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核分裂生成物の解決法         副題 放射線(α・β・γ)発電の提言

放射性物質の処理が社会問題化しているので提言するものである。 アインシュタインの「E=mc²」は皆さんご存知であろう。 そして光電効果の「E=ℎν」もご存知でしょう。 そこで、今回は原子力発電後の放射物質について、独自の視点で提言する。


                          2020.10.16

                          さいたま市桜区

                      理論物理研究者 田村 司


はじめに

 米国で始めた原爆製造計画(マンハッタン計画)は日本国の広島にリトルボーイ(ちびっこ)、長崎にはファットマン(でぶちょ)という原子爆弾を投下して数十万の赤ん坊・子供を含む非戦闘員を虐殺し、被曝によるがんや白血病の後遺症で国民を苦しめた歴史は永遠に消えないであろう。

原子力発電所と平和利用されてはいるが、未だに、核分裂生成物の処分方法に解決を見いだせないでいる。これは政治的な提言ではなく科学的・技術的見地からの提言である。浅学菲才の吾輩であるが、 日本の科学・技術力でこの日本の隘路から抜け出すことを切に願って止まない。

1、核分裂の概略


べータ崩壊のイメージ図

画像2

アルファー崩壊のイメージ図

画像3


核分裂イメージ図です。

画像4

(中性子がウラン235に取り込まれウラン236になるがこれが契機となりクリプトン96とバリューム140の生成物の一例です。他にも色々な物質が生成されます。)


核融合イメージ図です。

画像1

(重水素とトリチウム(三重水素)の核融合によりへリームが生成され,E=mc²のエネルギーの放出と中性子が飛び出ます。15分後にはβ崩壊して陽子と電子と反ニュートリノになるらしい。)

不安定核は主に次の3つの過程を経て別の原子核に変わる。
⑴、電子もしくは陽電子を放出して僅かに軽い核になる。ベータ崩壊という。

⑵、He核(アルファ粒子)を放出して少し軽い核になる。アルファ崩壊という。

⑶、He核より重い大きな核(重荷電粒子線)を一つ以上放出してかなり軽い核になる。

 この核崩壊を起こす原子核は放射線を出す能力を持つ(放射能)。

原子核分裂というと ⑵, ⑶ になるが、一般的には ⑶ の事を指す事が多い。

核分裂性物質の原子核が中性子を吸収すると、一定の割合で ⑶ の過程で核分裂を起こし、合わせて中性子を放出する。

この中性子が別の核分裂性物質の原子核に吸収されれば連鎖反応が起こる。

また、この崩壊過程は発熱反応である。

この連鎖反応と発熱反応の性質を利用して一度に大量の熱を生成する事が出来る。これが原子力発電や原爆の基本原理である。

2、ウラン原子の核分裂


核分裂を簡単に起こすウラン235

ウラン235に中性子を一つ吸収させると、二つの原子核と幾つかの高速中性子に分裂。

核分裂反応は確率的に起こるため、他の核種を生成することもある。

下記のウラン235の反応は(あくまで一例)。

U(ウラン)235→α崩壊(He原子核)→イットリウム95 +ヨウ素139+中性子1(95+139+1=135)

↓(235-231=4)

Th(トリウム)231→β崩壊

Pa(プロトアクチウム)231→α崩壊(231-227=4)

Ac(アクチウム)227→β崩壊

Th(トリウム)227→α崩壊

Ra(ラジウム)223

最終的にはPb(鉛)になるまで変わっていく。

元素記号の質量数は原子核の中に存在する陽子と中性子の和であり、生成前後の核子数は等しい。質量数(質量とは異なる)は厳密に保存する。


核分裂を簡単に起こさないウラン234、ウラン238がある。

U(ウラン)238←+中性子

↓(238+1=239)

