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年に1,2回、間違える。

喫茶店を出て、止めていた自転車に乗って晩ご飯を食べに行こうとした時、すぐそばのコンビニのコピー機前に、阿佐ヶ谷姉妹のエリコさんが立っていた。「あ、エリコさんだ」と思い、もう一度自転車を止めて近づくと、エリコさんはコピー機のタッチパネルをのぞき込んで首をひねっていた。事務所でよく見る光景である。エリコさんはよくコピー機の操作に手間取り、首をひねっているイメージがある。自分に分かることがあれば、と思って近づいてみたら、これが全然エリコさんではなくて、エリコさんによく似たご婦人だった。

まただ。またやってしまった。自分の中で反省する。これは毎年1,2回訪れるミスである。もう随分とご一緒させてもらっているのに、まだ他人様と本物を間違えて近づいてしまう。でも、言い訳させてほしい。エリコさんに似ている方はけっこういらっしゃる気がしてますが、「そうじゃない」と判断するフィルターはちゃんと持っているつもりである。しかし、それでも時々、そのレベルをはるかに超える、まさにエリコさんだと言えるご婦人と出会うのだ。ご婦人はギョッとした顔でこちらを見ている。せめて向こうが気付かないくらいの距離で早めに撤退できていれば問題ないのだが、いかんせんこちらは「あ、エリコさんだ!」と思ってテンションが上がっているので、気分はアッパーになっており、距離感も他人のゾーンを大きく越えて踏み込んでしまっている。だいぶミスである。こんなことなら先に近くにミホさんがいるかどうかを調べるべきだった。エリコさんのそばには必ずミホさんがいる。それが阿佐ヶ谷さんである。お二人でいるかどうかを確認するべきだといつも後悔するのに、いざクリソツなご婦人に出会うと「わ!お姉さんだ!」と周りが見えなくなってしまう。何度ミスれば気が済むのか。ぎこちなくその場を離れてから、ふと怖いことに気が付いた。

そういえば、毎回ミホさんではなくエリコさんと出会うな…以前もこの近くの道端で見間違った気がする…あれ、っていうかいっつも近所じゃなかったっけ?……は?もしかして、、コレおんなじ人なんじゃないか???

もしそうだとしたら話はだいぶ変わってくる。向こうからしたら、不規則なタイミングで目の前にニヤニヤした坊主が現れて、変な間だけを作って撤退していることになる。これは単純に怖い現象ではないだろうか。近所に住む人間として不審極まりないのでは…ただのミスとか、ミホさんを探すべきだったとかじゃなくて、普通に迷惑かけてるんじゃないの??

もしそうだとしたら、今度お会いした時は是非埋め合わせをしたい。コンビニだったら何でも奢りたいし、重い荷物を持っていたら代わりに持って家まで運んであげたい。でも、そんなことを提案したらいよいよ怖いだろう。不審確定の通報モノである。知らないうちに取り返しのつかないミスを重ねて生きてきたのかもしれない。うちの近所にだけエリコさん似のご婦人が集まっているとは考えにくい。そんな町、不思議過ぎる。みんなショートボブでメガネをかけた町。それならミホさんにも同数いてほしいし、なぜそこに裸眼坊主がいるのかもよく分からない。どんどん頭の中が阿佐ヶ谷さんで埋め尽くされていく…。エリコさんの分量が少し多い。じゃあミホさんのことも考えよう。ミホさんは「靴下の色使いでオシャレを楽しんでいる」とエッセイに書いていた。差し色を演出するテクニック。あとミホさんは牛乳パックを使ってゼリーを上手に作ることができる。まるまる1リットル固めて、牛乳パックをハサミで切り、お皿にドゥルンと乗っけるミホさんの姿を頭に浮かべる。…ものすごくホッコリする。これは皆様にも勧めたい。あのミホさんの姿は激烈癒されるし、1リットル全部ゼリーになっているのも壮観だし、ドゥルンと飛び出すゼリーの動きは面白い。ありがとうミホさん。次に町でエリコさんを見かけたら、まず距離をとり、近くにミホさんがいるかどうかを確認、ミホさんかどうか確信が持てない場合は足元の差し色を確認、その後、ゆっくりと偶然を装って近づき、出会うことにしたいと思います。


#ラブレターズ #お笑い

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