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一際目立つ雲はいずこへ

夕方の午後5時ごろ。この前まで辺り一体はまだ明るかったのに、今じゃ街灯を付けなければ見渡すこともままならないほどにすっかり暗くなっている。

車のヘッドライトも暗くなる前に早めに付けておかなければと思うと、師走の時期それも冬の季節にようやく入ったんだなと改めて実感が湧く。

 

東京にある自宅から下道を走って実家に戻る道中、いつも決まったところで休憩がてら立ち寄るコンビニがある。

そこは国道沿いに面していながらも、山々に囲まれた奥地のような場所にある。そこから少し歩けば近くに沿線があると言った、何の変哲もなさそうで何がありそうな予感がする所だと思っている。

しかしこれといってその場所が一番お気に入りなのかといわれると、正直にいえば特にそうでもない。

それでも100キロ以上の長距離運転を経験してきて、1時間か2時間おきに休憩は挟んでおかなければならないと身に染みついてきたところ、そこに立ち寄るには丁度適した場所でもある。

ハンドルを握っている自分がどういう状態であれ、そこを通り過ぎてしまうと次に休憩ができる場所にたどり着くまで、自然が生い茂っている道路を数十分走らせないとならない。

運転席スペースにある備え付けのドリンクホルダーには、いつも500ml分のボトルに入ったコーヒーを1本入れている。それを東京を出るまでの間、信号に何度もつかまるたびに口にしている。

走行中に居眠りしてしまわないように対策していたつもりが、カフェインを摂取することによって齎す効果の一つのおかげで、1時間おきにコンビニかどこかへ立ち寄らなければならない状態に毎回陥ってしまっている。

それで長蛇の列みたいな渋滞に捕まってしまった日には、車内の中でひとりシートベルトに拘束されたまま「早くここから出してくれぇ〜」と奇声を発しながら暴れ出しているのである。

こんな姿は第三の目から視点をうつしても、あまりに滑稽すぎて自分の知り合いどころか赤の他人にすら見せられない。

何よりコーヒーを飲んでしまうと催すようになり、逆に飲まないと眠たくなってしまう。だからといって飲まずにいることは地味に難しい。

そんな葛藤(?)の中で悶えて苦しんでは身体を解き放とうとしながらも、午後5時に差し掛かったところでようやくいつもの立ち寄り地点に到着した。

 

店舗に入って休憩がてら用事を済ませると、前述のようにあたり一面はすっかり夜の顔を覗かせていたのであった。

およそ1、2ヶ月前もそこにほぼ同じ時間帯に到着している。その時の情景を思い浮かべてみると、やはり日の入りがだんだん早くなってきているのがわかる。

あの時思わず撮影した、若干色味がかかった離れ雲も今じゃすっかり暗闇に飲み込まれてしまっていることだろう。

夕暮れ時、周りの雲たちがそれにならうように黒く染まっていくところを自分だけはと精一杯自分の色を出している雲に、私は一つの感情が生まれていたのであった。

最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!