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CBDの科学―巻頭の言葉

CBD: What Does the Science Say?の邦訳書『CBD の科学─大麻成分由来の最新エビデンス』の刊行にあたり、心からお慶びを申し上げるとともに、本書の位置づけについて所見を一言申しあげたく存じます。

米国において大麻由来医薬品エピディオレックスが薬事承認されたのは2018年6月のことでした。米国食品医薬品局(FDA)が、難治性てんかんであるレノックス・ガストー症候群とドラベ症候群に対する効能・効果を承認したのです。その事実をいち早く日本臨床カンナビノイド学会(JCAC)理事長の太組一朗理事長に伝えたのは、同学会の正高佑志副理事長でした。

この2人の迅速な動きが、難治性てんかんとともに生きる方とご家族の希望の灯となり、なかでも沖縄県のてんかん診療拠点病院である沖縄赤十字病院にかかる患者さんやご家族から全国に連帯が広がりを見せていったのです。

しかし、我が国には大麻取締法の制約がありました。大麻由来医薬品が海外で薬事承認されることを想定していなかった法律においては、医師がそれを施用することも、患者が施用を受けることも法律は許していませんでした。

そこで、2019年3月、参議院「沖縄及び北方問題に関する特別委員会」において、大麻取締法に記載がない大麻由来医薬品の「治験」は可能か?と国会質疑したのです。国は「可能」と答弁しました。これにより国内で患者さんに大麻由来医薬品を届けることが可能になりました。

さらに同年5月、同委員会において、大麻由来薬物の「治験」も可能かと質疑し、国は「可能」と答弁しました。

あくまで「治験」という正当な手続きを踏むならば、薬事承認の有無にかかわらず大麻由来医薬品または大麻由来薬物を国内で患者さんのもとに届けることが可能となったのです。奇跡が起きたと評してくださる方もいらっしゃいましたが、それは2人の企画者、治療法を待ち望む患者および家族の皆様、そして読者の皆様の熱意が国に届いた証左と言えましょう。

だからこそ、国は現行の大麻取締法の制約をふまえ、太組一朗理事長を研究代表者とする厚生労働科学研究班を設置するとともに、省内の「大麻等の薬物対策のあり方検討会」にて、その報告書に基づいて検討を進め、薬事承認を見越して大麻取締法改正の準備を進めました。

待ちに待った国内治験が開始されています。事実として患者のもとに大麻由来医薬品が届けられていることを嬉しく思います。

今は一日も早く治験が成功し、大麻由来医薬品の用法・用量が定められることを期待しています。なお、米欧においてはその後、難治性てんかんだけでなく、結節性硬化症にも適応を拡大するなど、大麻由来医薬品の適応拡大に向けた研究は続いています。2人の企画者には、大麻由来医薬品の効能・効果について、真に必要とする患者のもとに大麻由来医薬品が届くよう、さらなる適応拡大に向けて奮起をお願いしたく存じます。

その可能性を議論する際に本書は役に立ちます。法律が期待する主旨をふまえ、最新の研究に基づいた議論を期待します。

2023年8月
参議院議員(福岡県選出) 財務副大臣 秋野公造

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