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でも日本には四季があるから

 もうないだろ。

 最近は寒暖差が激しかったり空気が乾燥していたりで、鼻喉を効率的に破壊するための環境が形成されてしまっている。令和ちゃんのドジが〜みたいな寒い擬人化ネタにコミットする気はないが、一晩中くしゃみが出た時は環境活動家への転向を本気で考えた。
  ともかく、清少納言が書き記した四季は既に消滅している。もう日本が誇れるのは自販機の数だけだ。とりあえず、ペットボトルのコーヒーは150円以内に抑えてほしい。これはわが国が再び高度経済成長を迎えるための必須条件だ。

 冬が来るらしい。というか来てる。
 数日前にお気に入りのジャンパーを探して押し入れを漁ったところ、なんと存在しなかった。いえ、けれど確かにあったんですよ。黒くて耐久性がグンバツで、それでいてあったかいジャンパーがこの部屋に……と血眼で捜索したものの、影も形も見当たらなかった。もう何も信じられない。この世界も、俺自身も。現実と空想の境界線が曖昧になり、目の前にCV.上田麗奈のファムファタルが出現し、すべてを破壊する。はやく退屈から救ってくれ。

 去年の冬の思い出についても信じられなくなってきた。敵に液体をぶっかける卑猥極まりないゲームをフォロワーとしたり、地元にいた数少ない友人に飯をたかったりした。それらはとても楽しかった。まるで夢のように。いや本当にあったことですけど? ソースは俺。俺しかないんだ。

 今年の冬の予定ですか? 妙なことを聞きますね、先生。そうですね、まずは卒論でしょうかね。それに車校、あとは家で寝て過ごすだけですよ。特に面白みのない、まさに冬にふさわしい空虚な生活でしょう? あんたはそれを分かってて聞いてきたんだ。地獄に落ちろ。

 冬が終わると、春が来るらしい。当然春も既にフィクションと化してしまっているが、ともあれ月日が経過するのは確実だ。年が明け、四月が来る。出会いと別れ、笑いあり涙あり、アオハルかよ←これは何?
 できればモラトリアムを延長したいところだが、どうやら次のステージへ行かなくてはならないらしい。自立して生きるために。この冬を脱するために。

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