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Clubhouseは「声のnote」になるのか

ドロップインオーディオチャット「Clubhouse」はここ数日でテレビはもちろん新聞のそれも天声人語なんてところでまで取り上げられて、国内快進撃という感じです。このサービスは昨年3月にスタートし、5月に一度、始まったばかりのスタートアップの凄い資金調達額で国内記事を見かけたものの、その後話題を目にしませんでした。

2021年1月の大きな動き

この一月になって、Clubhouseには(僕たちから見れば)二つの大きな動きがありました。一つは日本のAppStoreでも公開されたことで、そこから半月も経たずに、ソーシャルネットワークカテゴリの国内ナンバーワンになりました。

もう一つは、新たな資金調達を行なったこと。彼らはまだ3件しか投稿がない公式ブログの最新記事(1月24日付)でこのことを報告しています。

私たちの焦点は現在、クラブハウスを全世界に開放することにあります。 2021年のその目標を念頭に置いて、シリーズAも主導したa16zのAndrew Chenが率いる、新しい資金調達ラウンドを確保しました。

このブログ記事はそう長くないものの、2010年に共同創業者の二人が知り合い、いくつかの事業を経て2020年3月にClubhouseをスタート、そして現在の資金調達に至るまでの物語と、これから調達する資金で何をしようとしているのかという希望が語られています。昨年5月の記事では5,000人程度と目されていたClubhouseコミュニティは、現在こう語られています。

他の(※彼らがこれまでにしてきた)試みとは異なり、Clubhouseは人々の心に響くようで、過去10か月で、少数のベータテスターから多様で成長しているコミュニティのネットワークへと急速に加速しました。先週、ミュージシャン、科学者、クリエイター、アスリート、コメディアン、両親、起業家、株式トレーダー、非営利団体のリーダー、作家、アーティスト、不動産業者、スポーツファンなど、世界中の200万人がクラブハウスにやって来ました。

次にClubhouseがしようとしていること

次に彼らがしようとしていることは、このように語られています。

より素晴らしい人々を歓迎する。初期の頃から、私たちは皆のためのClubhouseを作りたいと思っていました。このことを念頭に置いて、Androidアプリの開発を間もなく開始し、アクセシビリティとローカリゼーション機能を追加して、世界中の人々が自分たちのネイティブな感覚でClubhouseを体験できるようにすることに興奮しています。
サーバーを稼働させ続ける。私たちは過去数か月で予想よりも速く成長し、サーバーが苦労しているときに多くの人に赤いエラーメッセージが表示されるようになりました。新しい資金調達ラウンドの大部分は、テクノロジーとインフラストラクチャに費やされ、すべての人のClubhouseエクスペリエンスを拡大します。これにより、参加する人数に関係なく、常に高速でパフォーマンスが向上します。
迅速なサポートの確保。ユーザーの安全は常に私たちの最優先事項であり、より多くの人々を歓迎するので、それは1つのままです。これは、成長に合わせてTrust&Safety and Supportチームを拡大し、悪用を検出して防止するための高度なツールへの投資を継続し、モデレーターが利用できる機能とトレーニングリソースを増やすことを意味します。また、サポートチームを積極的に拡大し、すべてのクラブが当日承認を受けることができるようにします。 :)
ランキングと発見の改善。私たちが成長するにつれて、Clubhouseで行われる会話の数は急増しました。アプリを開くたびに、適切な会話を見つけるのを支援するのが私たちの仕事です。この新しい資金調達ラウンドでは、発見に多額の投資を行い、あなたの興味に完全に合わせた人々、クラブ、部屋を紹介し、これまで探していなかった新しい部屋を発見できるようにします。
クリエイターへの投資。クリエイターはClubhouseの生命線であり、他の人との会話を主催するすべての素晴らしい人々が彼らの貢献に対して認められるようにしたいと考えています。今後数か月の間に、チップ、チケット、サブスクリプションなどの機能を通じて、クリエイターが直接支払いを受けることができるようにする最初のテストを開始する予定です。また、新しい資金調達ラウンドの一部を使用して、新しいClubhouseクリエイターをサポートするクリエイター助成プログラムを展開します。

