高校の普通科通学区域(学区)を撤廃すべきか

令和4年11月8日、富山県総合教育会議が行われ、高校のいわゆる「学区」を撤廃すべきという意見が出たようです。

現状

富山県立高校の普通科通学区域(学区)は、新川、富山、高岡、砺波の4つあり、現在は、

①普通科の場合:隣接する学区からも通学可能
②普通科以外の学科の場合:県内どこからでも通学可能

となっています。

全県一区にするメリット

例えば、現状では、砺波地区在住で普通科を受検する場合、
砺波地区と、砺波地区に隣接する高岡地区の高校は受検できますが、
富山地区と新川地区の高校は(砺波地区に隣接していないので)受検できません。

それに対し、富山地区在住で普通科を受検する場合、
富山地区と、富山地区に隣接する新川地区、高岡地区の高校を受検できます(砺波地区のみ不可)。

ですから、富山地区の高校数が最も多いこともあり、富山地区在住の中学生の選択肢が最も多いことになります。
全県一区にすると、こうしたことが解消されます。

また、例えば探究科学科設置校では、探究科学科を第一志望、普通科を第二志望などとして志願することが可能ですが、通学区域以外の受検生は普通科を第二志望とすることができません。
例えば、新川地区在住の受検生は、高岡高校の探究科学科を志願できますが、隣接地区ではないため、普通科を志願できないのです。それに対し、砺波地区在住の受検生は、高岡高校の探究科学科を第一志望、普通科を第二志望として志願することが可能です。全県一区にすると、この問題も解消されます。

デメリット

一方で、学区を撤廃してしまったら、懸念されるのは、特に富山地区の普通科に受検生が集中するのではないかということです。その結果、募集定員を満たさない高校が増え、再編統合が一気に加速するかもしれません。そうなると、過疎地域の高校がなくなり、地元の高校に行きたいと思っていた生徒が、遠くの学校へ行かざるをえなくなる、などという問題が起きるかもしれません。

また、受検生を集められない高校には、特色ある学校づくりが一層求められるでしょう。そうなると、先生方の負担が増え、働き方改革に逆行することになるかもしれません。

「普通科」とは

ちなみに、今話題に上がっているのは、「普通科」です。
実は、文部科学省は現在、普通科改革に力を入れており、令和3年3月31日に公布された学校教育法施行規則等の一部を改正する省令等により、高等学校等の特色化・魅力化に向けて、「普通教育を主とする学科」として「学際領域に関する学科」や「地域社会に関する学科」等の普通科以外の学科を設置可能にしました。

高等学校には多様な背景を持つ生徒が在籍していることから、義務教育段階において育成された資質・能力を更に発展させながら、生徒の多様な能力・適性、興味・関心等に応じた学びを実現することが必要です。このため、令和3年1月の中央教育審議会答申等においては、新時代に対応した高等学校教育等の在り方について、高校生の学習意欲を喚起し、可能性及び能力を最大限に伸長するための各高等学校の特色化・魅力化や、教科等横断的な学習の推進による資質・能力の育成が提言されたところです。
 これらも踏まえ、令和3年3月31日に公布された学校教育法施行規則等の一部を改正する省令等により、高等学校等の特色化・魅力化に向けて、「普通教育を主とする学科」として「学際領域に関する学科」や「地域社会に関する学科」等の普通科以外の学科を設置可能にしました。

新時代に対応した高等学校改革推進事業(普通科改革支援事業)の採択校について
(令和4年9月26日)
https://www.mext.go.jp/b_menu/boshu/mext_00024.html

そもそも「普通科」とは、「普通教育を主とする学科」のことです。特定の教科・科目に偏らずにバランスよく学習することで、基礎学力や教養を身につけることができ、将来どのような方面に進んでも対応できる―これが普通科のメリットではないかと思います。特色化・魅力化を重視するあまり、英国数理社といった、いわゆる普通教科(共通教科)の単位数を極端に減らした教育課程にすると、大学入試にも対応できず、将来行きたい方向に進むことができなくなるかもしれません。

「普通科」という名前が悪いのかもしれません。「『普通』だからだめ、もっと特色を持たせなければ…」となるのでしょう。
ちなみに「普通科」の英訳は、"general course"です。
"general"は「(特定の部門に限らない)一般的な、全般的な」という意味。
幅広い「一般的、全般的な」学力などを養うための普通科高校が県内各地にバランスよく設置され、地元の多くの生徒が通学し、勉強や部活動に打ち込んでいる―こうした状況は決して悪いことではないような気がします。こう思うのは、私だけでしょうか。

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