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「今年の電子出版傾向と『たびのたね』」質疑応答メモ

JTBパブリッシングが旅行ガイドの電子書籍販売サイト「たびのたね」を10月1日にオープンしました。まだ北海道と沖縄の二地域の情報を取り扱うだけですが、かなり独特な取り組みがされています。

12月5日(金)に日本電子出版協会(JEPA)が開催した「今年の電子出版傾向と『たびのたね』」セミナーを聞いてきました。すでに資料が公開されており、また「JTBパブリッシングの電子書籍サービス『たびのたね』の試み ── JEPAセミナーレポート : 見て歩く者」にレポートが公開されています。このセミナーですが、質疑応答も聞き甲斐がありましたので、メモした範囲で内容をご紹介します。

質問:オンデマンド印刷との提携などは考えていますか?

これは内部でも検討のあったところです。既存の電子書籍ももちろんですが、今回われわれは地域の無料の雑誌などにも取り組んでいまして、その中には紙になっていない本も入っています。例えばデジタルだけで地方で出版している漫画出版社さんなどが版元に加わっていただけているので、ぜひオンデマンド印刷なども今後視野に入れていきたいと思っています。

質問:ソーシャルDRMが採用されましたが、社内での議論はスムーズに進みましたか?また出版社さんの温度感はどうでしたか?

今回はデジタルを紙より便利にしたい、ユーザーの立場に立って作ろうという思いがありましたので、社内での議論もありましたが、そこは私たちは乗り越えました。また出版社さんにご理解いただくというところはまさに大切で、他の出版社さんにきちんと説明するというところはかなり丁寧にやりました。

ただうまく行ったなと思うのは、僕らもやはり版元だったというところですね。僕らがそのコンテンツの大切さであるとか、権利者の方の意義であるとか、それらへの思いも含めて、自分たちの大切なコンテンツを自分たちも提供しているサービスであるというところで、版元さんにはとても理解を得られました。今ご質問いただいたように、「御社はそれを乗り越えているんですよね」という問合せは多くいただきましたので、これは自分たちがコンテンツ提供者であるというところがきわめて良かったんじゃないかなと思っております。

質問:個人の方が地元の情報を発信したいと思った場合は、やはり出版社に掛け合って出版されないと、たびのたねにも並ばないものでしょうか。

最後に今後やりたいこととして「C2C」という話もしましたが、実はそうしたコンテンツも強く見据えています。ベーシックな情報は出版社さんが作られたもので、それに付随する情報は実は地域の方が作ったものといったことですね。C2Cとしては、すでにあるものをユーザーがまとめて売るということだけではなくて、そこにいらっしゃる方々が作ったものも考えていて、それを市販されているものとジョイントさせるということも、実は今後まさにやりたいなと考えているところです。ちょっと現段階では実装できていないですけれど。

さっきご紹介したように出版社じゃない、例えば泡盛の会社さんみたいなところもあって、実は今回(出版社)コードを持っていないような会社さんも今回地方からかなり参画していただいています。ぜひそこはフラットにお付き合いしていきたいと思っています。

質問:ソーシャルDRMで開始されていますが、海賊版が出回っていないかなどの調査はしていますか?

まず海賊版というのは紙の頃からあって、まずいかなることをやっても作る人は作ってしまうと思っています。あともう一つ、ガイドブックには著者物というか、いわゆる作家さんの本が少ないのですね。もちろん写真家さんですとかそうした権利者さんとのやり取りはあるんですけれど、基本的には社内の意識合せで、著者さんとのやり取りがなかった点は、ソーシャルDRM採用に比較的スムーズに入れたポイントだったかなと思っています。回答になっていないかもしれないですが。

質問:著者さんに書いていただくような本が出てきた場合は、そういう声も出てくるかもしれない?

