、山深い郡上のいろんな地区を訪ねるたびに、もっと奥深いところにもっと地域の面白さが潜んでいることに気づいたからです。

しかし、そういったディープな魅力へのアクセスの課題を強く感じました。自分は幸い車があったのである程度どこへでも行けたのですが、車がない人はみんな足に困っていました。郡上に来る人や郡上から帰る人を自分の車に乗せて送迎したことは一度や二度ではありません。

そんなことを重ねるうちに「名古屋からバスでも出して、ダイレクトに深淵へ送り込んでやればいいんじゃないか?」と考えるようになったのですが、調べてみるとすぐ旅客運送周りの法律の壁にぶち当たりました。それでも何か抜け道がないかとさらに調べていくうちに知ったのが、地域限定旅行業の仕組みでした。

とはいえ当時は金なしフリーランスで生活に余裕がなく、また開催時期や試験会場の限定など、諸々の受験ハードルを越えられないうちにコロナが流行したりして郡上に行く機会も減り、結局受験しないまま年月が過ぎました。それでも今頃になって受験した理由は:

受験理由1. 人から刺激を受けて

もともと管理栄養士の国家資格をもつ妻が、ある検定を今年の春先に受験して合格したのを横目で見ていたのですが、同じ家の中で試験勉強してる人がいるのを見ると自分も久々に何か資格試験受けてみようかなという気持ちが芽生えました。

そんな折に、かつて調べていた地域限定旅行業務取扱管理者試験のことを思い出した次第です。

受験理由2. 父親の野望のため

私の父親はここ10年以上織田信長の研究、特に少年期を過ごした尾張時代の研究を専攻していて、昨年は出版社の依頼で『若き信長の知られざる半生』という本も出版しました。

NHK『歴史探偵』に出演したり、大河ドラマ『どうする家康』の桶狭間の戦いで自説が採用されたり、講演の登壇依頼があったりなど、最近は研究者としてそれなりに世間にも評価をしていただいているようです。

その父が昔からやりたいと言ってきたのが『信長観光』の事業化です。信長に由来する史跡は今も名古屋周辺の各地に200以上残っており、前出の本はそれらへのアクセスガイドにもなっているのですが、そういった史跡を巡って信長の足跡を辿るツアーをやりたいという想いが研究を始めた当初からあったようです。『信長の野望』ならぬ『父親の野望』。

父は20年以上前に独立起業した経営者で、その会社には自分も在籍していた時期があり、あれこれぶつかった結果、私は会社を辞めてフリーランスになりました。そんな経緯もあり父とは長年相容れないものがありましたが、事業承継が完了したこと、私が結婚したり自分で会社を起こしたりしたことなどもあって以前より多少はマシな関係になったような気がします。

先述のとおり父の長年の研究もようやく少し花開き始めたので、今のタイミングなら地域限定旅行業務取扱管理者資格があれば何か面白いことができるかもしれないと思い、今年の受験を決意しました。

これからどうするのか

実は初めて運転免許以外の国家資格ホルダーになったんですが、この事実だけでもかなり自尊心に効いてます。実質的に業務独占資格なのも良い。

とはいえ持ってるだけでは意味がないので、次は地域限定旅行業の営業許可申請を進めていって、来年から企画旅行商品を展開していきたい所存です。

信長観光だけに留まる気もさらさらないので、名古屋を起点に着地型観光を色々作っていきたいです。名古屋の観光でこんなネタをやりたかった、という話があれば、ぜひご相談ください。

フリーランスでホームページ制作のコーディング外注を請け負っています。詳しくは以下をご覧ください。ご依頼お待ちしています。 https://note.com/tsukurumizuno/n/n533ff49fabbf