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落語研究会に入って2年経ったけど、ようやく落語が面白くなってきた


∬◈ꙙ◈∬…アマビエくん
ミ・◦・ミ …キティちゃん

∬◈ꙙ◈∬「落語研究会に入って2年経ったけど、ようやく落語が面白くなってきた」
ミ・◦・ミ 「なんだいきなり」
∬◈ꙙ◈∬「いや、皆さんに落語の魅力をお伝えできればと思って」
ミ・◦・ミ 「はぁ」
∬◈ꙙ◈∬「世間で言われてる落語のイメージは『聞いてて疲れる』とかでしょ。俺も昔はそう思ってた」
ミ・◦・ミ 「そうではなかったと」
∬◈ꙙ◈∬「いや、大体あってる」
ミ・◦・ミ 「否定しろよ」
∬◈ꙙ◈∬「未だに落語聴いてるとものすごく疲れる。特に音源の場合、音を脳内で映像に変換する想像力を要求されるから、Youtube垂れ流すみたいにコンテンツを消費できない」
ミ・◦・ミ 「典型的Z世代だな」
∬◈ꙙ◈∬「挙句の果てに、いっかい聴いたあとwikiでストーリー調べ直す」
ミ・◦・ミ 「理解力なさすぎるだろ」
∬◈ꙙ◈∬「そんなもんだ。寄席とか行くと客は話をすべて理解した風に笑ってるけど、ぶっちゃけ会場の雰囲気とかフィーリングで面白いのが大きい」
∬◈ꙙ◈∬「だから落語に興味持ち始めた人は、まず浅草とかの寄席に行ってみるのがいい。数千円で一日楽しめる。良く分かんないけど周りに合わせて笑ってるうちに、落語は楽しくなってくる。俺は2年かかった」
ミ・◦・ミ 「テキトーだな」
∬◈ꙙ◈∬「テキトーでいい」



ミ・◦・ミ 「なんで落研はいったんだよ」
∬◈ꙙ◈∬「話すのが上手くなればいいかなって」
ミ・◦・ミ 「ほう」
∬◈ꙙ◈∬「つまらん日常に彩りを加える世間話ができるようになったら良いかなって。就活とかにも役立つかなって」
ミ・◦・ミ 「で、どうだったの」
∬◈ꙙ◈∬「知らん」
ミ・◦・ミ 「だめじゃねぇか」
∬◈ꙙ◈∬「滑舌はたぶん良くなった。生麦生米生卵。右耳にミニニキビ」
ミ・◦・ミ 「聞いたことない」
∬◈ꙙ◈∬「ググったら出てきた。他にも、"マグマ大使のママはマママグマ大使"」
ミ・◦・ミ 「なんだよマグマ大使って」
∬◈ꙙ◈∬「"マジ貧しい魔術師"」
ミ・◦・ミ 「人権派の魔術師」
∬◈ꙙ◈∬「"めちゃめちゃびちゃびちゃキャッチャー"」
ミ・◦・ミ 「発音が愉快なだけだろ」
∬◈ꙙ◈∬「まぁでも、人前で話させてもらえるってのは本当に良い経験してると思う。意外とみんな面白がって聞いてくれるし」
ミ・◦・ミ 「『聴いて』じゃなくて『聞いて』かよ」
∬◈ꙙ◈∬「プロじゃないんで」
ミ・◦・ミ 「プライド持てよ。社会に出たら、『オチケン面白いことやれよ』って飲み会で無茶ぶりかまされる日々が待ってるぞ」
∬◈ꙙ◈∬「パワハラカード切るを。我々の落研はそういうノリ一切ないから安心して」



