『螺鈿の音色に招かれざる客』38:プロット100本できるかな。

 タロットカード6枚引いて小説のプロット100本作る創作訓練やってみた記録です。


◆引いたカード◆
1主人公の現在:運命の輪(逆)投げやり、無分別、不運※
2主人公の近い未来:女帝(逆)不安定な愛、停滞
3主人公の過去:皇帝(正)優れた指導力、責任感
4援助者:世界(正)完成、勝利
5敵対者:月(逆)嘘に気づく、小さくて済む危険な出来事
6結末:魔術師(正)独創性、技術力、転機

『螺鈿の音色に招かれざる客』38/100(教訓)

 小国の王であるシユイは、若いが優れた王であった(皇帝・正)。しかし国を訪れた吟遊詩人に心を奪われ、彼が去ってからは失意のために国務も手に付かない有様だ(運命の輪・逆)。
 あるとき、その吟遊詩人を探している旅人がいるとの噂が耳に入った。城に呼び寄せ仔細を聞くと、武僧姿の旅人は、吟遊詩人のもつ琴こそ目当てと答える。吟遊詩人その人に用がないなら、見つけ次第、差し出すようにと依頼した。男は、持っていた通行証が大国の王の名入りであり、ふとした拍子にただならぬ威圧感を見せる。旅人に身をやつした高貴な身分の者と思われ、命令は憚られたのだ(世界・正)。
 しかし、ただ待つのも心が乱れ(女帝・逆)、変装して男に付いていく。ようやく探し出した吟遊詩人は、琴の呪いか、手が琴に貼り付き離れず、歌でしか言葉を語れず、短い滞在ではごまかせても長くなると怪しまれ気味悪がられるからと、あちこちを経巡っていたのだ。
 男はため息をつくと、人好きのする笑顔で、今から見るものを人に語ると死ぬと前置きし、懐から生首を取り出した。月光を弾く輝く黒髪、人ではありえない美貌の生首が歌い出すと、琴は吟遊詩人の手から離れた。
「私の琴で、偽りの愛を歌うなど」
 歯を打ち鳴らす生首を、男はまた元通り懐に入れる。
 琴を手放した吟遊詩人を前に、シユイは恋が去っていることに気づいた。
 国政を立て直す最初の仕事に、シユイは音楽の神を讃える宮を建てる(魔術師・正)。祀られているのは美しい女神だ。何故か首から下が無い。見物人の中に、武僧姿の旅人がいる。その着物の襟元から、あたりには聞こえない、不服そうな声がこぼれた。
「女神だなどと、竜に雌雄など無いことも知らぬ、無知な王ですね」
「いやあ、その姿では、おまえが歌うたい竜だと人間には分かるまい……それより、俺が契りを交わしたいと言ったとき、おまえたしか、雄だからといって拒んだな?」
 男の懐から、応えは無い。 (了)

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