U(ウラン)239→β崩壊

Np(ネプツリウム)239→β崩壊

Pu(プルトニウム)239

3、核分裂の解説

質量欠損とは

 質量数はあくまで陽子と中性子の総和であって質量ではなく、実際の原子核の質量は一般に質量数である陽子と中性子の質量の総和よりも小さい。

この質量差を質量欠損と呼ぶ。

質量欠損の実体は、特殊相対性理論の帰結である質量とエネルギーの等価性 E=mc² で質量に換算される原子核内部の核子の結合エネルギーに他ならない。

核子とは

 陽子と中性子という原子核を構成している主要な物質の事であり、これをつなぎ合わせているのが結合エネルギーである。

 核子の一つである陽子はプラスの電荷を持っていて、ちょうど磁石の同じ極同士が反発するように、クーロン力で反発する。

 陽子だけであったらバラバラに砕け散ってしまう核子同士をつなぎとめている接着剤としての役目が中性子にはある。

 とくに陽子が多くなりすぎるとクーロン力が強まるから、原子番号が大きい(=陽子が多い)核種ほど中性子も多くなる。 

 ところが中性子が多すぎてもバランスが悪くなってしまい、陽子と中性子のバランスが悪い核種は放射能を持っている。

 陽子と中性子が結合すると、つなぎとめている力がエネルギーに変わって、少し軽くなる。これが質量欠損のエネルギーであり、実質上、結合エネルギー=質量欠損であり、これが小さいほど核反応が起こりやすく、大きいほど核反応が起こりにくい。

ちょうど鉄(Fe)のあたりで結合エネルギーが最大値を示している事がわかる。鉄より質量数が小さい原子核は核融合反応を起こしやすく逆に鉄より質量数が大きい原子核は核分裂反応を引き起こしやすいと言うわけである。よって、分裂前と分裂後の質量の差は結合エネルギーの差であり、核分裂を起こすとこの質量の差に相当するエネルギーが外部に放出される。

過程の質量差をエネルギーに換算すると、ウランの核分裂反応で放出されるエネルギーはウラン原子一つあたり約 200 MeV となり、ジュール J に換算すると 3.2×10-11 J となる。1グラムの単一の物質に含まれる原子数はアボガドロ数(6.02214076×10²³)を質量数A(235)で割る。

1グラムのウラン235の中には 2.56×10²¹ 個の原子核が含まれ、全部が分裂すると、 8.2×10¹⁰ J のエネルギーが発生する。

対称核分裂

対称核分裂とは、原子番号90番のトリウム232、原子番号92番のウラン238、原子番号96番のキュリウム242、原子番号98番のカリホルニウム252[5]などの原子がその原子番号のちょうど半分の原子番号の原子2個に分裂することを言う。また、その分裂した2個の原子の番号が半分に近い値であり、その2つの原子番号の和が元の原子の番号と等しい場合、非常に対称性の高い核分裂と言える。

対称核分裂は、励起エネルギーと共に増えることや、その生成物が核分裂連鎖反応の傾向の一つであることが知られている。

核分裂生成物

原子力発電所において熱中性子によってウラン235とプルトニウム239、およびトリウム燃料サイクルにおいてウラン233が核分裂反応を起こした場合の核分裂生成物である。

核分裂の過程で原子核が分裂してできた核種を核分裂生成物という。核分裂片ともいう。

通常は二等分になることはなく、一方が重く(質量数140程度)、一方は軽い(95程度)核になる。

これは、分裂するときに魔法数に近い安定な原子核になろうとするためだと解釈されている。


核分裂生成物がどの核種になるかはある確率で決まる。この確率を収率という。

核分裂する核種によって異なる収率分布をもっているので、核分裂生成物を分析すれば核反応を起こした親核種が判る。


例えばウラン235が核分裂を起こした場合その核分裂生成物は80種類程度生じ、質量数は72から160と広範囲に分布している。これらは質量数90と140付近のピークを中心として鞍型の分布をなしている。


核分裂生成物は様々な核種の混合物であるが、総じて陽子数と中性子数との均衡を欠いており放射能を持つ。これらの放射性同位体は、陽子と中性子の均衡が保てるところまで放射壊変(主にベータ崩壊)を繰り返す。


核分裂生成物の中には中性子を良く吸収してしまう物質が含まれる。このような物質は、原子炉に蓄積して核分裂連鎖反応を阻害してしまうため、毒に例えて中性子毒あるいは単に毒物質と呼ばれる。原子炉を停止したり出力を変えた場合、放射性の毒物質の存在量は時間とともに変化するため、原子炉の挙動を不安定にしてしまう要因となる。


これらの崩壊速度は様々で、数秒から数ヶ月でほぼ崩壊しつくす短寿命の核種、100年単位の中寿命の核種、そして半減期すら20万年を超える長寿命の核種がある。放射性物質は基本的には寿命(ここでは半減期とほぼ同義語と捉えて良い)が短いほど少量でも放射能が強いものの短期間ですぐに減衰するが、逆に長寿命であれば放射能は少量ならば弱い(大量にあれば当然強い)が、時間が経ってもなかなか減らないという性質を持っている。