ミ・◦・ミ 「で、落語の魅力を伝えるんじゃなかったのか?」
∬◈ꙙ◈∬「そうそう。落語の魅力は『軽さ』。これに尽きる」
ミ・◦・ミ 「軽さ」
∬◈ꙙ◈∬「小説とか映画とかは、心の奥でトゲみたいに残り続ける作品あるでしょ。落語はそういう感じじゃない」
ミ・◦・ミ 「はあ」
∬◈ꙙ◈∬「たとえば芝浜(注: 落語を代表する人情噺。夫婦の深い愛情が描かれる)とかさ、男が更生していく期間を丸々すっ飛ばしてる。小説とかの場合、駄目男が改心していく過程の描写こそが面白いわけで」
ミ・◦・ミ 「さよか」
∬◈ꙙ◈∬「あれ最初聴いたときびっくりした。飲んだくれが酒で痛い目見たあと場面転換したと思ったら、もうすっかり改心していてハッピーエンド。そこワープするのは本質的になろう系と同じ」
ミ・◦・ミ 「笑いの娯楽に修行パートとか誰も求めてないだろ」
∬◈ꙙ◈∬「それなんだを。落語はどこまでも軽いところがいい。別に教訓とか残らない。ちょっと心が暖まるけど、次の日には忘れてる。だから、落語で人生観とか大仰なこと持ち出す奴はただの評論家気取りだと思ってる」
ミ・◦・ミ 「お前が真の名人芸を生で聴いたことないだけでは?」
∬◈ꙙ◈∬「ホンモノの江戸情緒とか人情を語れる名人は全員死んだって、大学のセンセが言ってた」
ミ・◦・ミ 「確かに大昔の映像とか見てると、気風の隔絶は感じる」
∬◈ꙙ◈∬「俺は平成令和の立川志の輔が好き。志の輔くらいの軽さでいい」
ミ・◦・ミ 「みんなも聴くものに困ったら、取り敢えず志の輔の落語さがして聴くといいよ。ためしてガッテンの人」



∬◈ꙙ◈∬「なんならM1とかキングオブコントの方がおもろい」
ミ・◦・ミ 「それ言ったら終わりだろ」
∬◈ꙙ◈∬「でも松本人志は寝るまえに必ず落語聞いてるらしいし、ミルクボーイや空気階段もぐらは大阪芸大の落研出身」
ミ・◦・ミ 「フォローになってないし、多分そいつら落語やってねぇ」
∬◈ꙙ◈∬「大学落研は落語やらずに漫才とかコントだけやってるところも多いを。ウチはちゃんと落語やってるけど」
ミ・◦・ミ 「いいから締めくくれよ」
∬◈ꙙ◈∬「そりゃ、2人以上で演じる漫才とか、舞台背景や音楽をふんだんに使えるコントの方がコンテンツとしてリッチには違いない。尺もお笑いくらい短いほうが端的でウケる。さっきも触れたけど、ストーリー構成の奥深さは小説や映画に敵わない」
∬◈ꙙ◈∬「でも、だからこそ落語は、浮き彫りになった噺家の『芸』を純粋に味わうことができる。モノゴトの過程を端折った筋書きでも、表情や声によって感動させられてしまう。それで、そうした細やかな『芸』そのものに対する精通は、何気ない日常の解像度を上げてくれる。そのことに気づくのに2年かかった」
ミ・◦・ミ 「評論家気取りかよ。さっきは大仰がどうのこうの、ほざいてなかったか?」
∬◈ꙙ◈∬「人生は矛盾と誤解に理不尽だらけって、談志のおっさんが」
ミ・◦・ミ 「そんなバカなこと言ってるうちに、大学生活が半分おわってるんだが」
∬◈ꙙ◈∬「ここ2年の大谷翔平と同じ時間が流れたとはとても思えん。メジャーMVPにWBC優勝」
ミ・◦・ミ 「お前の怠慢でしかないだろ」
∬◈ꙙ◈∬「コロナ禍もあったし入学して実質1年くらいに感じる。体感2倍で大谷翔平は生きてる」
ミ・◦・ミ 「まぁ、やつは二刀流だからな」
∬◈ꙙ◈∬「オチが付いたので。それでは」


飴屋万練

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