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青木ヶ原樹海から大室山、長尾山

2022年秋に、精進湖畔から青木ヶ原樹海を歩き、大室山に登った。大室山山頂からの大きな富士山、そして、どこまでも平らな3000ヘクタールの明るい樹海を静かに歩くことが新鮮で、新緑の5月に再訪した。

今回は、精進湖から歩かずに、大室山の麓近くの県道に車を停めて、大室山の北側にある天然記念物 本栖風穴から、大室山に取り付いた。この山は登山道がないので、どこから登ってもよいのだが、ごつごつした1000年前の溶岩がむき出しになり、その溶岩を抑え込むようにタコ足状の木の根から幹が立ち上がる荒々しい樹海の森から、大室山に取り付くと、一転して、ふかふかの林床に、幹の直径が1メートルほどもある、ブナやミズナラが林立するおだやかな森に変化する。

大室山は、9世紀の青木ヶ原樹海を作った溶岩流に覆われなかったので、溶岩に覆われた火山と言っても樹海の溶岩よりも数千年古い。つまり山体が、ある程度の厚さの表土に覆われているので静かな巨木の森が成り立つのだろう。

大室山山頂から、手を伸ばせば届きそうな白い富士山頂、本栖湖、竜ヶ岳から、天子山地、南アルプスまでを一望してから、大室山の火口の縁をぐるっと巡る。縁から火口の底に降りてみると、以前は水が溜まっていたのだろうか、火口底は平らで草地になっている。珍しい植物はないかとうろうろするが、大室山そのものが、大型哺乳類を寄せ付けない荒々しい青木ヶ原樹海の中のオアシスのような存在なのであろうか、山頂付近は、シカによる食害で、低層の樹木が、毒を持つ馬酔木ばかりになっている。

大室山を下って、神座風穴を見学し、大室山と同じように、富士の裾野にポッコリと膨らんでいる長尾山山頂にも登る。精進口登山道1合目から、引き返し、樹海を逍遥していると、1970年に立てられた植林作業票が残っていた。溶岩に覆われなかったスポットは、かつての薪炭林として利用され、その後カラマツを植えたのだ。50年生の立派なカラマツ林が形成されていた。
樹海は平らなので、地形図と磁石だけで歩くと、すぐに迷子になる。現在位置がわかるGPS機能の付いた電子地図が必携である。

行きかう人もない、静かな探検を楽しんだ新緑の一日だった。

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