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ボトルネックをコミュニケーションで解消する(1)〜タテ型組織をヨコ型に変える

こんにちは。企業変革コンサルタントの小野司です。

企業変革に取り組む若きリーダーさん、そしてコロナ禍で、企業変革に取り組まれる企業さまに、変革のヒントをお届けしています。

前回は、種々の要因でボトルネックが変わるということをお話ししました。

今日は、そのボトルネックを見えるようにすること、コミュニケーションで解消した事例について、ご案内いたします。

ボトルネックを見えるようにするためには、作業分解し、工程図を作り、計測して、というような作業が一般的です。

しかし、中小企業、小規模事業者などではやり切れません。

測定方法の知識習得、測定そのものの時間も必要になります。多品種少量生産が多く、また突発対応などで工程が変化することも少なくありません。

現実的な方法は、仕掛り在庫の量をみることです。また、現場を熟知しているリーダー、ベテラン、エースのカンや経験から予測します。

私の事例ですが、上の方法でもボトルネックはかなり分かります。

しかし、そのボトルネックは暗黙知のように、一部の人だけが知っている状態になっています。

そのため、コミュニケーションの仕組みを作ります。見えるようにします。メンバーみんなで共有化するのです。

さらに「余裕の出来た人は、ボトルネックの支援に入りましょう」とのメンバーに周知します。

それだけで、ボトルネックはかなり解消されます。

では、コミュニケーションの仕組み作りの事例についてご案内いたします。

上手く行った事例は、大きく3つございます。
1.タテ型組織をヨコ型組織に変える。
2.ボトルネックの伝達指示係を決める。
3.ボトルネック用人員を配置する。

仕組み作りは、業種・製品、メンバー構成、作業場レイアウトなどによって異なります。

その方法は十人十色といっていいほどです。しかし、ある程度傾向はあります。

今回は、「1.タテ型組織をヨコ型組織に変える」について紹介いたします。

工程の多くは機能別、つまり作業の種類別に分かれています。

工程表を右から左に矢印で並べて書くことがあります(工程フロー図)。さらに製品毎にこの工程フロー図をタテに並べて書きます。機能別の工程は、この図の縦に並ぶため“タテ型“組織とします。

タテ型組織の場合、担当する作業が同じ人でグループになります。必要となる知識・スキルが共通しています。タテ型組織の場合、人材育成もしやすいです。

また、作業用の設備・備品などをチーム内で共用している場合が多いです。

事例で紹介します。会社組織が、開発部門、製造部門、営業部門で構成されていたとします。製品Aは、開発部門で商品開発され、製造部門で作られ、営業部門で売られます。製品Bも同じです。

この時、開発部門は一つのチームに組織されます。この部門は、製品Aも製品Bも開発されます。これをタテ型組織とここでは呼ぶことにします。

一方、製品Aに関する担当者でチームに組織することもあります。このチームは、開発、製造、営業の担当者で構成されています。これをヨコ型組織と呼ぶことにします。

床屋さんの事例で説明いたします。多くの床屋さんでは、一人の理容師が一人のお客様を担当します。その理容師さんは、カット、顔剃り、毛染め、洗髪、仕上げと行います。これがヨコ型です。
一方、量販店型の床屋さんの場合、カット担当、顔剃り担当のように、作業毎に担当者が分かれています。これがタテ型です。

タテ型の場合、作業担当間での意思疎通が出来ていない場合、後ろの工程で待ちなどが発生します。また、特定の工程だけ忙しいということもあり、これをボトルネックといいます。

床屋さんの事例で、髪染めできる場所が1カ所だけとします。髪染めを希望するお客さんが急にたくさん来店されたとしますと。この時、髪染めが詰まります。

これがボトルネックです。

タテ型組織をヨコ型組織にすることで、コミュニケーションが活性化されます。これによりボトルネックの解消につながった事例を紹介します。

ある作業現場の事例です。工程が1階と2階に分かれていました。そ1つの工程では薬品を使う作業でした。そのため、その工程は別の部屋にありました。
他の工程でも、別部屋で、窓がなく扉を開けないと中の様子もわからないところがありました。
その中の1つの工程がボトルネックになっていました。そのため、その次の工程の作業員は“待ち“になることが多くなっていました。
次工程の作業員は、パートさんがほとんどで退社時刻は15時の方がほとんどでした。
午前中は“待ち“の時間があり、15時には仕事を残して退社することが多かったです。

ワイガヤを行うと、「午前中の待ち時間がムダです」「仕事を残して帰るのでスッキリしません」というのが多く出されていました。

15時でパートさんが退社し、残った仕事はリーダークラスの正社員が引き継いでいました。パートさんは待ち疲れ、リーダーは残業疲れの状況でした。
あるパートさんから、午前中の待ち時間の時、前の工程を手伝えないかという意見が出ました。
他のパートさんからは、前の工程は階も違うし、扉を開けないと中の様子が見えないため、開けて様子を見づらい、との意見が出ました。

つまり、タテ型組織のため、他の工程は自分とは違う工程でした。

自由に入っていいよと言われても、見に行きづらい状況でした。工程リーダーへの許可もその都度行う必要がありました。

そのため、タテ型組織を、ヨコ型組織に変えました。ある種類の商品を作るチームが1つになりました。

パートさんは、商品(仕掛り品)とともに動くようになるため、階の異なる別の工程に「正式な仕事」として、行くようになりました。
工程リーダーへの特別の許可が不要になりました。リーダー不在の時も動けるようになりました。

別工程ですから、経験のない仕事をすることになります。戸惑いが生まれます。しかし、別工程でも前準備や後片付けなどできる作業はありました。

他工程と情報交換しやすくなりました。特に、進捗情報です。

タテ型組織をヨコ型組織に変えることには大きな抵抗が生まれます。そのため、数日やってみて、ダメならすぐに元に戻すことにしました。

ヨコ型組織にして、次の日には「いいです。元に戻れません。」との声がパートさんを中心に上がりました。

パートさんは、作業が増えて“大変です“という声が上がるかと思いましたが逆でした。

「進み具合が見えるようになった」「待ち時間がなくなった」「15時に仕事を終わらせて帰れるようになった」という声が聞かれました。

ワイガヤでパートさんからよく出される、「不(不平・不満など)」は、「(進み具合やトラブルなどの)情報がない」「中途半端で帰るのがイヤ(ある程度の達成感を持って帰りたい)」というものです。

それがなくなりました。

パートさんが気持ちよく仕事をするようになりますと、社員さんも元気になってきました。社員さんの気持ちに余裕が生まれました。

若き企業変革リーダーのみなさま

この事例の場合、現場作業員であるパートさんの「不」の解消をしました。ボトルネックも解消へ進みました。

一部のリーダーは、一時的には忙しくなりました。

しかし、パートさんの動きがよくなってきました。社員さんもパートさんのおかげで残業が減りました。

そのリーダーさんは、「大変だけど、みんな生き生きしているし、喜んでいるのでよかったと思います」と言われていました。その後、そのリーダーさんの負荷は減りました。

コミュニケーションの仕組み作りのイメージはわきましたでしょうか。これは、進み具合の情報、特にボトルネック情報をヨコ型組織にして見えるようにした事例です。

参考にしていただければ、ありがたく思います。





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