短・中寿命核種は盛んに放射線を放って崩壊するため少量でも放射能が大きく、例えば1945年に原子爆弾で攻撃された広島市と長崎市では、被爆者だけでなく家族や知人の行方を捜すため爆心地周辺に後日立ち入った人々も重篤な放射線障害(がん、白血病)に苦しんでいる。


一方、長寿命核種は放射能は小さいが、原子炉の使用済み核燃料のように大量に存在すると、人間社会の尺度では半永久的に放射線を放ち続けるやっかいな廃棄物となり、半減期の数倍から数十倍(つまり100万年単位)の期間、厳重に遮蔽して保管し続けなければならない。


このように多数の核種から構成されている核分裂生成物であるが、核分裂が起こってからt分経過した後の全ての核分裂生成物の合計の放射能の強さの減衰は一定であり、

4、原子力発電におけるウランの核分裂

ウラン235が1個核分裂を起こせば 3.2×10-¹¹ J のエネルギーを放出するので、1ワットのエネルギーのために、1秒間に約300億個のウラン235が核分裂が必要。

 電気出力100万キロワットの原子力発電の熱効率から逆算すると熱出力は3倍すなわち300万キロワットは必要であり、1日あたりに 8×10²⁴ 個のウランを核分裂させる必要がある。

すなわち、300万キロワットを出力するのに必要な1秒あたりの原子数を求めれば

、1日(= 86400秒)核分裂反応を継続に該当する。

100万キロワット級の原発では1日にウラン235を約3kg使用していることとなる。

広島に投下された原子爆弾は1kgが核分裂を起こしたとされているため、100万キロワット級の原発では1日3発(8時間に一発)の割合で広島原爆を燃焼させつづける事に相当しているのである。


またウラン235が1個、核分裂反応を起こせば中性子が平均2.5個放出されるが、このうち1.5個をウラン235以外の物質で吸収させ、1回の核分裂につき1個の中性子が、他のウラン235に当たって再び核分裂を引き起こしていくといった連鎖反応を起こすのが出力が一定となった状態の原子力発電であり、核分裂に使われる中性子が1個をわずかでも上回れば短い時間で(たとえ1万分の1秒であっても)たちまち指数関数的に反応が増大して暴走してしまう。

原子力発電では出力の調整は根本的困難が常につきまとい、これが実際に起こってしまったのがチェルノブイリの例である。これだけ危険が伴うものである。

 軽水炉等では熱中性子により核分裂を起こすため、原子力事故等で放出される核種は熱中性子による核分裂生成物となる。

高速中性子による核分裂での収率は異なるため、高速増殖炉の運転中の事故や核実験や核戦争などが起こって原子爆弾が爆発したときなどに放出される核分裂生成物の収率は異なる。

5、主な核分裂生成物

(ウラン235・プルトニウム239の熱中性子による核分裂)

セシウム133 一部は中性子捕獲により半減期約2年のセシウム134になる

ヨウ素135   半減期6.57h  崩壊で生成するキセノン135は原子炉でもっとも主要な毒物質で10-50%が中性子捕獲によりキセノン136になり、 残りは半減期9.14hでセシウム135になる。

ジルコニウム93 半減期1.53My

セシウム137   半減期 30.17y・・・ガンマー線放出

テクネチウム99  半減期 211ky

ストロンチウム89  半減期 50.53d

ストロンチウム90 半減期 28.9y・・・ベータ線放出


ヨウ素131     半減期 8.02d・・・ベータ線放出

プロメチウム147  半減期 2.62y

サマリウム149  半減期 安定  主要な毒物質のひとつ

ヨウ素129     半減期 15.7My

キセノン133    半減期 5.2475d

プルトニュウム  半減期 24000y・・・アルファー線 毒性が消えるまで24万年の歳月が必要となる。

6、核分裂生成物の発生原因

⑴、地球環境に存在する核分裂生成物

 地球を構成する重い元素は、太陽系形成の原料元素を供給した超新星爆発の際のプロセスにより生成したと考えられている。

その瞬時には非常に重い核種(〜質量260)も生成し、不安定な核種は、その後の様々な壊変を経て安定な核種に変じたとされる。

従って、核分裂生成物と定義される核種についても、地球誕生時に既に構成物として存在した始原核分裂生成物 と、後から、重い核種の自発核分裂反応中性子誘起の核分裂反応により生成した核分裂生成物 がある。

