「政治改革政権」の登場を望む:大澤 賢
http://blog.livedoor.jp/corporate_pr/archives/61592815.html
復興と国際社会への復帰、高度成長、経済大国、福祉国家づくりなど、戦後日本のかじ取り役だった自民党が、昨年来の政治資金パーティーをめぐる裏金事件を機に厳しい局面に立たされている。“金まみれ”の自民党に対する国民の反発は強い。現岸田文雄内閣の支持率急落は、政治改革への失望だけでなく自民党への不信、さらには政治全体への信頼が低下していることを物語る。
裏金事件の反省を踏まえて提出した政治資金規正法改正案は6月19日、参院本会議で可決・成立した。改正政治資金規正法は抜け穴だらけと与野党から指摘されており、今後の更なる修正・改正の余地を残した。また根本問題として「小選挙区制の改正」を取り上げるべきとする声もある。
追い込まれた形の岸田首相だが、国会答弁では総辞職あるいは衆院解散の選択は取らず、自民党総裁の任期である9月まで続投する構えだ。政権交代を望む声が上がる中、「クリーンな政治」はいつ実現するのだろうか。
●問題山積みの「改正規正法」
筆者は昨年末から、自民党の古い体質と政治資金問題を取り上げてきた。
「“安倍型政治“から脱却を」(23/12)は、権力乱用と国会議論を軽視する安倍晋三元首相(22年7月銃撃死)の手法から抜け出すべきと訴え、「派閥解散は政治改革ではない」(24/1)は、東京地検特捜部が国会議員ら10人を逮捕・起訴し安倍派や岸田派などが解散を決めたが、それは政治改革ではないと指摘した。
また「裏金事件、不記載額は85人で5億8千万円」(24/2)、「政倫審に岸田首相出席も真相不明」(24/3)、「自民党、39人の処分発表も首相ら不問」(24/4)は、岸田首相と自民党執行部が真相究明に消極的で、関係者への処分も甘いことを取り上げた。そして政治改革として打ち出した「自民党の政治資金規正法改正案に批判集中」(24/5)では、抜け穴が目立つ改正案について批判した。
成立した改正規正法は①パーティー券の購入者名の公開基準を現行20万円超から5万円超に引き下げる②政策活動費を正式に明文化し、項目別の使途と金額、支払い年月を記載して10年後に領収書を公開する③監査や権限は第三者機関で検討する④収支報告書に確認書の交付を国会議員に義務付け、不記載・確認が不十分であれば公民権停止につながる罰金刑を科すーなどである。
これに対して野党側は①政官業の癒着を生みかねない企業・団体の献金禁止が盛り込まれていない②政治資金規正法や所得税法違反の時効は5年で、政策活動費10年後公開では不正があっても罪に問われない③第三者機関の設置時期や権限が不明なまま④国会議員の確認書義務付だけでは、公職選挙法並みの「連座制」が適用されないーなどと追及した。
世間の関心は、「カネがかかりすぎる政治」をどのように改革するかだ。1円の税金も逃れられない庶民にとって、濡れ手に粟のパーティー収入や使途不明な政策活動費などは、国会議員の特権そのものに映る。法案のお粗末さともに、岸田首相の改革姿勢にも失望感が強い。結果、内閣支持率は低下し続けている。
●本来ならば総辞職か解散だが
朝日新聞の電話による6月世論調査(6/17)では、岸田内閣の支持率は22%(前月24%)と内閣発足以来最低で、不支持率は64%(同62%)に達した。また自民党支持率は19%(同24%)で、2001年4月から始まった現調査では、政権政党として初めて20%を下回った。
個別面談方式による時事通信の6月世論調査(6/14)では、内閣支持率は16.4%と前月比2.3ポイント低下し、12年暮れに自民党が政権復帰以降最低となった。不支持率は1.4ポイント増の57.0%。規正法改正案については「あまり評価しない」33.0%、「まったく評価しない」39.2%と、回答者の7割超が厳しい評価を下した。
一方、読売新聞の5月世論調査(5/19)では、内閣支持率は26%(同25%)、不支持は63%(同66%)。ここでも規正法改正案について「評価しない」79%と、「評価する」14%を大きく上回っている。
不支持の回答で注目されるのが「政策を評価しない」ことだ。時事通信調査では、野党が求める企業・団体の献金禁止について「禁止すべきだ」が52.4%で、「認めるべきだ」19.3%を大きく上回る。また定額減税について物価高対策として効果があるかを尋ねたところ、「ない」が65.3%、「ある」14.2%だった。こうした低い評価が自民党の支持率低下にもつながっている。
●自民党に代わる政権はできるか
立憲民主党は20日、岸田内閣への不信任決議案を提出したが、与党の反対で否決された。ただし総選挙は近づいている。では政権交代は起こるだろうか。
前述の朝日新聞6月調査では「今投票するとしたら」の質問に対して、自民党は24%(前月26%)、立憲民主党19%(同15%)と、その差は縮まっている。
ここで気になるのが、野党第一党・立憲民主党に政権を担当する準備ができているか、である。泉健太代表は「政権を担う覚悟はできている」とテレビ番組で語ったが、国民の多くは不安感がぬぐい切れない。何よりも2009年から3年間政権を担った旧民主党の挫折が記憶に残っている。政治主導を主張するあまり、官僚を“敵”に回すなど失敗が目立った。外交・安全保障や経済・通商、環境、人権などの基本政策の説明が不足しているから、国民の多くは心配している。
自民党の底力を指摘する声もある。
「自民党の体たらくは今に始まったことではないが、政権交代となると結束するはずだ。かつて下野した時の辛い体験から、表紙(首相)を替え、公明党だけでなく日本維新の会や国民民主党など、政権に擦り寄りたい野党を巻き込んで、政権維持に必死になる」と解説するのは、長年交流のある政治ジャーナリストK氏。確かに野党のバラバラ感からは、政権交代は容易ではなさそうだ。
とはいえ筆者はこの際、もう一度政権交代があっても良いと思う。多くの国民はふしだらな「自民党政治」に怒っている。次の総選挙では、新しい「政治改革政権」の登場を見てみたい。