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本の舞台をめぐるオンラインツアー 第1弾「ヤマユリワラシ」

2016年に出版された澤見彰の歴史ファンタジー小説「ヤマユリワラシ」。亡くなった人の冥福を祈り、死後の世界で幸せに暮らしてほしいという姿を家族や友人が絵師に描かせた「供養絵額」を題材にした本です。今回は、小説の舞台になっている岩手県遠野市のスポットを巡るオンラインツアーを3回に分けて開催します。

1冊の小説を切り口に物語の世界から少し飛び出して、小説にでてくる実在のスポットを旅してみませんか。

<ヤマユリワラシあらすじ>
嘉永三年(1850)南部藩、遠野。城下に住まう外川市五郎は出世や武道よりも絵を好む、風変わりで孤独な青年。ある日、深紅の山百合を探して迷い込んだ山里で、彼は座敷童のような少女、桂香と出会う。やがて共に暮らし始めたふたりは、流行病や貧苦で世を去った人々に“ありえたかもしれない幸福”を刻んだ板絵を生み出していく...。


本オンラインツアーは、NPO法人遠野山・里・暮らしネットワークが運営する、遠野や東北で息づく暮らしぶりそのものを楽しんでいただくための案内所「遠野旅の産地直売所」と、つくる大学のコラボ企画。澤見彰著の歴史ファンタジー小説「ヤマユリワラシ」を取り上げ、本の舞台をめぐるオンラインツアー第1弾を開催します。

幸せな、死者の絵

一緒に多くの時間を過ごしてきた家族、友人、愛する人。もしも身近な人が、思い半ばで死んでしまったら、あなたはどうしますか?

亡くなった人の思いをどう昇華してあげたらいいのか。そもそも、「昇華してあげる」なんて、おこがましいことなのかもしれません。それでも、残された人が死を乗り越えて前に進むためには、どのように昇華できるといいのでしょうか。

私はこれまでその方法を考えたことがありませんでした。「供養絵額(くようえがく)」という存在を知るまでは。

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「供養絵額」ーー。それは故人の在りし日の姿を彷彿とさせるような風景を描いた浮世絵風の鮮やかな板絵です。死者の戒名や没年号等が記されているのが特徴ですが、それに気づかなければ、理想的な明るく楽しい日常を切り取ったような場面が描かれているように見えます。

岩手県の内陸に位置する遠野市では200点以上の「供養絵額」が市内の寺院で確認されています。特定の宗派や寺院が主導したものではなく、江戸時代中期から明治中頃、自然に行われていた民間信仰だったそうです。


残されたものの願いと、死者への冥福の祈りが込められた絵。写真がなかった時代、死者の幸せな姿を、絵を通して思うことができ、辛い想いを優しく昇華していく。そんな独特の供養の仕方が、供養絵額です。

遠野市には多くの供養絵額を手がけた絵師がいます。その絵師の名は外川仕侯、通称外川市五郎。今回取り上げる小説「ヤマユリワラシ」は、数少ない来歴が判明している絵師・外川仕侯をモデルにした歴史ファンタジー小説です。

ありえたかもしれない幸せを描くという死生観

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「妻の‥‥類の姿絵を描いてほしい」 ーー「ヤマユリワラシ」より

武士でありながら絵を描くことを何よりも好む変わり者の外川市五郎に、亡くなった妻の姿絵を書いてほしいと同輩が依頼するところから、市五郎の絵師としての一歩が始まります。

暗い絵しか描けなかった外川市五郎に大きな影響を与えるザシキワラシのような少女、桂香との出会い。澄んだ目で変化の術を見抜き正体を暴いたことから、不思議な縁を築いていく年老いた化け狐と死の予感。市五郎は、桂香とともに、流行病や貧困で世を去った故人を思う人の話を聞き、故人の”ありえたかもしれない幸せ”を描いていきます。


物語の世界へ旅をする

「ヤマユリワラシ」は歴史ファンタジー小説ですが、私は架空の物語とは思えない胸のざわめきを覚えました。市五郎が絵の具を買いに行く一日市町、多賀狐が棲みつく多賀神社、桂香が納戸に引きこもって暮らしていた孫左衛門の家の跡。
これらの場所はすべて、実在するのです。

そして遠野市は柳田國男が記した「遠野物語」の舞台でもあります。古くからの言い伝えや神話、伝説、民話が残る場所。「ヤマユリワラシ」に出てくる多賀狐やザシキワラシも、遠野物語に出てくる話と関係しています。遠野物語は土地と密接につながり、今も続く物語だからこそ、出会える人、足を運べる場所があります。