以上の天然核種とは別に、20世紀に始まった人類の原子力利用活動により新たに追加された人工の核分裂生成物 がある。本章では、人間活動が及ぶ大気圏と海洋、そして陸域:地表と地殻部分(平均厚み:陸地30km,海洋5km)を地球環境として、寿命の比較的長い放射性の核分裂生成物 のみを対象に、それらの全存在量をまとめている。  

天然放射性核種(NORM)として存在する核分裂生成物

 これまでに始原核分裂生成物 量を測定したという報告はない。地球には寿命の永い始原元素であるUとThが主として地殻中に濃縮されて存在する。これらの重い核種は、自発核分裂と中性子誘起の核分裂反応により核分裂生成物 を生成している。

  238Uの自発核分裂反応からの核分裂生成物

 U、Th、Pu核種の自発核分裂半減期を表1に示した。この中で下線を引いたものが天然核種である。自発核分裂の発生頻度は、その核種の存在量に比例し半減期に反比例するので、表中の有意の大きさをもつ天然核種は238Uのみである(半減期は 8.2 x 1015 年)。1モルの238U(原子核 6 x 1023 個、238g)の自発核分裂頻度は、

  λN =[0.69315 / (8.2 x 1015)]x 6 x 1023 = 5.07 x 107 /年

                      = 1.39 x 105 /日 = 1.61/秒

1kgの238Uなら核分裂数は6.76回/秒となる。

 地殻内の全U量は、U含有率を1.8ppmとすると約 4.32 x 1016 kgとなるので、地殻中で1年間に起きる総核分裂回数は 9.2 x 1024 となる(海水中ではその約0.01%)。これはウラン3.65kgに相当する。言い換えれば、地殻内では、年間約3.7kgの238U原子核が分裂して核分裂生成物 に変化していることになる。

 生成した核分裂生成物 は、その生成速度と崩壊速度が等しくなった時点で平衡状態(永続平衡)になる。

 

⑵.原子力発電による核分裂生成物

 世界の商用原子力発電については、IAEA等のデータから2003年までの全世界総発電量は、約 4.7 x 1013 kWhである。この発電のために分裂消費したアクチノイド(An)の量を求める。原子炉内で核分裂するのは235Uのみならず、(238Uの中性子捕獲で生じる)239Pu、そして238Uである。ここでは、軽水炉を念頭に、これらアクチノイドの1回の核分裂で利用できる熱エネルギーの代表値を190MeV、その電力への転換効率を33%として計算すると、上記 4.7 x 1013 kWhの電力量を得るには、約6,550tのアクチノイドの核分裂が必要である。すなわち、発電の結果生成したFPの総量も6,550tとなる。わが国の原子力発電では、2003年までの総原子力発電量約 5.3 x 1012 kWh、アクチノイドの核分裂量は約740tとなる。現在、全世界の発電炉によるアクチノイド核分裂量は、年間約350t(わが国のそれは約40t)である。

 長寿命核分裂生成物 核種:85Kr、90Sr、99Tc、129I、137Csの生成量(〜2003年迄)を、核分裂収率から求めた。

⑶.軍事用Pu生産からの核分裂生成物

 軍事用Pu生産炉の場合、信頼出来る運転実績は公開されていないので、生産されたPu量から核分裂生成物 生成量を予測する。2000年時点では『兵器級Pu』の量として概算値300tとされている(米国約100t、ロシア約180t、仏国5t、中国5t、英国3t)。『兵器級Pu』とは、保障措置上は240Puの同位体組成が7%以下とされている(それ以上であっても核弾頭として使用できる事も自明である)。Pu生産用の天然ウラン金属−熱中性子炉において『兵器級Pu』を得る時は、燃料の燃焼度を1000MWD/t以下に抑える必要がある(米国では600〜1000MWD/t、Hanfordにおいてスーパー級Puを生産するために125MWD/tといった条件が採られた)(参考文献4)。ウラン燃料を燃焼すると『235Uの核分裂反応』と『238Uの中性子捕獲→Pu生成反応』が平行して進むが、両者の比率をそれぞれの反応断面積(σf(235U)= 580b,σc(238U)= 2.72b)と天然ウランの核種組成から求めるとほぼ1.5となる。『兵器級Pu』生産における燃焼度は極めて低いので、生成したPuの燃焼は無視でき、Pu生成反応が優勢になる照射条件が採られる等の理由から、この比率はさらに小さくなる。以上の点から、Puが300t生成した時には、同時に約400tの235Uが核分裂したと推定できる。この量は核分裂生成物 生成量にも相当する。


