見出し画像

【絵本】フランスのこどもたちが読んでいる本

子どもが生まれてからフランス語でどんな本を一緒に読もうかな、できれば長く読まれている名著から触れさせてあげたいな、という思いがありました。


フランスの童話コレクションPère Castor(ペール・カストール)


 夫も子どもの頃から親しんできたPère Castor (ペール・カストール)というシリーズの絵本があります。
幼稚園に入る前から、うちの子達も半日保育園などでよく読み聞かせで親しんでいました。以下に簡単な解説です:

ペール・カストールコレクションは、教育活動家のポール・フォシェと妻のリダ・ドゥルディコワにより1931年に出版社フラマリオンからたちあげられた1歳〜10歳までの子供向けのコレクションです。
フォシェは才能あるロシアや東欧出身の美術家たちと(エレーヌ・ゲルティック、ロジャンコフスキー、アレクサンドラ・エクスター、ナタリー・パランなど)協力し、古典の童話からオリジナル作品まで300冊以上の作品を発行し、以来何世代にもわたってフランスの子どもたちの間で読み継がれています。
ちなみに「ペール・カストール」とはフランス語で「ビーバーおじさん」。フォシェが自らをそう名乗り、子どもたちに語りかけていたそうです。

 美しいお話を、美しい絵で、という思いで作り上げられた作品たち、とにかく素敵です。日本語に訳されているものも結構ありますね。子どもたちの本棚の中を探したらこのくらいありました。

画像1

どれもなんども子どもたちと読んでいる本です。
 例えば1月のガレット・デ・ロワを食べるエピファニー(公現祭)の季節には、「Roule galette (ガレットころころ)」(写真左下)をよく読みます。
 おじいさんとおばあさんが焼いたガレットが窓から転げ落ち、森の中を転がりながら色々な動物に出会うというお話。
 娘がこの絵本をもとに幼稚園で紙人形を作ってきてくれました。セリフや唄もそらで覚えて、おうちで可愛い人形劇を披露してくれました。

 「Marlaguette(マルラゲットとオオカミ)」は、森でオオカミに襲われそうになったマルラゲットが逆にケガをしてしまったオオカミを優しく看病していく中で、「もう動物は食べない」とオオカミを改心させます。しかしそうしないと生きていけないことを知りマルラゲットがとった決心とは…。友情と現実のはざま、綺麗事だけでない現実の世界も教えてくれるお話です。

 「Les bons amis(ゆきのひのおくりもの)」は中国の民話をもとにしたお話で、雪の中できっと食べるものがないだろうと、子うさぎが見つけたにんじんを友だちの子馬のお家に届けにゆき、そのにんじんを持って子馬はきっとお腹をすかせている別のお友達の・・・と続いてゆきます。結末は書きませんが、心温まる友情を育むお話が、なんともクラシカルで可愛らしいタッチで描かれています。

 「Boucle d'Or(3びきのくま)」もロシア民話として有名なお話ですが、クマさんのおうちに迷い込んだ金髪の少女(Boucle d'or)の行動を通して、大きさや高さなどの比較、そして子どもたちと、「よそのお家ではどうしたらいいのかな?」マナーの話をしたりしています。

美しい絵と多色刷り印刷の魅力

 職業柄もあるのですが、(グラフィックデザインの仕事をしています)手元におく絵本はお話も大切ですが、絵のクオリティも吟味しています。ペール・カストールコレクションの初版や旧版の多色刷り版は素晴らしく、絵本好きやフランスの古いもの好きの間で高価取引されています。私も近所の蚤の市でマダムがずっと眠らせていた多色刷り版を譲っていただきました。やはり今の印刷とは違うインクののりやざらっとした紙質にフランスらしい少しスモーキーな色合いの印刷が素敵です(フェチですね、まったく笑)。
 技術の進歩で、印刷は質よりも速さやコストを優先されるようになってきていますが、こういった美意識に子どもの頃から時々触れさせてあげたいな、と思うこの頃です。

画像2

画像3

こちらは旧版の「FROUX (のうさぎのフルー)」リダ・フォシュ(著),フェードル・ロジャンコフスキー(絵)
ペール・カストールシリーズを有名にしたという作品。野うさぎの毛の表現の印刷部分は、眺めているだけでうっとり。

わが家もまだ読んでいない作品もあり、これからも子どもたちと一緒に読んで楽しんでいけたらと思っています。

_________________________________________________________________________________

日本語で入手可能なペール・カストールのコレクションをいくつか記載しておきます。古き良きフランスの空気の詰まった絵本、よかったらお子さんの本棚に迎えてあげてください。



サポート代は連載中のパリのカフェ手帖「フラットホワイトをめぐる冒険」のコーヒー代や美術館エッセイ「カルトブランシュ・ミュゼ」の資料代にあてさせていただきます。応援よろしくお願いします!