先頭からいきなり朗報ですね。僕は多くのAndroidユーザーがClubhouseを使えないのを残念がる声を見てきたし、英語に戸惑う知人も見ているので、Android版と各国語化がトッププライオリティに入ってるのは素晴らしいことに思えます。よくサービスが落ちているという声も聞くので、2番目も大切な点です。

Clubhouseのマネタイズを想像する

でも一番想像を刺激されるのは、最後の点です。いま、Clubhouseは投資されたお金を使っているだけで、何かを稼ぎ出しているようには見えません。今回の資金調達はシリーズBと位置付けられており、顧客増が要である(そして実際急拡大してみせた)シリーズAから、収益化が問われる時期に入っていくということです。そこにどのようなアイデアがあるのでしょう。この中から見つけるとしたら、それはやはりクリエイター支援の部分かなと思ったのです。

言うまでもなく、ClubhouseをClubhouseたらしめているのは画像もテキストも排した音声チャットとしてのシンプルさと、音声品質でしょう。この美しい簡潔さに、広告による収益化モデルは似合うでしょうか。広告収益はコンテンツマネタイズの最大の手段ですが、それはあらゆる意味で雑音になりそうです。そして広告以外にも、これまでクリエイターファーストを掲げるサービスが試してきたマネタイズ手段はあります。

有料プロモートもその一つです。かつてクリエイターのためのサービスを謳い、広告を収益の柱としないと宣言したのはTumblrでした。彼らがとったのが、職業クリエイターに有料のプロモートオプションを提供すると言う方法でした。結局これはうまくいかず、創業者の手を離れたTumblrは広告だらけになり、話題に登るサービスではなくなりました。最近出た記事は、MashableによるTumblrがいかにして緩やかに事実上の死へ向かっていったかを語るものでした(どう見てもTiktokへの言及はおまけです)。

Mediumも初期は同様に有料プロモートから広告モデルへの同じ道を歩いていたと記憶しています。その後彼らは、サブスクリプションモデルに舵を切りました。

もう一つの道を歩んでいるのは、noteだと思います。noteは運営元が当初よりCakesというサブスクリプションメディアを持っており、有望なnoteクリエイターをそちらへ引き上げるというMediumに近いモデルが見られました。しかしそれだけでなくnoteは、クリエイターが有料のnoteを販売する、マガジンの有料購読を募るといった活動を可能にし、note自体を一つの市場にもしていきました。ここでは販売や決済手数料が彼らの収益源になっています。

ささやかな違いに見えるかもしれませんが、これは根本的な違いであるようにも感じます。Mediumは自身をメディアと位置付けており、そのマネタイズスキームの中ではクリエイターは寄稿ライターのようです。noteは自身をプラットフォームと位置付けており、その中でクリエイターは一人一人がメディアオーナーでありビジネスオーナーです。

Clubhouseは「声のnote」に向かうのか

もう一度Clubhouseのブログ記事に戻りましょう。彼らは「チップ、チケット、サブスクリプションなどの機能を通じて、クリエイターが直接支払いを受けることができるようにする最初のテストを開始する」ことを表明しています。

この記事の中にマネタイズについての直接的な言及はないのですが、もし仄めかすものがあるとすればこのだろうと思いました。まずは、noteのように販売・決済プラットフォームとして、クリエイターが収益を上げる時にその一部をClubhouse自身も収益とさせてもらう形なのかなと。

いまのClubhouseのクリアなサービスとゆるっとした空気感には、このあり方はとてもマッチするように私には感じられるのです。

(追記)
Facebookで友人からこのTweetを教えてもらいました。「広告やユーザーデータの売却で収益化というのは一切考えてない」ようです。

上述の通り、シリーズBの資金調達ラウンドにあり、当然収益化についてのプレゼンテーションもしているだろうと思います。つまり広告やユーザーデータの売却を「考えたこともなかった」のではなく、収益化手段を「考え尽くした」上で、広告ではないという現時点での結論なんだろうなと思います。

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