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地域森林とフォレスターー推薦の言葉──フォレスターの仕事とは、限られた資源の中で持続可能な発展を目指す闘い

フォレスターの仕事とは何だろうか。
フォレスターがいなければ木は育たないのだろうか。
彼らがいない場合、森は、社会はどうなるのだろうか。

多くの現代人、特に都市部に住まう人々は、このように問う。
ヨーロッパやドイツの伝統的な理解においては、「この専門家集団は狩猟犬と一緒に、健康な森の空気の中で地域の森を常に守っている」という決まり文句が回答となるだろう。
しかしながら、今日におけるフォレスターの役割は、これだけではない。
もちろん日本においても同様である。よりカラフルで、はるかに複雑だが、何よりもエキサイティングである。日本やドイツのような先進国では、フォレスターの仕事は、エコロジーな仕事であると同時に、限られた資源の中で持続可能な発展を目指す闘いでもあるのだ。森林管理の現場には、森林開発、森林利用、そして「自然を自然のままにしておく」というようないくつもの選択肢があり、そのどれを選択するかを決めていかなければならない。
このような課題に対し、緊張感をもってフォレスターとしての仕事に取り組んでおられるのが、著者である鈴木氏の功績の一つだ。氏は、本書で複数のケーススタディを使用し、森林、特に地域の森において、伝統的な森林利用の要求や多様な利害関係者からの様々な要求を、フォレスターがどのように満たそうとしているかについて実証的に検討している。
地域の森は、地域の歴史と独自性を如実に表す場でもある。フォレスターは、これらの多岐にわたる関心事の解決と同時に、近自然的な森林管理を行うという最も重要な役割を果たさなければいけないのだ。
本書は、森林をとりまく最新の状況を示している。劇的に変化する経済・環境・社会のあらゆる面において「中心的役割を担う森」は、地元に雇用をもたらし、恒常的な収入を確保する場所である。同時に、住民はスポーツをしたり、自然の中でリラックスしたり、変わらないものの象徴として「自らの森」を利用している。このように地域の森の森林計画は、地域関係者の様々な要求を出発点とする非常に複雑な課題を含んでいるのである。
だからこそ、熱心な市民、社会一般、責任ある機関がどのようにうまく共存できるかについての調査は、非常に価値がある。本書は、革新的で理想的な回答を示すだけではなく、一般の読者にも読んでもらえるように企画されている。それにより本書は、我々が先祖から受け継いできた、持続可能で近自然的な森林管理を継承していくための礎となるだろう。
地域の森の課題解決に熱意を持つ人々、また森林の特別な価値を共有する多くの、そして多様な人々が、本書を手に取られることを切に願う。また本書が、日本のフォレスターの魅力を高め、また持続可能な森林の未来のために、挑戦する若者たちを鼓舞するものになると確信している。

2022年10月3日
ドイツ ロッテンブルグ林業大学 造林学部 教授
Dr. Sebastian Hein (セバスティアン・ハイン)
(日本語訳 江鳩景子)

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