今回、「ヤマユリワラシ」を題材に、物語ゆかりの人と共に、物語に登場するスポットを巡るオンラインツアーを企画しました。

内容

1.イントロダクション
zoom入室。講師紹介・タイムスケジュールのご案内

2.「ヤマユリワラシ」の一部を取り上げ、内容を共有
当日取り上げるパートを参加者で読む時間を取ります。

3.物語を考察。出てきた物語の舞台のスポットを確認
読んだパートの内容を参加者で共有し、物語の舞台のスポットを地図で確認。

4.物語ゆかりの人のガイド付きで物語のスポットへ
物語の舞台のスポットへ画面越しにお連れします。物語ゆかりの人の解説とともに物語の場所を訪ねます。

「ヤマユリワラシ」を読了していなくても、楽しめる内容となっています。一緒に物語の世界を深く味わってみませんか。


本の舞台をめぐるオンラインツアー第1弾「ヤマユリワラシ」

●第1回 1/30(土)13:00~15:30

主人公の外川市五郎が何度も訪れる多賀狐が棲みつく多賀神社、モデルとなった外川仕侯の子孫の方が運営されている外川酒店さんとその周辺を巡ります。

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「まったく、あいかわらず狼やら熊やらに化けて、人を驚かせているのですね」
「お前のほかは、存外ころっとだまされてくれるのだがなぁ」
                    ーー「ヤマユリワラシ」より

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物語ゆかりの人:前川さおりさん(遠野文化研究センター/遠野市立博物館学芸員)
「ヤマユリワラシ」のあとがきを執筆。1970年山形県生まれ。大学卒業後に『遠野物語』に憧れ遠野に移住。ユーモラスな博物館ガイドや遠野物語の110周年特別クイズ番組の司会でもおなじみ。



第1回 1/30(土)13:00~15:30
参加方法:オンライン配信
参加費:一般 2,000円
最小催行人数:10名
(zoomのURLを参加者にメールにてご連絡します。ご利用前にアプリ「Zoom」をダウンロードください。双方向にやり取りするため基本的にマイク・カメラはONにてご参加いただきます。)

申込方法
第1回の申し込みは締め切りました。


●第2回 2/13(土)13:00~15:30

物語のキーパーソンとなる桂香が住んでいた孫左衛門の家の跡がある集落を巡ります。

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古風に肩で切り揃えた髪、陶磁のように真っ白な肌、真っ赤な浴衣、十歳くらいの年頃の同所が、茅葺き屋根の百姓家から飛び出してきて、市五郎の目の前を、いっきに駆け抜けて行った。

この集落はカッパやザシキワラシなどの物語が多く残されている場所。ザシキワラシとは何なのか?にも迫ります。

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ゆかりの人:小笠原晋さん(元遠野市文化研究センター調査研究課長/NPO法人山・里・暮らしネットワーク)
遠野市出身。遠野市立博物館学芸員、遠野市観光協会事務局長、文化課長、遠野文化研究センター調査研究課長等を歴任。里山暮らし、遠野物語などに精通。旅の産地直売所のまちぶらツアーではガイドも担当。


第2回 2/13(土)13:00~15:30
参加方法:オンライン配信
参加費:一般 2,000円
最小催行人数:10名

申込方法
第2回の申し込みは締め切りました。

●第3回 2/27(土)13:00~15:30

残された人の思いと故人の冥福を祈り、桂香と数多の「供養絵額」を描いていく市五郎。実際に多数の「供養絵額」が奉納されている善明寺さんを訪問し、本物の「供養絵額」を拝見します。

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ゆかりの人:善明寺和尚さん
1679年創建、遠野城下に位置する善明寺の住職さん。善明寺には多くの「供養絵額」が奉納されている他、当時の布教の困難さを物語る「天狗の牙」や「真似牛伝説の角」など不思議な品と伝説が残る。

第3回 2/27(土)13:00~15:30
参加方法:オンライン配信
参加費:一般 2,000円
最小催行人数:10名

申込方法

第3回の申し込みは締め切りました。

こんな方にオススメ
・小説を読んだことがある
・小説は読んでないけど気になる
・ザシキワラシやなどの妖怪が何なのか気になる
・死生観について考えてみたい
・ちょっと旅行気分を味わいたい


企画・コーディネート

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多田陽香(つくる大学)      徳吉敏江(遠野旅の産地直売所)

オンラインで本の舞台に皆さんをお連れできること、楽しみにしています!ぜひご参加お待ちしております。

企画内容や申込みに関するお問い合わせは
つくる大学事務局(tsukuru-univ@nextcommons.co.jp)まで

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