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モンタナ

トランプが大統領に選ばれて間もなく、感謝祭の日に、8年間住んだNYを離れた。
向かった先は、モンタナ州。
モンタナの病院に、正規雇用で採用されたからだった。

看護学校を卒業し、看護免許を取得して以来ずっと、
病院で正規雇用で働きたかった。
しかし、当時は病院勤務の経験がなければ、NY周辺では決して採用されなかった。
なので、過疎地の病院なら新卒でも雇ってもらえると聞いたので、
州外の人口の少ない地域にある病院の求人に、無数に(手あたり次第)応募していた。
しかし、「梨の礫」とはまさにこれかとばかり、数年、お祈りメールですらもらえない状態が続いていた。

いい加減、諦めて、ほぼ惰性で応募し続けていたら、
ついにモンタナの病院から採用された、という次第だった。
(あまり需要はないと思うが、もしアメリカでの病院の就職に手こずっていて、過疎地への就職を考えている方がいらっしゃったら、
プロフィールの欄に記載のブログに詳細を書いています。)

過去、グアムにおいて過疎地への適応障害を起こした身としては、
人口の少ないモンタナでやっていけるかどうか、という一抹の不安はあったが、それ以上に、ついに病院で正規雇用で働けるという、喜びと希望の方が勝っていた。

3年の雇用契約を結ぶかわりに、引っ越し費用と採用ボーナスがもらえたので、頑張って3年勤めあげたら、もうちょっと都会の町へ引っ越そう、というのが私のプランだった。

実際住んでみると、モンタナ州の中では一番大きな町であったので、
普通に暮らしていく分には全く問題はなかった。
アメリカ大手のチェーンスーパーもあるし、そこへ行けば、しょう油や豆腐など、基本的な日本食材も売られていた。
そして当時から、割高にはなるがアマゾンで日本食が手に入ったので、冷蔵の必要のない乾きものだったら、ほとんどのものを買うことだできた。

モンタナで一番大きな町、といってものどかなことこの上なく、
20階建てのビルが町一、いや州一で一番高い建物ということで、
見渡すばかりの空がある、本当に何もない所だった。

それなりの都会で用を足したいとなると、一番近いデンバーで、
片道車で5時間ということで、さもなければ飛行機でシアトルに行くしかないという感じだった。

せっかくだから、この土地でしかできない体験をして、有意義に過ごそう、と思い、ふんだんにあふれる豊かな自然に触れようとした。

しかし、人口が少ない地域なので、あふれる自然は文字通り「手つかず」であり、都会の州の自然公園のように整備されているわけではなく、
ガチのアウトドア勢か、それこそハンティングなどをするわけではなければ、入っていけないような感じだった。

それでも、少なからずの遊歩道はあったので、行ってみると、
ハエがたかっている鹿の死骸が、そのまま放置されていて、びびったこともあった。

沖縄の人が泳がない、北海道の人があまりスキーをしない。
そういったような感じで、地元の人はわざわざキャンプやハインキングなんてしないんだろうな、という感じがした。
私も湘南生まれだが、海はそこにあるものであって、わざわざ泳ぎに行ったり、サーフィンするところではなかった。

最初の半年は、新しい仕事に慣れるのも必至だったし、
新しい町への目新しさもあったので、目まぐるしく過ぎていった。
その時点で、だいぶ慣れてきて一息ついた時、
果たしてあと2年半、ここで過ごしていけるのだろうか、
と漠然と不安になったのをおぼえている。

しかし、それは文字通り杞憂となった。
結局、8か月でモンタナを離れることになってしまったからだ。

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