やさしい物理講座v35「光の真空中の減衰作用は暗黒物資の素粒子『アクシオン』かも知れない」
前回の講座の続編になる。
現在の物理現象に於いて、重力(万有引力)があるが反重力(斥力)が無い旨の解説をした。
その斥力が無い事実の帰結として、ビックバンや宇宙膨張及び宇宙インフレーション論を否定した。これらの論説になった光の赤方偏移という宇宙観測の結果(光源と観測者のドップラー効果)から導き出された宇宙論が前述の通りであるが、「光の赤方偏移」の観測結果を再考すべき理論構築の必要をそれは示唆している。
今回は以前から訴えている「光の真空中の減衰理論」について暗黒物質の素粒子(アクシオン)に起因するとの自説を論じる。
2021.12.23
さいたま市桜区
理論物理研究者 田村 司
はじめに
現在、物理学においては4つの基本的な力が考えられている。
そのうちのひとつ、電磁力(静電力と磁力)には引力と斥力の両方が存在する。電気と磁気にはそれぞれ2つの極性があり(電気では正と負、磁気でも正負と言うがN極とS極と言うこともある)、同じ極性同士には斥力が働き、異なる極性同士には引力が働く。
一方で、これもまた4つの力のうちのひとつである重力(万有引力)は、引力だけが確認されており、斥力としての重力は確認されていない。
また、特殊な場合として、パウリの排他律はある種の2つの物理的存在(フェルミオン)が同時にひとつの場所を占めることができない(正確にはひとつの状態を取り得ない)という法則であり、このためこの種の存在が非常に接近したとき非常に強力な斥力が発生するとみなすことができる。この場合は斥力だけであり、対応する引力は存在しない。
光粒子(電磁波)は物質との関係には粒子性を示すが空間を伝播するときは波動性を示すなどの2面性の観測結果を表す。そこで、電磁力の観点をも視野に入れて解説する。
「電磁力の伝わり方」の場の考え方
遠隔作用と近接作用の考え方
ニュートン力学では,万有引力は力を伝える媒質など存在しないとい う,遠隔作用の力であった.これはつまり,力は物体との空間を“ 伝搬 ”しているのでは なく,何も介せず物体へ直接に作用しているという考えである.
そんな事は本当にあり得 るだろうか?
そこで,ファラデーは次のように考えた. 電荷 Q1 が直接 Q2 に作用するのではない.まず Q1 は,その近くの 空間の物理的な状態を変化させ,それの変化が次々と伝わり,Q2 に達した時点 で,それに影響を及ぼす.Q1 は空間 (場) に作用を及ぼし,Q2 は空間から作用 を及ぼされるのである. これは,明らかに遠隔作用ではなく,近接作用と呼ばれる.
何もない空間そのものが,力 を伝搬する物理的性質を持っていると考えるのである.これが場の考え方なのである. 観測される結果が遠隔作用と同じであれば,ただの言い換えに過ぎない.
遠隔作用と近 接作用の決定的に異なることがある.それは,作用が伝わる時間である.遠隔作用では瞬 時に影響が伝わるが,近接作用では有限の時間が必要である.以前は光は何かの媒体によって伝播するエーテル論があったが今は、否定されている。真空中を電場・磁場の作用で伝播することが解明されている。電場・磁場という場の概念を光粒子(素粒子)としているのである。観測・測定の結果,それらが伝わる 速度は,光速度と同じである. 電荷を急激に変化させて,その影響が有限の時間で伝わることが分かっている.電波な どがその例で,人類はそれを利用しているのである.
重力場から生じる波(重力波)の存在の証拠
同じように質点を急激に変化させる とその波 (重力波) が観測されると理論的に考えられている.しかし,以前の講義にも述べたとお り,重力は非常に小さいのでその観測は大変難しく,まだ重力波のはっきりした証拠は見 つかっていない.
