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地方採用の振り返り(2年間の試行錯誤と成果)

弊社の奈良工場は、まもなく竣工から2年を迎えようとしています。当初は場所柄、採用が最も懸念されていましたが、蓋を開けてみると思いのほか順調に進んでいます。今回は、地方拠点での採用活動を振り返ろうと思います。


募集要項と採用環境

募集職種は生産技術職(マシンオペレーター)で、年2名の採用を目標に設定しました。対象は新卒および30歳未満の中途で、通勤可能圏内在住者を中心に募集しました。

しかし、所在する奈良県五條市の人口は3万人を割り、減少傾向にあります。また、近隣には複数の工業団地があり、製造業の求人倍率は非常に高い状況でした。さらに、徒歩圏内に公共交通機関がなく、通勤には車かバイクが必要という問題もありました。

参照:五條市ホームページ

効果的だった3つの取り組み

1. 求人の強みをつくる

まずは、求人の強みをつくることを考えました。というのも、名前すら聞いたことのない中小メーカーが「新工場」という訴求ポイントだけで、近隣企業との採用競争に勝てるとは思えなかったからです。

そこで、近隣企業の求人票を調べたところ、弊社の初任給が大阪府(本社)の水準で設定されていたため、近隣企業より高いことが判明。この点を強みとして積極的に打ち出す方針を立てました。また、地元で長く働きたい人に向けて、60年を超える業歴や転勤無しの確約も魅力として伝えました

さらに活動開始後も、車やバイクの維持費負担を考慮し、世帯主への住宅手当支給やスタッドレスタイヤ購入費用補助など、地域事情に応じた福利厚生を導入しました。

弊社初任給(2024年3月現在)

2. ハローワーク担当者への求人PR

求人をどう届けるかも工夫しました。当初は有料の求人広告に出稿していましたが、求める年齢層からの応募は少なく、費用対効果が悪い状況でした。

しばらくすると、五條市ではハローワークが主要なチャネルであることが判明したため、求人広告の出稿をやめ、代わりにハローワークの就職支援担当者への求人PRを増やす方針に切り替えました

特に効果的だったのは、就職支援担当者向けの工場見学会です。通常の見学会より質疑応答の時間を長めに設け、過去の退職理由や怪我のリスクなどネガティブな情報も包み隠さず共有することで、担当者との信頼関係を築くことができました。

その後も、定期訪問を行い、社内報で新入社員の近況を報告しながら、大切な採用パートナーとして情報交換を続けています。

3. 新入社員へのフォロー体制を強化

採用と並行しながら、定着率向上にも取り組みました。本社での研修期間を最長3ヶ月設け、最低限の知識や検査業務を身につけてから現場配属する流れに変更。また、配属後は新入社員に教育担当者をマンツーマンで配置し、相談しやすい体制を整えました。

さらに、部署外の人事担当者が年4回(入社1ヶ月、同3ヶ月、同6ヶ月、同12ヶ月)の定期面談を実施。新入社員の不安や不満を吸い上げる仕組みをつくりました。

結果

こうした取り組みの結果、竣工後2年で新卒5名、中途1名の計6名が入社しました。中途1名の退職はあったものの、新卒は初年度から離職ゼロを継続中です。

嬉しい誤算は、社員紹介による入社が増えたことです。新卒5名のうち3名が社員紹介で、先に入社した社員が満足度高く働いてくれてる証拠だと言えます(弊社では紹介者への謝礼金はありません)。

また、ハローワーク経由の紹介も増えており、貴重な応募経路となっています。紹介数に比例してマッチング精度も高まり、直近では高卒社員1名の入社が決まりました。

最後に

奈良工場での採用活動を通じて、多くのことを学びました。特に、自社を推薦してくれる協力者を増やすことと、入社後のフォロー体制を整え社員満足度を高めることの重要性を再認識できました。

中小メーカーの地方採用は簡単ではありません。知名度も無ければ、潤沢な予算も無い。弊社に至っては、専任担当者もいません。しかし、自社の魅力を最大限に引き出し、地域の特性を踏まえた戦略を立てることで、チャンスはあると感じています。

道半ばではありますが、同じような課題を抱える企業のみなさまに、弊社の事例が一助となれば幸いです。

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