見出し画像

小さな学校の時代がやってくる―推薦のことば・刊行によせて

[推薦のことば]
ポスト・コロナ時代の教育はどんな教育になるのだろう?
「元に戻さない」と多くの人は言うけれど、
「どのように?」と問われると、途方に暮れてしまう。
しかし本書には、新たな時代に求められる教育の在り方と方向性が描かれている。
ユネスコ等がリードし、SDGsを実現するための教育でもある
ESDの特徴である「変容」「統合」「刷新」のすべてがここにある。
―――永田佳之(聖心女子大学教授)


[刊行に寄せて]
著者の辻正矩さんの、文字通りライフワークが、ここに一冊の本となって結実しました。「大阪に新しい学校を創る会」の結成、紆余曲折がありながらも「箕面こどもの森学園」を創設、それを持続的に運営しながら「多様な学び保障法を実現する会」の活動へと、辻さんの強い意志は決してブレることがありませんでした。
この本には、その長年の実践の経験に裏打ちされた、だからこそ説得力のある知見が盛り込まれています。経済力のあるバックやスポンサーがなくても、ふつうの市民が手作りで、アットホームで小さな学校を創り上げていく、その理念と現実のエッセンスが詰まっています。オルタナティブ教育やホリスティック教育の研究者の眼で見ても、本書の価値は確かなものです。
研究者としてだけでなく、京都で京田辺シュタイナー学校の運営に取り組みながら、大阪の辻さんの営みと並走してきた者としても、感慨を禁じ得ません。大阪と京都の二つのNPO法人立の学校が、ユネスコスクールやサステイナブルスクールの認定を受ける喜びも共にしました。関西の地で、同じ志をもつ仲間たちと、「これからの子育て・教育を考えるフォーラム」「多様な学び実践研究フォーラム」など力を合わせて開催しました。本書にも反映されているような法制度のあり方についても、議論を重ねました。折に触れて悩みを共有し、励まし合うこのつながりはとても大切なものでした。そこにいつも辻さんが居てくれました。
制度化されたシステムではない、小さな手作りの学び場にとって、こんなつながりこそが、成否を分ける鍵なのかもしれません。苦楽を共にして自前で学校づくりに励む大人たちの、その後ろ姿が子どもをハッピーにする秘訣だとさえ思えます。本書の行間に、生身の人間の出会いと縁、支え合いの息遣いを感じ取ってもらえれば幸いです。
――吉田敦彦(大阪府立大学教授・京田辺シュタイナー学校顧問)


子どもが描く夢は様々だ。誰もが幸せな人生を送りたいという純粋な希望を持っている。
学校教育は国家や社会が求める人材の育成に重点が置かれてきたが、科学技術の進歩や人々の価値観の多様化によって社会構造が急速に変化していくこれからの時代は、一人ひとりの子どもが心身の潜在能力を発揮し、人生の意義を感じ、周囲の人との関係のなかでいきいきと活動している状態(ウェルビーイング)を目標としなければならない。
大人が子どもに知識を与え導くことが正しいとする教育の最大の弊害は、子どもが自分について考え選択し決定するチャンスを奪われ、自らの人生を生きている実感すら得られないまま、自立するための知恵や経験が不十分な状態で社会に放り出されるリスクが高まることである。
人生の主人公は誰か。その問いは生まれた瞬間から常に子どもと共にある。学びの主体が誰なのかを子どもと一緒に真剣に考えない学校教育は百害である。
子どもは良く育ちたいという本能を備えて誕生したはずであり、その子どもの力を信じる大切さを本書はわかりやすく教えてくれる。どうか、不登校や学校統廃合の問題に頭を悩ませている教育行政に携わっておられるみなさんの参考にしていただきたい。子どもの安心、自信、自由が保障される「ハッピーで小さな学校」が拓く未来に、私は大きな希望を感じている。
――竹内延彦(長野県北安曇郡池田町教育長)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?