「重力は空間を歪めて、その歪んだ空間を直進するので光は必然的に歪んだ空間を曲がる。故に重力が光の進路を曲げる」との論説があるが、最近は宇宙空間ガスに重力が濃淡現象を起こし、その濃淡ガスを通過するときに屈折を起こすとの説(屈折)も有力である。何故なら、重力は質量に対して作用する。質量0の光粒子(電磁波)には働かないと考えるのが自然であろう。
重力は質量のある物質に作用するので、光子・電磁波(質量0)など以外の物質・素粒子には作用するのでその引力の変動(恒星の爆発)による現象は波として観測できるであろうが、物質を透過して作用する引力・重力場を検出する重力波観測器での観測は難しいであろう。
物理の常識を覆す「第5の力」
アッティラ・クラスナホルカイ率いるハンガリー科学アカデミーの原子力研究所の科学者たちは、昨年ハンガリーで行われたある実験の最中に、ベリリウムの同位体(厳密には「ベリリウム8」。非常に不安定な物質だ)の放射性崩壊において「ある異常」を目の当たりにした。
物理学の教科書に書かれている物質の最小単位である素粒子に働く自然の4つの力は、「基本相互作用」と呼ばれている。
前述のハンガリーの研究者チームは、科学誌「Nature」でベリリウム同位体の放射性崩壊における予想外の現象を観察し、それは第5の基本相互作用の存在を示唆している結果かもしれないという。
「電磁相互作用」、「重力相互作用」、そして「強い相互作用」と「弱い相互作用」。これら4つの力は、あらゆる物理学の教科書に書かれている「基本相互作用」だ。
もしかすると、自然の「第5の相互作用」なのかもしれない
実験の結果は、科学誌「ネイチャー」のブログで語られているように、もともと論文アーカイヴサイト「ArXiv」のプレプリントサーヴァーにアップロードされていた。
そしてその後、2016年1月に「Physical Review Letters」に論文が掲載。その論文のなかで、研究者たちは、とりわけ、新しく軽い粒子(電子わずか34個分)の存在を想定していた。しかしこのとき、注目されはしなかった。
少なくとも去る4月、アメリカの理論物理学者のチームがArXiv上に、このハンガリーの研究結果を掲載。彼らは、そのデータがそれまでの実験で明らかになったことと矛盾していないことを示し、まさに「第5の基本相互作用」かもしれないと結論づけたのだ。
暗黒物質に近づく
すでに以前から、物理学者たちの間では、すでに知られている「4つの基本相互作用」以外に、ほかにも相互作用が存在する可能性については議論されてきた。
そのような相互作用は、まさに、基本粒子の標準モデルで説明されていない「抜け落ちた部分」を理解するのに役に立つのかもしれない。この標準モデルは、現在知られている粒子の間の相互作用を効果的に説明してきたが、宇宙の80パーセントを構成していると考えられている、目に見えないダークマターについては何も述べるものではなかった。
考えられる説明としては、他の粒子や他のフォースキャリア(力を媒介する粒子)の存在が関係してくる。そのなかには、いわゆる「暗黒光子(ダークフォトン)」もある。電磁気相互作用を仲介する従来の光子の対照となる仮説上の物質である。
クラスナホルカイの研究チームが注目したのは、まさにこの奇妙な存在だった。科学者たちは、リチウム7を標的に陽子の束を衝突させて電子と陽電子を放出させ、不安定なベリリウムの原子核をつくり出した。
論文では、さらにこう説明されている。「標準モデルによると、物理学者たちは、電子と陽電子の軌道の角度が大きくなるにつれて、電子と陽電子の数が減少するはずだった」。これに反して科学者たちは、140度の角度において電子と陽電子のペアの放出の数が急上昇することを観察したという。そして、さらに角度を広げると、また減少に転じる。
クラスナホルカイによると、この電子と陽電子の放出の急上昇するという現象は、ベリリウムの原子核の小さな断片が、自らの過剰なエネルギーを用いて新たな粒子を形成している(約17メガ電子ボルトの質量をもつ)という事実の証拠だという。
もうひとつの可能性
クラスナホルカイはこうも語っている。「わたしたちは、このデータについて確信をもっています。わたしたちの研究チームはこの3年間、エラーの可能性を最小にするため何度も実験を繰り返して、その再現性を確認してきました。偽陽性を観察する確率は、2000億分の1です」
今回観察された予想外の現象は、暗黒光子に起因しているというのがハンガリーのチームの見解だが、フェンらの研究チームの意見は異なっており、この粒子は「プロトフォビックXボソン」かもしれないという。これはつまり、電子やニュートリノと相互作用するごく限られた範囲の力を仲介する粒子だ。
