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やさしい物理講座v15「『近接場光』という不思議な『飛ばない光』とは何か」

以前、「不思議な光が・・・」とくると、UFOかなと興味が湧きそうであるが、残念ながらUFO円盤ではありません。今回は「飛ばない鳥」ではなく、「飛ばない光」について解説する。

                2021.11.18

                さいたま市桜区

                理論物理研究者 田村 司

はじめに

下記参考文献の中の陳軍・山本将史共著 『光とレーザー』p189から抜粋引用させて頂きます。著作権の関係で詳細を知りたい方は購入の上印税にご協力ください。

近接場光(Near Filed Optics)

これは、我々が通常、目にする伝播光(飛ぶ光)ではなく、波長より小さい粒子が光を散乱するときに粒子の周りに幕のように附随する光のことです。

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出典:『光とレーザー』p189

上の図のように、波長より小さい粒子に光をあてると、大抵の光は散乱されるが、ごく一部が粒子の大きさ程度の領域に接近場光として附随する。

この接近場光入射光の波長に依存せず粒子の大きさ程度に広がるという性質がある。これがとても重要です。通常の伝播光は、回折により、回折限界以上はビームを絞ることができない。

接近場光は使う光の波長よりも小さい粒子の大きさ程度にしか局在しない。そのひかりの波長より小さい局在性を使って面白いことが進められている。それについては次に記す。

接近場光の局在性の理由と原因

接近場光の局在性は光の電場により粒子が分極し、電気双極子になり、その双極子の電気力線が粒子の周りに張り付いていると考えられている。


接近場光の利用

走査型近接場光顕微鏡は、近接場光という特殊な光を利用した走査型の顕微鏡のことである。しばしば NSOM(Near field scanning optical microscopy)とも呼ばれる。

細いプローブで試料を走査するという点では走査型トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)などと同様の仕組みであり、SNOM も走査型プローブ顕微鏡(SPM)の一種類といえる。

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           走査型近接場光顕微鏡
     出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

電気双極子とは

絶対値が等しい正電荷と負電荷とが非常に近い距離に存在して一対をなしているもの。電気二重極子あるいは(電気)ダイポールともいう。

 点電荷+q(空間的広がりが無限小で大きさがq)が点電荷-qの位置から測ってベクトルlの位置にあるとする。lが非常に小さいとき、この正負の点電荷は電気双極子をつくり、p=qlはこの電気双極子のモーメントとよばれる。lが非常に小さいとは、この正・負の電荷周囲の他の電荷との距離に比して、lが非常に小さいという意味である。

 電気双極子は本来は電磁気学における一つの概念であるが、物質は微視的には正・負の電荷をもつ微視的粒子が集まってできているので、とくに外から電界がかかっているときには、いろいろな微視的電気双極子が存在する。電磁気学によると、電気分極は電気双極子モーメントの単位体積当りの総和である。したがって、物質の誘電性は、微視的には、その中に存在する微視的電気双極子の行動として説明される。


To be continued .  See you later !


参考文献

陳軍・山本将史共著 『光とレーザー』オーム社 2006.12.14 第1版第1刷P189

近接場光学顕微鏡の原理https://groups.ims.ac.jp/organization/okamoto_g/advance/nearfieldprinciplej.html

近接場光学顕微鏡の原理 と応用https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenbikyo1950/38/1/38_1_24/_pdf



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