消失の海

透き通る日差しの向こう側に何かあるのか
痩せ細った腕で透明に見える何かを掴もうとした
光を掴むとはこういうことなのかもしれない
ふとしたときに思う希望の無機質さ

感情の波に息苦しくなる現代で
呼吸もしないで喋り続ける文字の先に
人間がいる
人間が文字を挟んで貪りあっている

貪欲にそれはもう貪欲に
痛みのない痛みに気づけずに
飢えた魚が餌に群がるように
感情の海の中を溺れている

他者の痛みに気づけぬ者達が
我が正義だと叫んでいる日常に
溺れていく普通になっていく当たり前になっていく
晒していく晒されていく

深く潜れば潜るほど何も見えなくなって
真っ暗な海では感情すら見えなくて
対象すら見えなくなって
痛みすら見えなくなって
突き刺す言葉だけが感覚を研ぎ澄ませていく
そこに誰かいる
暗闇の中に何かいる
見えない的に敵意と悪意を込めて

どうしてこんなに腹が減るんだろう
それは失っていくからかもしれない

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