⑷.舶用炉からの核分裂生成物

 原子力艦船用動力炉(全世界で約500基)は、高濃縮ウランを用いた軽水発電炉と考えられるが、運転実績、再処理量等の記録は公開されていない。1997年の米国海軍省報告では、運転実績として総航続距離1億マイル以上4,700炉・年以上が示され、Idaho Chemical Processing Plantには原子力艦船からの使用済み核燃料:13tを保管、2035年にはそれが65tになるとされている(参考文献5)。1990年代以降は再処理を行わないこととなっているので、これが全量である。また、1996年時点の旧ソ連海軍所有の使用済み燃料は30t(5.6 x 1017 Bq)であるが(参考文献6)、高レベル廃棄物量は少ないことから再処理は実施されなかったと想像される。いずれも燃料の燃焼度が不明なので、核分裂生成物 生成量の詳細は不明。

⑸.核爆発による核分裂生成物

 これ迄に知られている核実験は、大気圏内543回、地下1,876回であるが、そこでのアクチノイドの核分裂量(あるいは核分裂生成物 の生成量)に関しては、国連科学委員会報告;UNSCEAR(参考文献7)がある。上記大気圏内核実験の総収量440Mt(メガトン)の内訳として、全核分裂収率189Mtが示されている。そこで、《1Mt = 1.4 x 1026 fission = 56kgのアクチノイドの核分裂》を用いて全核分裂量に換算すると約11tとなる。地下核実験の総収量90Mtは報告されているが、核分裂収量の記述は見当たらない。総収量90Mtの約50%を核分裂反応によると仮定すると、アクチノイドの核分裂量は約2.6tとなり、両実験の合計は、13.6tである。これらの値に基づき、核実験により生成した主な長寿命核分裂生成物 核種の生成量を計算できる。

⑹.地球環境に存在する核分裂生成物 の総量

 地球環境の核分裂生成物 について、様々な生成源毎の存在(生成)量がある。ところで、原子炉には、上記以外にも研究炉、実験炉などがある。これらの炉は、数は多いが発電炉に較べて出力も低く、運転時間も限られているので生成した核分裂生成物 量は無視できる。以上をまとめて、ここで、85Kr、90Sr、137Csは半減期が比較的短いので、生成後の時間と共に減衰している。


7、放射能、放射線のリスク

内部被曝の怖さ

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米国による広島・長崎に投下されたリトルボーイ(ちびっこ)・とファットマン(えぶちょ)のふざけたネイミングの原子爆弾とその後の核実験により、大量の放射線物質が全世界にばらまかれた。そのとき生命体を被曝させたのが、Sr(ストロンチウム)90です。その次がCs(セシウム)137です。

 ストロンチウム90はカルシュウムと同じ挙動をとります。そのために人体はストロンチウムをカルシウムと勘違いして、骨に蓄積してしまいます。骨のがんの原因になるほか、骨は血液を作るところですから白血病を引き起こします。広島・長崎では被曝の結果、白血病患者が増えて、大きなニュースで報じられたことを記憶している。

プルトニュウム239は「人類が遭遇した最凶の毒物」と言われる。肺からの吸入が危険視されている。半減期は2万4千年で、1/1000になるまで24万年で、この管理ができるかという問題があります。

そして、その放射線が人間のDNAをも破壊するのである。


8、原子力発電の原理

原子力発電は、世界中で約50年前から行われている発電方式です。その特徴は、発電段階においてCO2を全く排出せずに大量の電力を安定して供給することができること、また、使い終わった燃料を再処理することにより再利用できることから、エネルギー資源小国・日本における発電方法として重要視されています。反面、放射線の慎重な管理などが必要です。

原子力発電の基本原理(構造)

(出典小出裕章著『原発のウソ』扶養者新書p14)

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原子力発電は、火力発電のボイラーを原子炉に置き換えたものです。