ジェファーソン研究所で開始されようとしている実験「DarkLight」は、この謎を解明する助けとなるはずだ。実際、10〜100メガ電子ボルトの範囲のエネルギーをもつ粒子を探すために計画された。暗黒光子にせよ、ボソンXにせよ、仮定される粒子はまさにこの範囲のなかにある。今後を注視するとしよう。
アクシオン(英語: Axion)
あるいはアキシオンとは、素粒子物理学において、標準模型の未解決問題のひとつである強いCP問題を解決する仮説上で、その存在が期待されている未発見の素粒子である。冷たい暗黒物質の候補の一つでもある。
アクシオンは強いCP問題の解決策の1つとして提唱された未発見の粒子である。アクシオンはペッチェイ・クイン対称性(英語版)の自発的対称性の破れに伴って出現する(擬)南部・ゴールドストーン粒子である。ペッチェイ・クイン対称性は量子色力学に対してアノマリーを持ち、この性質によりアクシオンは量子色力学の位相を動的に吸収することが可能となっている。
想定される性質(光子と反応する)
様々な実験や観測を考慮した結果、アクシオンの質量は電子の約1億分の1以下という非常に微小なものだと考えられている。
また、光子と非常に弱いながらもお互いに反応するため、光子との反応を使った探索方法が有力なものの一つとなっている。
特に、磁場とアクシオンの反応によって光子を作る逆プリマコフ変換を利用した実験は数多くある。
観測実験
様々な理論により観測が試みられている。
代表的な検出原理[4]
プリマコフ効果でアクシオンを光子に転換
光子を検出
X線領域 : 太陽アクシオン - 半導体検出器による検出
マイクロ波領域 : 暗黒物質アクシオン - CARRACK , ADMX[6]
アクシオンは強い磁場の中で光に変わると予測されており、この性質を利用した検出が世界各国で試みられている。たとえば東京大学のグループは、太陽から飛来するアクシオンに強磁場を印加してX線に変換し検出する試みを行っている。暗黒物質の候補にもあげられているため、京都グループはリドベルグ原子を用いて検出する独自の着想により探索を続けている。アメリカのグループは、超伝導磁石を用いた強磁場の元で暗黒物質のアクシオンが電磁波に変換して検出を試みる最先端にいる。最近では素粒子実験物理学のメッカであるヨーロッパのCERNにおいても、太陽から飛来するアクシオンを大変高い感度で検出を試みる実験が進められている。
観測機器
望遠鏡
太陽中心では原子核や電子と黒体放射光子の相互作用により、平均エネルギー 4KeV のアクシオンが作られている可能性がある。このアクシオンを直接観測するため太陽アクシオン望遠鏡(東京アクシオンヘリオスコープ)が作られ観測が行われている。この望遠鏡は、磁場中でアクシオンをX線に変換することにより観測を試みている。
CARRACK
強磁場中に置かれた共振空胴内で光子に転換したアクシオンをリュードベリ原子に吸収させる。そしてこの原子のみをイオン化しその電子を計数する方式。
観測成果
2019年、京都大学、東北大学の研究グループは、原始惑星系円盤の観測によるアクシオンの探査法とその研究結果について発表した。原始惑星系円盤は同心円状の偏光パターンを持っており、アクシオンが存在すれば偏光パターンに渦巻き状の乱れが生じるとされる。研究グループはすばる望遠鏡の取得した原始惑星系円盤の観測データを用いて分析を試みたが、偏光パターンの乱れは見つからなかった。この研究により、アクシオンが光に与える影響度合いを示す「結合定数」の上限値を、これまでの研究の10分の1以下に小さく更新することに成功した。
2020年6月、イタリアのグランサッソ国立研究所で実施されているXENON1T実験において、「予想外の過剰な事象」が検出され、この原因としてアクシオンが関与している可能性が発表された。ただし、同じエネルギースペクトルにはトリチウムの崩壊によって生じる電子があるほか、ニュートリノが関与している可能性も排除されていない。
観測の精度は過去最高の99.98%に達したが、素粒子物理学の世界で発見と認められるには、99・9999%が必要とされる。そのため、今後さらに大規模で高感度なXENONnT実験によって真因が明らかになることが期待されている。
暗黒物質の候補でもあるが、2020年6月に3σで検出されたアクシオンは暗黒物質とは直接関係しない別のタイプのものとなる。
アクシオンの再解説
蓑輪 眞(物理学専攻 教授)
アクシオン(axion)は存在が予言されながら未発見の素粒子で,わずかに質量をもつと考えられ,暗黒物質の候補となっている。
