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歯がいっぽん

実はひとより生えてる歯がいっぽん多いらしいのだけれど、わたしはそれを自分の容姿のなかでいちばん気に入っている。
ちなみに、歯のやつは歯茎の中で親知らずに踏みつぶされ、レントゲンを撮るまでわたしの身体の中にしずかに横たわっていた。
小さいころから全然虫歯ができなくて、あんまり歯医者に行ったことがなく、いまの夫と付き合ってようやく歯は定期的に歯医者で点検することを知り、ようやく33本目の歯に出会った。

「うわ〜めずらしいですね〜」という歯科医のうっすらした感想で、33本目の歯との対面は終わったが、それからふとしたときに「歯が一本多いんだよねわたしは」と思い返す。
歯のことを思い出すと、足の指がいっぽん多かったり、むしろ一本少なかったり、腕が丸ごとなかったり、そういう類のものと同じ身体的特徴がたまたま歯茎の奥に隠されていただけで、ひとと身体のつくりが違う様子で生まれてくることはぜんぜんあるって納得できる。

歯はわたしにとって小さいお守りのような感じで、この世にいる人間で完璧に普通、というかその時点で完璧な人間を指している言葉なのだけど、そういう生き物はいないって信じるための神さま。もしやこういうのってチャームポイントというのかもしれない(ちがうかもしれない)

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