火力発電は化石燃料を燃やして熱エネルギーを得て、これを使って水を沸かし、蒸気の力で蒸気タービンを回転させて電気を起こします。

これに対して原子力発電はウランを核分裂させて熱エネルギーを得て、水を沸かし蒸気の力で蒸気タービンを回転させて電気を起こします。

今時、原始的な発電方法と吾輩は思う(呵々)。

タービンを回すために必要な熱を、核は簡単に少量で生み出してくれます。石炭などを燃やす場合に比べると驚きの効率の良さです。核の成分であるウラン235はたった1グラムで石炭のなんと3トン分に相当するエネルギーを生み出すことが可能なのです。

石炭や石油は限りある資源でありながら、どんどん人類が消費しています。ウランも決して無限ではありませんが、あまりにも効率的なため、この先まだ300年ほどは大丈夫だろうと言われているのです。

結局のところ、原子力発電は熱エネルギーしか使われていないのです。核のゴミとして捨てられている核分裂生成物やアルファー線、ガンマー線、ベータ線、中性子線などの高エネルギーを危険視して「核のごみ」として捨てている。これが、無駄である。これが、吾輩の提言の趣旨えある。


9、原子力発電事故とリスク

1986年4月26日に

1984年に稼働した最新鋭機で事故発生。

それは、旧ソビエト連邦のウクライナにあったチェルノブイリ原子力発電所(4号炉)である。原子炉の出力を落として止まる寸前で、「核暴走事故」が発生。4号炉の爆発により、大量の「死の灰」が噴出した。


1999年9月30日

JCO臨界事故

茨木健東海村の核燃料加工工場で臨界(核分裂の連鎖反応が持続的に起こること)事故発生。工場内にあった容器の中で予期せずに突然核分裂の連鎖反応がはじまった。核分裂で中性子線、ガンマー線などの放射線が大量に放出される。


2011年3月11日

マグネチュード9.0の巨大地震が発生し、東京電力福島第一原子力発電所を津波が襲った。電源喪失による冷却できず、水蒸気爆発により、死の灰が風に乗り日本各地にばらまかれた。自衛隊の決死の消化活動にも関わらず、一号機の原子炉圧力容器に水がほとんどたまっておらず、高熱で燃料棒の大半が溶融していることを5月12日に「メルトダウン」とはじめて認めた。詳細は参考文献小出裕章著『原発のウソ』をお読み下さい。

事故防止のリスク軽減することも、提言に盛り込まれている。


10、トリチウムの処理

2015年04月23日

 宮武秀男 環境安全保健機構放射性同位元素総合センター技術職員、京都大学発創薬ベンチャーである株式会社フォワード サイエンス ラボラトリの古屋仲秀樹 代表取締役(元WPI(世界トップレベル国際研究拠点)准教授)らの研究グループは、水素化した酸化マンガンが、水からトリチウムを室温下で効率よく分離する吸収剤として機能することを発見しました。

 本研究成果は、2015年4月23日付で英国科学誌「Separation Science and Technology」に掲載されました。

2018年6月28日夕刊読売3版p10

近畿大工学部の井原竜彦教授(無機材料)とアルミ箔製造会社「東洋アルミ二ウム」(本社・大阪市)などの共同研究チームはアルミ粉末を材料に直径5ナノ・メートル(10億分の1)以下の小さな穴(微細孔)が無数にあるフィルターを開発。

2018年08月30日

近畿大学などの研究チームが、放射性物質であるトリチウム(三重水素)を含む水(トリチウム水)を分離する技術を開発したという(毎日新聞)。

一般的な水は水素原子2つと酸素原子1つで構成されているが、トリチウム水はこの水素原子の1つもしくは2つが水素の同位体であるトリチウムに代わった構造となっている。トリチウムは一般的な水素(軽水素)と比べて質量が重い一方、化学的性質は軽水素とほぼ変わらないため、化学的な手法での分離は難しい。

今回開発されたものは、微細な穴を持つアルミ製フィルターを使用する。トリチウム水を含む水を気化させてこのフィルターに通すと、トリチウム水だけがフィルターに残るという。