連続的対称性の破れにともなって発生する南部・ゴールドストーンボソン(理学部ニュース2006年5月号「理学のキーワード第1回」参照)の一種である。 素粒子の弱い相互作用では粒子と反粒子の入れ替えについての不変性(CP不変性)が保たれていないことが分かっている(小林・益川理論)。 原子核をまとめている力,すなわち強い相互作用においても,それを記述する量子色力学(QCD)の基礎方程式には,理論では決まらない任意の「角度」に比例してCP不変性を破る項が含まれている。 ところが実験的には,強い相互作用においてはCP不変性が良い精度で保持されており,理論と実験が矛盾することから,「強い相互作用のCP問題」とよばれている。 1977年にR. ペッチャイ(Roberto Peccei)とH. クィン(Helen Quinn)は,「角度」変数を素粒子の場に関係する量とみなしてそのまわりの回転対称性を要請した上で,その対称性が破れて自然に安定点に落ち着くことで強い相互作用をCP不変に保つ仕組みを提唱した(PecceiQuinn機構)。 この対称性の破れに対応して南部・ゴールドストーンボソンの存在が同時に予言されて,アクシオンとよばれている。
アクシオンは強い磁場とレーザー光によりアクシオンと光子の結合を調べる非加速器素粒子実験によって精力的に探索が行われているが未発見である。 また,身の回りに希薄な密度で充満し,宇宙の暗黒物質を形成していると思われるアクシオンを,強力な磁場中でマイクロ波に変換してとらえる実験が,アメリカおよび京都大学でそれぞれ行われている。 筆者の研究室では,太陽の中で発生すると考えられるアクシオンを超伝導磁石による専用の望遠鏡(愛称Sumico)で探索する実験が行われている(理学部ニュース2004年7月号「望遠鏡ものがたり4」参照)。
My Opinion.
仮説:素粒子の存在が『光の真空中の減衰』という作用を及ぼす
第一候補の素粒子は「アクシオン」である。
暗黒物質で光子に影響力を及ぼすとされる未発見の素粒子アクシオンが「光の減衰」作用の候補である。
もし、アクシオンの発見と光粒子(電磁波)とに「光の真空中の減衰」作用の影響が確認されるならば、今までの、赤方偏移の理由が「ドップラー効果」から「光の真空中の減衰作用」への宇宙天文学理論の180度の転換になる大事件となるであろう。
宇宙背景放射の原因
宇宙の暗黒物質の素粒子が光粒子(素粒子:電磁波)と親和性があり、138光年先から伝播してくる光はその素粒子(候補:アクシオン)にエネルギーを与え、光エネルギーの減衰作用をおこした結果が赤方偏移と考える。恒星が観測者に対して運動した結果(ドップラー効果)の赤方偏移ではないことが明確になるのである。減衰した分のエネルギーは素粒子(アクシオン)から放出・拡散され、その結果が宇宙マイクロ背景放射の原因となるものと考える。それが宇宙の一様性問題の解決となる。
宇宙マイクロ波背景放射の温度は10万分の1の精度で等方的(方向に依存しない)。地球から見て、まったく逆の方向からやってくる電波の温度が一緒なのだ。逆の方向からやってくる宇宙マイクロ波背景放射が放出された場所は、現在の宇宙で約920~940億光年離れている(宇宙膨張説によると半径460~470億光年)といわれている。
色々な事実を俯瞰して見ると、これほどの距離だけ離れた場所が、示し合わせたように同じ温度だったということは、宇宙に散在する恒星からの光が前述した素粒子(候補アクシオン)によって放出・拡散されたことを示唆しているのである。
表題の「光の減衰作用が暗黒物資の素粒子『アクシオン』かも知れない」が明白になるならば、天文物理学・理論物理学の一大騒動になるであろう。
To be continued . See you later !
参考資料・参考文献
原康夫著 『量子力学』岩波書店1994.6.6 第1刷発行
山崎耕造著 『宇宙線と素粒子の本』日刊工業新聞社 2018.1.18 初版第1刷発行
広瀬立成著 『ヒッグス粒子』ナツメ社 2012.8.30 初版発行
「ダークマター」を探していたら「アクシオン」の兆候??|ひだ宇宙科学館 カミオカラボ (note.jp)
アクシオン - 理学のキーワード - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部 (u-tokyo.ac.jp)
自然界の四つの力 | ILCの物理 (kek.jp)
1番目の力:重力 | ILCの物理 (kek.jp)
2番目の力:電磁気力 | ILCの物理 (kek.jp)
3番目の力:弱い力 | ILCの物理 (kek.jp)
4番目の力:強い力 | ILCの物理 (kek.jp)
電磁気学の基本的な考え方
生産システム工学専攻 ∗ 1 年 前期 電気磁気学特論
6.pdf (akita-nct.ac.jp)
宇宙の始まりの謎を解くカギは「初期ゆらぎ」にあった? ――図解 宇宙のかたち(3) | 本がすき。 (honsuki.jp)
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