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「新型コロナ『エアロゾル』で3時間」でも対策はそのままで。

NHK News Webで今朝、次のように報じられていました。ただし先回りして書いておくと、これは空気感染云々という話ではないという点に気を付けたいと思いました。

NIH=アメリカ国立衛生研究所などの研究グループは、新型コロナウイルスについて、霧のように空気中に漂ういわゆる「エアロゾル」という状態でも、3時間以上生存できるとする論文をアメリカの医学雑誌に発表しました。

重要かなと思ったのはこちらの部分で、こまめに手洗い、こまめにうがい、こまめに掃除、咳エチケットとしてマスクというのが、あらためて守るべきことという気がします。新しく特別な対策が必要という気はしなくて、もうちょっと意識してやろうかな、という感じ。

銅の表面では4時間、ボール紙の表面では24時間たつと生存しているウイルスは検出できませんでしたが、ステンレスでは48時間、プラスチックの表面では72時間にわたり、ウイルスが大幅に減少しながらも生存することが確認されたということです。

...というのが結論なので、以下はすべて蛇足なのですが、素人考えなりに考えたり参考に確認したことなど。

空気感染云々という話ではない

この元の論文を探してみたのだけど、多分The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEに掲載されている「Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1」だと思う。掲載日は3月17日となっているけど、この話題は14日にも聞かれた。例えば以下の記事がまだ残っています。

JBpressが同種の記事を発表していたらしい。しかしこれについては、「『エアロゾル伝播』と表現すべきところで『空気感染』という言葉を使ったことで、掲載サイトと筆者が謝罪、記事は取り下げられた

日本でも、アメリカの研究機関などが「新型コロナウイルスが空気感染する」と、これまでの認識とは異なる発表をしたとの記事(『JBpress』が14日に掲載した「ついに証明された、新型コロナウイルスは空気感染する」)が一時ネット上で拡散した。しかし、論文が掲載されたのは「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」誌ではなく「メド・アーカイブ」というサイトに掲載された予稿だったこと、「エアロゾル伝播」と表現すべきところで「空気感染」という言葉を使ったことで、掲載サイトと筆者が謝罪、記事は取り下げられた。

内容も一致するし、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン掲載に向けた予稿だったということであれば、その掲載稿が上に書いた論文なのだろう。だから、この論文を読んで「空気感染の危険が」と杞憂しないようにということは、もうアドバイスされていたことらしい。それでも、今日もこう始まる記事が流れていたりはするけど。

新型コロナウイルスが空気中で3時間も生存することができることが確認され、空気感染の可能性が提起されている。

まずは手洗い、うがい、掃除

むしろ怖いかもと思ったのはエアロゾルで3時間生存よりもステンレス表面で48時間、プラスチック表面で72時間生存の方。再度NHK Web Newsの記事から引用すると以下の部分。出だしこそあれっという記事だったけど、中央日報の記事にはより詳しく掲載されているので、詳細が気になる場合(論文直接でなければ)そちらもご覧ください。

銅の表面では4時間、ボール紙の表面では24時間たつと生存しているウイルスは検出できませんでしたが、ステンレスでは48時間、プラスチックの表面では72時間にわたり、ウイルスが大幅に減少しながらも生存することが確認されたということです。

新型コロナウィルスの感染経路として注意が呼びかけられているのは、接触感染。どこかを触ったときに手についた菌が、手で顔(特に目、鼻、口)を触ったときにそこから入り込む、という感染経路です。そしてものの表面で48時間や72時間生存するということは、前日に感染者が咳やくしゃみで飛沫を飛ばしていたら、それがプラスチックやステンレスの表面では翌日もまだ生存しているかもしれない、ということ。思っていたより、手に菌が付くシーンって多いのかもしれません。

一方で、空気感染するとかこれまでの理解をひっくり返すような特別なことはないので、いままでの対策をもう少し意識すればいいんだなと思います。

手洗い。手に菌がついてても目、口、鼻に運ばないよう、帰宅時と調理とか飲食とか洗顔の前に手を洗う。うがい。口やのどに入った菌を、そこに留まらせたり肺に進ませたりしないように、手洗いと合わせてうがいする。「こまめに水分を補給し、ウイルスがのどに留まらないようにしましょう」というアドバイスもありました。掃除。「水拭きでもウイルス量を減らすことは可能なので、丁寧にやればリスクを下げることになる」そうです。

菌を体に入れないというのは不可能ごとで、よく言われるように体の免疫で抑えられる程度に、侵入量を減らしてやればいいのだと思います。思っていたより侵入機会が多いなら、対策をちょっと今までよりこまめにやるだけのことだと思います。

エアロゾル伝播と咳エチケットのマスク

そしてエアロゾル伝播の話。これは咳、くしゃみで出る飛沫の小さなものが、地面に落下するまでに僕たちがイメージする「1秒以内~数秒」ではなく、実際には数時間とかかかるという話のようです。風で広がっていくのではなく、ゆっくりとした落下中に僕たちがキャッチして、その後キャッチした手を顔に持っていくかもしれないというイメージ。

論文では、「エアロゾル(5マイクロメートル以下)」としていますが、これってどんな大きさでしょう。この図を紹介しましょう。日本衛生材料工業連合会/全国マスク工業会の「不織布マスクの性能と使用時の注意」からの図です。

粒子の大きさの比較

エアロゾルの5マイクロメートル以下というのは、よく「飛沫」と呼んでるものと同じサイズ感みたいですね。だから飛沫感染対策として「咳エチケットとしてマスク」と言われているのだから、エアロゾル対策という言い方になっても同じじゃないかなと。咳が出そうなときと、逆に咳を浴びるかもしれない人込みの中に行くとき。そして物の表面を触ってだけじゃなく、エアロゾルを持ち帰っているかもしれない手は、こまめに手洗い。エアロゾルで3時間と聞いて、やろうと思ったのはそんなところかなあ。

まとめ

一部でちょっとショッキングな情報みたいに取り上げられている記事ですが、読んでみるとそんな特別なことはないんじゃないかな、という気がしました。思ってたより物の表面で長生きしちゃうみたいなので、いつもの手洗い、うがい、掃除と、咳エチケットとしてのマスクを思ってたより意識した方がいいかな、くらいで。

特別騒ぐ必要も、特別な対策の必要も、特別に何かを買い込む必要も感じない。あと日刊ゲンダイの記事に「加湿器を使い湿度50%でカ氏72度(セ氏22.22度)にすれば、ウイルスの活動が収まる」とあったのですが、これも続報や論文にはないような。そういうわけで、特別に加湿とか加湿器購入の必要も感じない。

WHOはエピデミック(疫病の拡散)だけでなく「根拠のない情報が大量に拡散するインフォデミックが起きている」と評しているそうです。もうみんな、新型コロナウイルス情報に振り回されるのにはつかれていると思いますが、僕もそうです。そしてこれも、論文の中身は重要だけど一部記事が煽っているような情報は、振り回される必要がないものだったという感じです。

淡々とうがいとか手洗いとか続けていきたいと思います。

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