トリチウムは核融合の材料となるもので、次世代の核融合には欠かせない資源である。また水爆の材料にもなり得る。


11、核分裂生成物と政治

核分裂生成物を「核のゴミ」として処理方法を問題視する反対勢力の主張により、日本学術会議の活動レベルは日本の科学のレベルを映す。 福島原発事故の後で、非科学的な放射能の危険性を強調したデマが広がり社会が混乱した。 日本学術会議は、政府の科学的知見を取りまとめる立場なのに、そのパニックを沈めるためにほとんど役立たなかった。

英国と米国には、政府科学顧問制度がある。両国ではその顧問が、「福島事故で健康被害の影響はない」と早期に判断・公表し、国民や日本在留の国民に呼びかけ、混乱を収束した。 日本で学術会議主導によって、放射能パニックを収束するための意味のある行動が行われた記憶はない。今現在に於いても、日本学術会議に入れなかった6名が「学問の自由の侵害だ」と騒いでいるが、一般国民からすると言語道断、成果なく国益に寄与せず、税金無駄遣いであり、「学問の自由の侵害」ではないと吾輩も思う。税金を既得権化してはいけない。英米に比べて、組織の力が見劣りする。

まさに夢のエネルギーではないかと思えそうなところですが、厄介な点があります。それが核燃料に含まれるウランやプルトニウムが放つ放射性物質です。放射性物質は、人間に多大な被害を与え、環境も汚染してしまうのです。石炭などは燃やしてしまえばそのまま炭になって終わりですが、核燃料を燃やしたことによって出る使用済み核燃料はそういうわけには行きません。よって、きちんと漏れないように処理しなければならないのです。しかし、その処理方法にも課題があるわけです。

核のゴミの処理問題

使用済み核燃料となったいわゆる核のゴミが、万が一の手違いによって外の世界に漏れてしまった場合、その被害は想像を絶するようなものになります。


私達にとって身近な事故で言えば、2011年の東日本大震災の福島第一原発事故が挙げられるでしょう。地震と津波によって使用済み核燃料を冷やすことができなくなった施設内で、メルトダウンが起きました。外に漏れた放射性物質のために、原発周辺の地域は完全に汚染されてしまい、2020年現在でも立入禁止となっています。

また、もっと遡ればロシアのチェルノブイリ原発事故も挙げられるでしょう。30年以上経過した今も、当然住民はその地に戻れませんし、未だにガイガーカウンターには放射能の反応があるわけです。

核のゴミの再利用計画の頓挫

日本ではそれらの核のゴミを再利用しようと、ずっと動いてきました。もし実現すれば、まさにエネルギーが無限に生み出せる夢のプロジェクトです。

しかし、核のゴミ(使用済み燃料から取り出したプルトニウム)を再利用する高速増殖炉「もんじゅ」は、多大な資金を投資したにも関わらず、安全性の不備が訴えられ、廃炉が決まった。

核のゴミの再利用以外の手段として、今最も有力なのは地中深くに埋めることとされている。事実、他国ではそうしている国もある。ただし、日本ではまだ方針が定まっておらず、施設の中のプールでずっと冷やし続けながら、どう処理をしようかと迷っている段階です。

高レベル放射性廃棄物に関しては、フィンランドやスウェーデンなど諸外国では原発で発生した使用済み燃料の「直接処分」が主流だが、日本では、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムとウランを取り出した後に出た廃液をガラスで固め、高さ1.3メートル、直径40センチの円筒にしたもの(ガラス固化体)を指す。しかしながら、安全なレベルまで放射線量が下がるまで数万から10万年ほどかかる。


12、核分裂と地震(仮説)

浅学非才の吾輩の仮説です。

田村地震仮説1・・・「オクロの天然原子炉*」の実例が示すように日本の自然界のウラン鉱床で,核分裂が起こっている。天然原子炉の熱と水の作用で水蒸気爆発して,地震に繋がる(福島原発の水蒸気爆発事故と言われているものと同様の原理作用)。

*1972年,アフリカ・ガボン共和国のオクロ鉱床から産出されたウラン235同位体比から,かつて「天然の原子炉」という結論が導かれた。

田村地震仮説2・・・核分裂のとき発生した中性子は半減期約15分で崩壊(β崩壊)して陽子と電子になる。水素原子が発生し,それが水素分子になる。そして水素が酸素と反応して爆発が起きる。「福島原発水素事故はこのようにして起きたのではないか」と9年前に仮説を立てました。まだ仮説です(呵々)。

13、結論:放射線(α・β・γ)発電の提言

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