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字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ【99】

「字幕の危機」は誰のせい?

 字幕屋の苦労が切々と語られ、何度も何度も頷きながら読み進めた。
 こんなにも字幕屋を苦労させる原因は、ズバリ、現代人の国語力のなさ、読解力のなさに尽きる。
 そして、そんなおバカさんたちに忖度しまくる配給会社にも、責任はあるだろう。
 著者は、このままでは字幕が絶滅危惧種になると心配している。実際、人気の映画は吹き替え版が主流で、字幕上映の回数が極端に少なかったりする。地方の映画館では吹き替え版しか上映しておらず、わざわざ遠くの映画館まで足を運ばなければならなかったり・・・。字幕でないと映画鑑賞できない人たちがいるのだから、映画館も考えてほしい。

 そんな中、著者の「字幕復権の秘策」が痛快だった。

 実は、字幕復権の秘策がある。その名も「難易度別字幕上映システム」。
 つまり、サルでもわかりそうなお子さま向けレベルの「あっさり字幕」から、インテリや専門家やコアなファン向けの「こってり字幕」まで、3~5段階くらいに難易度を分けてそれぞれ上映するのである。シネコンで吹き替え版と字幕版があるごとく、スクリーン1では「あっさり字幕」、スクリーン2では「ふつう字幕」、スクリーン3では「こってり字幕」。どれか1つを選んで見るだけでもいいが、1,2,3と順番に3度見れば、毎回新しい発見があって1作品で3度おいしい。

本文より

 ぜひ実現してほしい。そうすれば、映画館で映画を見る人も減らないのでは?昔のようにたくさんの人が映画館に足を運ぶようになれば、鑑賞料も安くできるのでは?

字幕屋ではないフツーのおばはんも、日本語が変だと叫びたい。

 特に敬語。

 過日、美術展へ出かけたときのこと。予約時間の10分前に美術館前に着いた。周りには同様の人たちが、各々好きな場所で待っていた。すると、職員らしい(見た目シュッとして、賢そうな出で立ちの)女性が
 「○○時△△分ご予約のお客様、建物に沿ってお並びお願いします
と叫びだした・・・

 は?

 「お並び、お願いしますうぅぅ???」

 ものすごい違和感を感じながらも、言われたとおりに建物に沿って並ぶ。 その後もずっとその文言が繰り返され、居心地の悪さを感じた。 なぜこんなに気持ちが悪いのだろう・・・?

 そもそも「並んでください」も敬語だから失礼ではないし、もう少し丁寧にするなら、「お並びください」で良いのでは?

 「・・・ください」が物足りず、「お願いします」と言いたいのであれば
 「お並びください。お願いします」が正しいだろう。 

 なぜこんな言葉が生まれたのか・・・?(もう、それが気になって美術展は上の空になってしまった・・・笑)

 後日、その答えが分かった。
 
 敬意の価値は漸次的に低下する(インフレを起こす)のだという。
 つまり、使われる頻度が増す(聞き慣れる)と、その語の持つ敬意の価値が下がり(敬意が足りず、失礼な気がしてくる)、そのために敬語を重ねて価値を上げたくなるらしい。

 まことに納得のいく説明だ。

 詳しくは YouTube『ゆる言語ラジオ』で、ゆるく詳しく解説してくれているので、視聴してみてください。