お土産は「4万2千円」

生まれて初めてMNPとやらをする事になった。
携帯電話の契約を、番号は変えずに別会社に乗り換えるのだけど、
様々な手続きののち、いよいよd社に契約を行う段でNGが出てしまった。

家電量販店のお兄さんが、神妙な顔つきをしてやってきて言うには、

「過去に未納料金があるようです。ご記憶ありますか?」

私は全く無いので、一緒にMNPする主人が横で青くなっている。

「ぼくのせいかも知れない。
昔、友人が契約した携帯を譲り受けたものの、友人がその携帯を持って消えてしまい…料金の請求が来なかったからそのままに…」

人の良い主人らしい理由だなあと思いながら、聞き入っていると、店員さんはニッコリとなおも説明を続ける。

「旦那さま側か奥様側の未納か、ショップへ出向いていただきお聞きいただきたいのですが…。
1997年に未納があるようですが、お支払いいただければ新規契約に問題はございません」

私と主人は、すみやかにショップに移動して全てを調べてもらった。
ショップで判明した事は、

・1997年に契約をして数ヶ月使用されたようだが、未納が発生した為強制解約となっています
・支払いは銀行口座引き落としでした
・未納料金は4万2千円ですが18年分の延滞金がつきます
・ご契約者は藤井月様です

であった。
ふんふんと聞きながら、主人に、

「お金は半分出すよ」

と言いかけて喉がつまった。

私の未納料金だった…。

まさかの事態に、貝のように押し黙りながら退行催眠を自分にかけようと目をつぶった。

ショップ店員さんは、

「ご記憶に無ければ、こういったケースの専門窓口がありますので、明日にでもご自身でお電話していただけますか?」

との事で、一旦帰宅する事に。

私は本気で犯罪に巻き込まれたのだとしか思えず、

「もしかしたら身分証を無くした時に、不正利用されたのかも」

と主人に相談した。

しかし、一晩中、退行催眠もどきをして記憶の扉を開けて行ったところ、
やっと分かったのは、
当時5年くらい付き合っていた彼に、携帯電話の名義貸しをした事だった。

確か転職をした彼が、新しい仕事は携帯電話が必要だが事情があり契約出来ないと言っていて、お祝い代わりに契約してあげたんだった。

その彼は、浮気やギャンブルは当たり前で、私の手に負える相手では無く、
ほどなく別れたし、請求も来なかったからすっかり忘れていた。

結果的には、d社には私の非を認めお詫びし、4万2千円を私が払った。
18年分の延滞金は不要としてくれた。

それにしても、なんという、置き土産。

元カレとの「清算」を18年後にやっと終えたような脱力感のまま、
私はクリスマスソング流れる街を歩き出したのだった。

#日記

#エッセイ

#ダメんず

#清算

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?