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やさしい物理講座v19「ダイビングでは空気抵抗により終端速度で落下する」

重力によって落下する物体は、加速され地面に近づくに従って速度が速くなる。しかし、長い時間落ち続ける物体は、あるとき、それ以上速度変化せず一定の速度、すなわち、終端速度で落下するようになる。これは、下向きの重力と上向きの空気抵抗の力が同じになったときに起こる。

今回は、日頃スカイダイビングを見て、疑問を持っている方々(吾輩も含む)に理解を深めるために、作成している。吾輩は、怖いもの見たさで、死ぬまでにスカイダイビングを経験したいものである。

               2021.11.28

               さいたま市桜区

               理論物理研究者 田村 司

はじめに(蛇足)

算数や理科が好きな人が、苦手意識になるのは、数学と物理・力学に科目が変わった時から、理論構成には微分・積分の方程式が出てくる。この微分・積分にアレルギー反応を示す方も多いのであろう。実は、我々は小学生のときから、微分・積分の考え方円周率π(3.14)を出して面積を求めるなどで算数の計算をしていたのである。直径 2r×円周率 π=円周の長さL。半径r×半径r×円周率π=円の面積。
これが微分・積分で求めるとなると嫌気がさすことになる。「少し(微)分かった積り」が微分積分だとダジャレを言った人がいた。はい!座布団一枚。

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出典:アタリマエ


歴史的には、ニュートンの微分積分学に先駆けて、日本において発達した数学である和算においても、ほぼ同時期に微積分の初歩的概念に到達していた。和算における解析学に関連した研究を円理といい、関孝和の登場以降大いに発達した。円理という名は、円周率や円積率、球の体積や表面積が主な問題となったことによる。関孝和は円に接する正多角形の辺の長さを用い、円周率を11桁まで得ている。日本は数学が得意な国なのである。ニュートンにも関孝和氏は負けていないのである。関数f⒳ は函数から由来すると言われているが関孝和氏の偉業を称えているのかなと勝手に解釈しているのである。


スカイダイバーの落下実験(机上の思考実験)

スカイダイバ―(72kg)が飛行機から飛び落ちた場合、最初は空気抵抗が小さいのでそのスカイダイバーの落下速度が毎秒9.8㎧ごと加速していく。

空気抵抗を考えない場合(ℎ=1/2gt²)   
             空気抵抗(係数0.24とする)を考慮した場合        
            (参考プリウスの空気抵抗係数は0.25らしい)

1秒後の落下速度は9.8㎧、落下距離4.9m /落下速度9.7㎧、落下距離4.87m 
2秒後は19.6㎧、落下距離19.6m /落下速度18.8㎧ 落下距離19.2m       
3秒後は29.4㎧、落下距離44.1m /落下速度26.8㎧ 落下距離42.1m
4秒後は39.2㎧、落下距離78.4m /落下速度33.6㎧ 落下距離72.4m
5秒後は49.0㎧、落下距離122.5m /落下速度39.0㎧ 落下距離108.8m
6秒後は58.8㎧、落下距離176.4m /落下速度43.1㎧ 落下距離149.9m
7秒後は68.6㎧、落下距離240.1m /落下速度46.2㎧ 落下距離194.7m
8秒後は78.4㎧、落下距離313.6m /落下速度48.5㎧ 落下距離242.2m
9秒後は88.2㎧、落下距離396.9m /落下速度50.2㎧ 落下距離291.6m
10秒後は98.0㎧、落下距離490m /落下速度51.4㎧落下距離342.4m 
11秒後は107.8㎧、落下距離592.9m /落下速度52.2㎧ 落下距離394.3m
11.37秒後に111.4㎧、落下距離634m(東京スカイツリーの高さ)

12秒後は117.6㎧ 落下距離705.6m /落下速度52.8㎧ 落下距離446.8m
13秒後は127.4㎧ 落下距離828.1m /落下速度53.3㎧ 落下距離499.9m
14秒後は137.2㎧ 落下距離960.4m /落下速度53.6㎧ 落下距離553.3m
15秒後は147.0㎧ 落下距離1102.5m/落下速度53.76㎧ 落下距離607.0m
15.5秒後は151.9㎧ 落下距離1177.2m/落下速度53.84㎧ 落下距離634m
(東京スカイツリー(634m)から空気抵抗を考えた場合)

