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日常業務から大きな成功体験を得る

こんにちは、企業変革コンサルタントの小野司です。

QCサークル活動、働き方改革、企業変革活動に取り組む若きリーダーさん、経営者様に、活動のヒントをお届けしています。

企業変革活動では、最初に「不」(不便、不自由、不足、不安、不平、不満など)の吐き出しをすることをおすすめしております。詳しくは拙著(p66)を参照ください。
https://pub.nikkan.co.jp/books/detail/00003599

ある食品工場のカイゼン活動でのことです。
20歳くの女性の一つの「不」が活動に大きなインパクトを与えたことがあります。

その女性は、おとなしめで工場でも目立たない方でした。自分の「不」の吐き出し時、最後に、意を決したように「不」を吐き出されました。

それは、「私のことを”サノちゃん”と呼んでください」というものでした。

メンバーの多くは40~60代の女性で、異なる工程の方が集まっていました。それまでの「不」の吐き出しでは、他の工程に対する「不」が出されていたり、工程間で対抗する主張をし合うような状況が現れつつありました。

そのタイミングで、サノちゃんから、この「不」が吐き出されて、場の雰囲気が変わりました。

サノちゃんにしてみれば、多くのメンバーとは年は離れていますが、もっと交流したいという気持ちが現れたようです。それで、この「不」を勇気を出して言われたのです。その勇気が多くのメンバーに影響を与えたのです。

サノちゃんの工程は、充填工程でした。

その後、あるメンバーから、「充填機が不調でよく止まる。」「サノちゃんが困っているのを見ているのは心苦しい」という「不」が吐き出されました。その「不」に多くのメンバーが共感されました。

充填機は老朽化していましたが、メンテナンス間隔を通常1ヶ月のところ毎日行えばまだ、使えるものでした。。ただし、その作業ができるのは、複数の工程掛け持ちで最も忙しい課長だけでした。

別のメンバーからは、課長の作業で替わりにできるものがある。それをみんなで替われやれば、メンテナンスの時間を捻出できる、とのアイデアが出されました。

課長の替わりにできる作業として、容器の洗浄作業がありました。洗浄作業は、手が冷たくなり、前向きになれない作業(工場はオホーツクにあり、冬場は手が凍るほどになる作業)なので、課長を含め全員で分担していました。

さらにある方から、それぞれ担当の作業を工夫して早く終わらせて、この洗浄作業を行いませんか。課長には洗浄作業の時間をメンテナンス作業に充てられるようにしましょう、というアイデアが出されました。

つまり、「サノちゃんが困っているのを見ているのは心苦しい」という多くの方の「不」を解消するために、みんなが避けている”洗浄作業をやることになりました。日常作業である洗浄作業をカイゼン課題に設定しました。

その課題に取り組んだ結果、充填工程の生産性が向上しました。この工程がボトルネックになっている製品については、キャッシュフローも改善されました。

多くのカイゼン活動、QCサークル活動では、”洗浄作業”が課題になることはほとんどありません。特に、食品工場では、洗浄作業はやってあたり前のことだからです。

多くの場合、経営者等が「課長は大変なのだから、容器洗浄をみんなでやること」とトップダウンで指示することが多いと思います。
 しかし、現場が動くのは、言われた時だけです。そのため、経営者は口が酸っぱくなるまで言い続けることになります。(私は、このような、困りごとを経営者からよく相談されます。)

一方、このカイゼン活動では、「サノちゃんが困っているのを見ているのが心苦しい」という「不」を解消するために、容器洗浄に"自発的"に取り組んでいます。

そして、容器洗浄は、
工程で余裕のある人が行う、”外れくじのような作業”ではなく、
サノちゃんのため、会社のため(キャッシュフロー向上のため)に行う、”極めて重要な作業”
という意識がメンバーに生まれています。

この意識の変化は、カイゼン活動にとって大きな成功体験なのです。

多くのQCサークル活動、カイゼン活動では、容器洗浄のような日常業務を課題に設定することは少ないように思います。

しかし、多くのメンバーが取り組める日常業務でも、大きな成功体験を得られるのです。他者貢献という大きな成功体験です。

みなさまの参考になりましたら、ありがたく思います。



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