【映画感想】イノセンツ

映画「イノセンツ」(監督:エスキル・フォクト)

「子どもって残酷」を地でいく映画。
エスカレートしていくベンの異常性がただただ怖かったが、改めて序盤を振り返るとアナへの小さな体罰(とあえて言う)を重ねてきた主人公・イーダも一歩間違えばベンになり得たなと思わせるところがさらに怖い。
ベンの残酷さもアイシャの共感性も、その割合は違えど誰もが幼い頃から持ち合わせている。気がする。

言葉を発さないし涙も流さないアナに「何も感じてない」というイーダ。「ちゃんと感じてるよ」というアイシャに促されて発したアナの言葉「ものすごく痛い」を聞いて、初めてアナにも感情があることを思い知らされる。
これって、自分で上手く表現できない子どもの気持ちを、大人が見ないフリをするのと同じ。つまり、いつだって自閉症の姉の面倒を見なければならないイーダのストレスを、無いものとしてやり過ごす両親の構図とも重なる。

子どもの残酷さが描かれる一方で、もちろん子どもの弱さも描かれて。
絶対的な庇護者である(はずの)親が、ある日突然、自分を脅かす存在に豹変する。子どもにとってこれ以上の恐怖はない。
私が子どもの頃に見た夢で、自宅の居間にある母親の写真が話しかけてくる、それが直感的に偽物の母親だと分かるので薄気味悪くて怖くてたまらない…というのがあり、未だに映像として断片的に覚えているのだが、それを思い出した。

最後の方は祈るような思いでストーリーの行く末を見守っていた。ベンと対峙するため「お外へ行く」と言って扉へ向かい、引き返して母親の腰に縋りついたイーダは、夢の中で「偽物の母親」を消して本物の母親に抱きついた幼い頃の自分とそっくりだったから。


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