心境

しばらく言葉を理解することができなくなってた。

読んでも呼んでみても、どんなに目の中に入れてもただ字面だけが視界に入ってきて、でも脳内に辿り着いたときにはサラサラな砂時計の砂のように跡形もなく消えてく。そんな感覚が続いたから、どんなに短い文章であったとしても読み解くことを辞めた。
そうこうしてたら、ついに書くことへの意識も無くなったしノートに文字を記すなんてこともしなくなった。

そのぶん、映像や絵の情報はすぐさま取り入れられるようになってた。人の声や動作の音、なにかにぶつかった大きな音、映像独特の効果音。それに合わせて緻密に動いていく動画、絵。直感的なものにずっと囚われ続けて、それが当たり前になってきたそんな時。

急に全てがつまらなく感じてきた。

それまでずっとずっと囚われ続けてきた音とインパクトのある色使いや動き。それらをいつも通り見た途端に頭に浮かんだのは、言葉が足りない。その一言だった。

その数日後から、とうに使われず引き出しに仕舞っていたノートとペンを取り出して再び向かい合ってみている。
これがなんとも言い難い楽しさを呼び起こしてくれて、少しずつ白いページも減らすことができている。
また低浮上になるかもしれないし、頻出するかもしれない。それでも、程よい距離を見つけながら、また文字の海でのんびり過ごしていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?