辻田昌弘|まちづくろい総研

20世紀はbuildの時代、21世紀はrepairの時代。 くたびれてきたまちのあちらこちらを少しずつ繕(つくろ)いながら使いこなしていく「まちづくろい」について考えるバーチャルシンクタンク。  by 辻田昌弘(技術士(都市及び地方計画))

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20世紀はbuildの時代、21世紀はrepairの時代。 くたびれてきたまちのあちらこちらを少しずつ繕(つくろ)いながら使いこなしていく「まちづくろい」について考えるバーチャルシンクタンク。  by 辻田昌弘(技術士(都市及び地方計画))

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    車道でも歩道でもない「第三の道」が必要だ

    電動キックボードの歩道走行 現在進められている道路交通法の改正では、最高時速20キロ以下の電動キックボードは、16歳以上が運転免許なし・ヘルメット着用義務なしで乗れるようになるそうだ。さらに、制限時速6㎞以下の「歩道通行車モード」に切り替えれば歩道も走行可能になるらしい。  ただし、本記事の表現はやや不正確で、歩道ならどこでも走行できるわけではなく、「自転車歩行者道(自歩道;以下のような標識のある歩道)」に限られるようだ。  要は、電動キックボードを自転車と同じような扱い

      • 「ウォーカブル」のその先へ

        ウォーカブルシティ このところ「歩きたくなるまち」「ウォーカブルシティ」に取り組む自治体が増えている。  記事にもあるように、ウォーカブルシティは欧米の主要都市では以前から取り組まれてきており、ニューヨークのタイムズスクエア、コペンハーゲンのストロイエ、パリのセーヌ川河岸道路などが、道路からクルマを閉め出して歩行者空間化した事例として有名である。  日本でも京都市四条通、大阪市御堂筋、松山市花園町通、神戶市明石町筋、姫路市大手前通など、車道幅員を削減し歩道を拡幅する取り組

        • 「不動産ババ抜き」の時代

          不動産から負動産へ 先週日曜日の日経新聞朝刊一面は「空き家問題」。2023年には住宅の総数が世帯数を1000万戸も上回るのだそうだ。それに伴って既に約849万戸ある空き家の問題が一段と拡大しかねないと警鐘を鳴らしている。 (引用)国を挙げて住宅リストラに取り組まなければ、余剰住宅は空き家のまま朽ちていく。  見出しおよび文中にある「住宅リストラ」というワードがざっくりしていてよくわからないのだけど、前後の文脈から考えるにおそらく、空き家の解体や解体後の土地の転用といったこ

          • サードプレイス化するオフィス?

            A long time ago, in JAPAN far, far away… 遠い遠い昔の話だけど、「サラリーマンは気楽な稼業」と歌われた時代があったんだ(1962年公開の映画『サラリーマンどんと節』の主題歌)。いまやすっかり世の嫌われ者になってしまった「昭和のおじさん」達が現役でバリバリ仕事してた頃の話なんだけどね。 (ちなみに私も「昭和のサラリーマン」の端くれなんだけど、いわゆる高度成長期にブイブイ言わせていた私の先輩達の「団塊の世代」(「真性」昭和のおじさん)とは一

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          • 地域創生のイノベーション戦略
            辻田昌弘|まちづくろい総研
          • 寄稿記事
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          • アフターコロナの都市
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            出社したくなるオフィスは自分たちで造ろう(繕う)

             メガネのJINSさんが最新鋭超高層オフィスビルの最上階から築23年の古ビルに本社オフィスを移転するそうな。床面積は半減、しかも移転先のビルは3年後に解体予定。この解体予定なことを逆手にとって、ビルを自分たちで好き放題に魔改造しちゃおうというこの破天荒な移転プロジェクトの様子がリアルタイムで読めて「ちむどんどんする」こと間違いなし!  コロナ禍でリモートワークが普及する中、社員にあえてオフィスに出社してもらうためには「理由」が必要だ、ということでオフィスを手がけるデベロッパ

            地域公共交通を繕う

             このところ地域公共交通を巡るニュースがいろいろと出てきているので、ちょっとまとめてみようと思う。(トップ写真は富山市のLRT(筆者撮影)) 1. ざわつくローカル鉄道界隈 7月25日、国土交通省の有識者会議が、地方ローカル鉄道のうち、1kmあたりの1日の平均利用者が平時に1000人を下回るような路線については、国と沿線自治体、事業者が改善策を協議する仕組みを設けることを骨子とする提言を公表した。  提言本文はこちら↓。  内容にざっと目を通してみたけど、要は国・沿線の

            「ないものはない」から始める地域活性化—地域創生のイノベーション戦略 ⑩

             本稿で地域活性化の成功事例として取り上げた神山町、上勝町、海士町、東川町、西粟倉村にはふたつの共通点がある。ひとつはいずれも人口10,000人に満たない小規模自治体だということであり、もうひとつはいわゆる「平成の大合併」の際に合併しない道を選んだ自治体だということだ。  合併を選択しなかった自治体は合併特例債などの手厚い財政支援措置を受けることができなかったため、政府に頼らず自力での生き残りを模索することを余儀なくされた。そのため、そうした自治体には高い危機意識が早くから

            原則その5−地域の寛容性を高める—地域創生のイノベーション戦略 ⑨

             地域活性化において重要なのは「よそ者・若者・馬鹿者」だとよく言われる。「よそ者」はその地域特有の価値観や因習、しきたりなどに囚われずに客観的に物事を見る視点の持ち主、「若者」とは行動力や情熱の持ち主、「馬鹿者」とは自由な発想、突拍子もないアイデアの持ち主である。しかし、地方では「よそ者」は受け入れられず、「若者」は仕事を任されず、「馬鹿者」ははなから相手にされない。つまり、リチャード・フロリダが言う「3つのT」のひとつ、寛容性(Tolerance;多様性の受容)が地域には不