そうですね。すごく丁寧にやっていく必要があると思っています。実はすでに一部、北海道の出版社さんで著者物が入っていますし、先ほどの漫画家さんというのもあります。そこはこちらから各出版社さん経由で、今回の仕組みについてはかなり詳しく丁寧にご説明して、リスクもあるんだというところを含めてご理解いただいた上で、ご参加いただいています。

質問:版元さんには料率で戻しているのですか?

はい。これは隠していることではないので言ってしまいますと、まず当社のフォーマットで(コンテンツを)いただいた場合には、出版社さんに対しては60%の戻しをしております。またコストをかけないで参画していただきたいという思いがあって、版元さんで既にお作りの形式でご提供いただいてもよい形にしています。この場合、ご提供いただくファイルの形式によって料率を変えるということをやっておりますが、どんなデータでご提供いただいても、最低50%をお戻しするというモデルになっております。

質問:指定のフォーマットというのは?

EPUBです。ただファイル名などを、当社の指定に合わせていただいて、作っていただくという形になっております。

質問:対応デバイスについて質問させてください。まとめ作業の対応デバイス、例えばタブレット対応はどうでしょうか?また実際の利用ユーザーのデバイス比率は?

現段階では、PCとそのほかでだいたい半分半分になっています。まとめ作業についても、例えばスマホでもかなりやりやすいように工夫はしているつもりです。アクセス自体は、やはりスマホやタブレットが多いのですが、購入となると10%ぐらいPCのほうが上がってきます。ですから、まとめというより、購入をする時点で以外にPCにかなり動くんだなというのが現段階で分かってきています。

今回、デザインもレスポンシブでやっておりますので、スマホ、タブレット、PCのすべてから利用できるようにしてます。ほぼ僕らの想定しているとおりの、半分半分くらいかなというところです。

質問:他の電子書店さんのように、このサービスへの参画を今後あらゆる版元に広げていく方向でしょうか?

今後の版元さんへの取り組みに関しては、旅行者に魅力あるコンテンツをお持ちの出版社さんであれば、どんどん増やして行きたいと思っています。ただジャンルを増やすということは、今は考えていません。あくまでも旅先で、あるいは旅行など地域に行く上で重要なコンテンツというところに限ります。僕らも実は電子書店様には大変お世話になっておりますし、そことはまた違ったところなのかなと思っています。

質問:海外旅行のガイドブックについてはいかがでしょうか。

海外に関してもわれわれでも議論がありました。まず海外のガイドブックも当社は出しておりますので、そういったこともあるだろうと。もう一つ、インバウンド(海外から日本への旅行向け)に関しては、もう少し早く、近いところからやっていこうかと。同じ出版社さんが出している本でも、海外から日本にこられるお客様にとって、電子書籍というのはその可能性を大きく広げるものだと思ってます。グローバルな展開としては、海外のガイドブックというアプローチと、インバウンドと、二つあるのかなと思っています。

以上です。内容は私のメモによりますので、不正確な部分があるかもしれません。また正確であっても、こうした原稿のない質疑応答は、公式見解というより非公式な、中の人の思いの出てくる部分と考えます。以上をご承知いただいた上で、冒頭で触れた資料やレポートとあわせてお読みいただければと思います。

さて、ソーシャルDRMで思いつく電子書店としては、総合書店であるBOOKPUBや、版元直販の達人出版会技評デジタルパブリッシング明治図書などがあります。たびのたねは、これらに対して旅をテーマとした「電子書籍のセレクトショップ」と言えそうです。

ソーシャルDRMの電子書店は、終了が購入者に迷惑をかけることもなく、事業をいつ終わりにしてもいいという強みがあります。こうした独自色のある総合電子書店を展開するには「終われる強み」が、言い換えれば「チャレンジできる強み」として重要になるのではないでしょうか。

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写真はShimelle Laineによる「Scrap your Day」。ライセンスはCreative Commonsのby。もし「Creative Commonsって何?」と思ってもらえたなら、こちらのノートをお勧めします。

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クラウドノオト ―― クラウドコンピューティングの話、ときどきソーシャルメディアとnoteの話、ところにより四方山話。

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