16秒後は156.8㎧ 落下距離4.9m /落下速度53.9㎧ 落下距離660.8.0m

落下速度V=重力加速度g×時間(秒)tで表される。
落下距離S=1/2重力加速度g×時間(秒)t×時間(秒)tで表される。

重力加速度gは1秒ごとの落下速度の増加分を示している。
自由落下する物体は1秒ごとにgずつスピードアップしていくのだ。
従って、落下を始めてt秒後の速度はgtとなる。
約12秒後に空気抵抗の力と重力が同じとなり終端速度となる。

以上の落下速度、落下距離を空気抵抗を考慮に入れたイメージ「速度」のグラフは以下の通りである。

出典:空気抵抗有する自由落下(距離から計算)
出典:/KoKo物理/終端速度の考え方

しばらくしてから、パラシュートを開くことによって減速されて、2回目の終端速度となり、地上に無事着地できるようになる。


頭の体操としての簡単な問題

東京スカイツリー(634m)からエレベータの箱を落下させたら,何秒後に地面に落ちるか。ただし、緯度などの細かい重力(万有引力と遠心力)は考えず、しかも、空気抵抗は考えないこととする。そのエレベータの箱に乗ると無重力状態の経験ができる。

回答   方程式 ℎ=1/2gt² のtを求めます。(微分・積分でも式は同じになります。)変形するとt=√(2ℎ/g)

重力加速度g=9.80665m/s²,と高さℎ=634m,を代入します。解は t=11.37秒

自由落下(距離から計算)


エレベータの箱に入ったら、11.37秒間の無重力状態の体験ができる。しかしこれは空気抵抗が無い場合である。地面に落ちて即死になる。


微分・積分を使った解説

自由落下(空気抵抗がある場合)

空気抵抗のある場合の自由落下は以下の運動方程式

m・d²x(t)/dt²=mg−κdx(t)/dt  
に従う。(ただし、κ>0で、下向き正でとった)

空気抵抗のある場合には、減衰項と呼ばれる−κ・dx(t)/dt が 加わります。

上記の式ではX軸を下図のように物体が落ちる方向が正 (つまり下向き正) になるようにとっています。右辺が−mgではなく、mgであるのはそのためです。

自由落下(空気抵抗がある場合)

逆に、物体の落ちる方向を負、つまり上向き正で座標を取ると、運動方程式はm・d²x(t)/dt²=−m・g−κ・dx(t)/dt =−m・g−κ・dx(t)/dtになります。

終端速度の微分方程式

空気抵抗ありの自由落下について
初期条件V(0)=V₀を与えた時、
速度はV(t)=(V₀−mg/κ)e(−κt/m)+mg/κ ・・・尚:(−κt/m)はeの乗数
でかけるが、t→∞の極限を取ると、v0の値によらずv(t)→mg/κに収束する。この時のv(∞)=mg/κ終端速度と呼ぶ。


空から自由落下する雨粒は、ほぼ終端速度で落下している。もし空気抵抗がなければ、弾丸に匹敵する 速度で落下するようです。また、終端速度が初期条件に依らないため、雲の中の様子によらず 雨は一様な速度で落下することが示唆される。(質量には依存する)

To be continued. See  you  later.



参考資料・参考文献


ドーリング・キンダスリー社編者『科学のしくみ図鑑』世界文化社 2019.12.10 初版1刷 

空気抵抗を運動方程式から解析する

https://manabitimes.jp/physics/1931

https://atarimae.biz/archives/8523


終端速度の考え方 | KoKo物理 (kokolainen.com)

やさしい物理講座v10「地球の重力による落下(運動)現象は無重力状態を作り出す」|tsukasa_tamura|note

空気抵抗有する自由落下(距離から計算) - 高精度計算サイト (casio.jp)

大学物理のフットノート|力学|自由落下その2(空気抵抗がある場合) (diracphysics.com)

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