見出し画像

なぜBitcasaなのか、あるいはBitcasaとGmailが変えたこと

私が先日まで使っていたオンラインストレージサービスは、Bitcasaの容量無制限(Infinite)プランでしたが、先日、Bitcasaから11月15日に無制限プランを廃止するので、それまでにアクションをとることというメールが来ました。継続か停止かを決めるため、少し他のオンラインストレージを比較しながら、Bitcasaだけの価値ということを考えていました。

Bitcasaを使っていた理由

Bitcasaは2011年に「月額10$で容量無制限」を打ち出して名乗りを上げ、2012年6月にベータサービス、2013年2月には正式サービスを公開しました。同年11月に無制限プランを年額99$から999$に値上げしましたが、それ以前からの無制限プラン利用者には引き続き年額99$で提供されていました。私は2012年2月にベータ版ユーザーになり、2013年2月のベータ版終了と同時に容量無制限プランを契約しました。

Dropboxすら(いまだに)最小限にしか使っていない私が、Bitcasaにこれだけ入れ込んだのは、やはり「容量無制限」だからです。これが意味するのは、容量を節約する必要はない、つまりファイルを捨てる必要はなく、捨てたファイルを後悔する心配はなく、あるファイルを残すか捨てるか考えることから開放されるということです。

BitcasaはオンラインストレージのGmailだった

この考え方、どこかで見覚えはありませんか?メールサーバの容量を、数十MBが普通だった時代に「1GB」を打ち出し、「もうメールを削除する必要はありません」と呼びかけたGmailです。

Gmailでは、またメールをローカルに持つことはなくなり、ローカルのディスク容量節約のためにメールを消すこともなくなりました。さらに好きな場所から好きな端末ですべてのメールにアクセスでき、メールを送ったり既読にしたりといった作業をして、別の端末で作業を再開できるようにしてくれました。作業場所を移動し、作業端末を切替え、メールソフトを乗換えるといったことが自由になりました。

僕がBitcasaに求めたのもこの3つです。ファイル削除からの開放、ローカルディスクからの開放、特定の場所や端末やソフトからの開放。Bitcasaは、PCでは容量無制限の外付けディスクとして扱えます。ローカルにファイルを置くことなく、好きなソフトでファイルを扱えます。スマートフォン用のBitcasaアプリで、クラウド上のドキュメントや音楽を再生できます。もちろんブラウザや各アプリで、ファイルをダウンロードすることもできます。

大規模化するオンラインストレージ

Bitcasa自身は無制限プランを廃止し、月額10$で容量1TBとなりました。Bitcasaによれば、99.5%の人が1TBという容量は必要としなかったそうです。一方で他サービスも、大容量のプランを提供するようになりました。「ファイル削除からの開放」に必要な容量を1TBとすれば、現在、各サービスでは以下の費用でこの恩恵を受けられます。

・Bitcasa/プレミアムプラン:月額1,200円(料金表
・Box/ビジネスプラン - :月額1,800円/人 ※契約は最小3人(料金表
・Dropbox/Proプラン:月額1,200円(料金表
・Google Drive for Work:月額1,200円(説明
・Amazon Zocalo:月額5$~29$ ※実データ量による(料金表

Bitcasaがサービス開始した2012年6月、Dropboxの有料プランは50GB~132GBという容量でした。大容量は「Bitcasa以後の当たり前」になったと考えます。

Bitcasaを使い続ける理由、あるいはまだ残るアドバンテージ

価値として言えば、「ファイル削除からの開放」は他サービスでも提供できるようになりました。しかし現在、オンラインストレージを外付けディスクとして使う点は、まだBitcasaだけの機能です。これは突飛な機能ではなく、Gmailがもたらしたような残る二つの変化、「ローカルディスクからの開放」「特定の場所や端末やソフトからの開放」に欠かせない機能です。

Box.net、Amazon Zocalo、Google Driveらはオンラインでのドキュメント編集に力を入れています。Box.netはクラウド上の動画や音声のストリーミング再生を強みにした競合企業を買収しました。いずでもファイル利用をオンラインで完結させる方向で、「ローカルディスクからの開放」「特定の場所や端末やソフトからの開放」はBitcasaだけの動きではなく、Bitcasa以降のトレンドだと思います。

それでも、現時点では利用できるファイルが限られ、利用方法がブラウザベースアプリケーションか専用クライアントに限られ、窮屈さを押し付けるものにとどまっています。Bitcasaの無制限プランからはじき出された私は、それでもBitcasaを使い続けると決めました。現時点ではBitcasaだけが、Gmail感覚の私にとって自然な使い方をさせてくれるのです。

――――
写真はDRs Kulturarvsprojektによる「Film archive storage - DR-Byen」。ライセンスはCreative Commonsのby-sa。もし「Creative Commonsって何?」と思ってもらえたなら、こちらのノートをお勧めします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?