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傘の市場規模

銀行さんとの雑談で、
「傘の市場規模ってどれくらいなのですか?」
「今、傘市場は伸びているのですか?」
と質問されることがあります。

安直に聞くなよって心の中では思いつつも、銀行の担当さんは上司に報告が必要なのかもしれませんし、業界の状況を知っておきたいんだと思います。

しかしこれは理路整然かつスマートに答えられない質問なのです。
最近はメーカーに小売部門があったり、大手小売さんが傘を直接輸入したりで、メーカー、卸、小売のボーダーがないこと。

メーカーのほとんどは中小企業で、明確かつ蓄積された売上データが公開されていないことなどの理由があり、元になるデータがありません。

*メーカーといってもファブレスが多いのが実状です。
*ここで書いている傘の市場規模とは、一般的な雨傘や日傘、晴雨兼用傘を意味しており、ビーチパラソル、ガーデンパラソル、傘の部品などは含めておりません。

ファクトをたどるなら貿易統計

そこで私がやっていることは推測することです。
一番確実なのは、財務省貿易統計のページへアクセスし、傘の輸入数・輸入金額を調べることだと考えています。

*傘は輸入品だけではなく、国産もありますが量産体制の工場は国内に皆無のため、市場規模の推測に大きな影響を与えないものと考えております。

傘に関係するH.S.codeは以下の通りで、指定のコードで検索すれば、様々な数字を調査可能です。

ご覧のようにちょっとややこしいのですが、超簡単に説明すると

  • 長傘、6601.99 000

  • 折りたたみ傘、6601.91 000

この2つのコードを調べれば、概ねの数字がつかめると私は考えています。

よろしければ、アンベルのHPにも貿易統計の数字を掲載していますので、参考にしてください。

傘の輸入金額はおよそ345億円

で、結論として2023年の輸入金額はおよそ345億円。
この金額はあくまで輸入金額なので、乱暴に言ってしまえば原価です。
輸入金額に経費や利益を乗せて販売しますし、小売となると店舗費用なども発生します。
費用や利益を上乗せしていくと、輸入金額の3倍〜5倍程度が小売価格になると私は想定しています。
そうすると、市場規模は1,000億円〜1,700億円、中間をとって1,400億円くらいではないか?といったざっくりしたイメージを持っております。

また輸入された傘は、

  • 備品として企業に納品される

  • ノベリティとして使用される

  • メーカー在庫になる

など、すべてが全て小売販売されるとは限りません。

傘市場は成長しているのか?

さらに「傘市場は成長しているのか?」という問いですが、先程2023年の輸入金額で345億円、コロナの3年間は輸入金額平均で約250億円でしたので、答えは「直近は成長しているが、行動制限解除したなりに回復はしているが、金額増は為替の影響が大きい」というのが答えです。

10年前の2014年は平均為替$1.00=105円で、輸入金額308億円ですので、俯瞰してみるとあまり成長はしておらず、横ばいもしくは厳し目にみれば若干の鈍化という感じだと思います。

業界内のトレンド

さらに、長傘と折りたたみ傘で、比率が微妙に変化しはじめています。
今回は市場規模の話なので、あくまで金額ベースで書きますが、以前は70:30くらいで長傘の輸入金額が多い状況でした。

ところがこの5年位は、長傘が徐々に減りはじめ、2023年は55:45くらいの比率になっています。
それには業界内のトレンドがあり、

  • 折りたたみ傘の高機能化(軽量や丈夫など)で単価がアップしている

  • 折りたたみ傘の日傘・晴雨兼用傘ニーズが増え、単価アップしている

  • ビニール製長傘はサステナブル、脱プラ風潮による需要減

  • ビニール製長傘は品質強度がアップし、壊れにくくなった

  • ビニール製長傘は原材料がアップし、価格が高くなった

などの変化が発生しています。

また生産国においては、中国一強からカンボジアへ生産が移行しつつあり、輸入傘全体数の25%にまでシェアアップしている。

まとめ

  • 傘の市場規模はおよそ1400億円(推測方法や市場規模の定義によっては金額の前後あり)

  • コロナ期との比較では成長しているが、10年スパンでは横ばいか鈍化

  • 折りたたみ傘が増え、長傘は減少傾向

  • 生産国は中国一強から、カンボジアへ移行しつつある

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