            原則その4−偶然を手元に引き寄せる—地域創生のイノベーション戦略 ⑧

             地域活性化の成功事例では、「偶然」に起きた事象がその後の事業展開に大きな影響を与えるというケースがよく見受けられる。第3節で紹介した上勝町のように、出張先の飲食店で偶然耳にした女性達の会話から葉っぱビジネスが生まれたケースもそうだし、前節で紹介した神山町のように、神山町に縁もゆかりもないSansanの寺田社長がいくつかの偶然が重なって神山町を訪れたことがその後のサテライトオフィス集積の契機となったというケースもそうだ。  イノベーションが差異の創造であり非連続なものである

            原則その3−多様で柔軟なネットワークを活用する—地域創生のイノベーション戦略 ⑦

             イノベーションとは多様な情報や知識が「新結合」を起こすことから生まれるが、そうした「新結合」を促すためには、情報や知識を持つ人や企業が実際に出会うことが有効であるというのが通説である。それゆえ、多数の、そして多様な人材や企業が集積する都市部では、イノベーションの発生確率がそれだけ高まるとされる。ジェイン・ジェイコブズ(1977)はこれを「大都市は多様性の発生源であり、さまざまな新企業やすべての種類のアイデアを生み出す大量生産の可能な孵卵器である」と表現している(注1) 。

            原則その2−とりあえずアクションを起こす—地域創生のイノベーション戦略 ⑥

             私たちは通常、事業やプロジェクトを進める際に、まずは到達すべきゴール(目的)を設定し、目的を達成するためには何をすればよいかを考えて(計画)から、実行に着手する。しかし、サラス・サラスバシー氏は、優れた起業家の多くは、まずは手近なところで実行可能なことを考え、小さなアクションを起こすことから事業をスタートさせていくと言う。サラスバシーは、前者のような目的ありきのアプローチを「コーゼーション(causation;因果論)」、後者のような手段ありきのアプローチを「エフェクチュエ

            原則その1・まずは自分たちが楽しむ—地域創生のイノベーション戦略 ⑤

             地域活性化の先進地域と言われるエリアでその活動に取り組んでいる人たちには、「自分たちがやりたいと思ったことを、やりたいようにやっている」という人が多い。例えば、神山町の大南信也氏は「グリーンバレーでやってきとることは、僕にとっても仲間にとっても、仕事ではないわけですよね。だからある意味遊びですよ」と言い(注1) 、「これ、面白いからやってる。いろんな変化が神山に起こってること自体がモチベーションなわけですよ。(中略)やりながらわくわくできるかどうかっていうのが、僕のモチベー

            地域でイノベーションを起こすために必要なこと—地域創生のイノベーション戦略 ④

             さて、前節まで地域活性化には「他と違うことを自分たちで考える」ことが必要だと述べてきたが、これを「言うは易く行うは難し」の典型と思われた方も多いだろう。「天啓」とか「啓示」という言葉があるように、アイデアというものにはある日突然空から降ってくるようなイメージがあるからだ。しかし、イノベーションとは「新結合」、つまり既知の事象を新たに組み合わせることで生まれる。スティーブ・ジョブズ氏はこのプロセスを「点と点をつなぎ合わせる(connect the dots)」と表現している

            イノベーションの「0→1」と「1→10」—地域創生のイノベーション戦略 ③

             イノベーションとは「新結合の遂行」であるとシュンペーターは言ったが、「新結合」と「遂行」には異なる能力が求められる。イノベーションの源となるアイデア、つまり0から1を生み出す際には直感や閃きといった右脳的な力が必要になるが、生み出されたアイデアを具体的に製品やサービスに落とし込んで事業として成立・拡大させていく、いわば1から10のプロセスでは論理や分析といった左脳的な力が必要になる。ヘンリー・ミンツバーグ氏(2006)はこの異なる能力を「アート」と「サイエンス」と言い(注1

            イノベーションとしての地域活性化—地域創生のイノベーション戦略 ②

             地方創生の議論でよく耳にするのが「成功事例のヨコ展開」という言葉である。「先行事例・成功事例に学べ」ということで、多くの自治体関係者が全国各地の先進地域に視察に訪れる。神山町、上勝町、海士町、西粟倉村、東川町、紫波町といったあたりがこうした「聖地巡礼」の有名どころとして挙げられよう。ちなみに人口5,000人弱の神山町には一年間に288団体・1,886名が視察に訪れたという(2019年度実績) 。  しかし、そうして視察に訪れた自治体の中から第二第三の神山町が現れたという話

            地域活性化はなぜうまくいかないのか?—地域創生のイノベーション戦略 ①

             我が国は既に人口減少社会に突入しており、多くの自治体が人口減少、とりわけ人口の社会減に頭を悩ませているところである。ゼロサム・ゲームどころか総人口が減少に転じたマイナスサム・ゲームの下で、各自治体は人口や税収という「稀少な」資源を互いに奪い合う地域間競争を戦うことを余儀なくされているのだ。  ところで、競争戦略には大きく「同質化競争」と「差異化競争」というふたつの類型がある。乱暴に括ってしまえば同質化競争とは相手と同じ土俵で戦うことであり、差異化競争とは相手と違う土俵で戦