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誰かの意志に気付くこと −『キルタとぶきみなアパート』終演報告

S&D Project オリジナルミュージカル第4弾
『キルタとぶきみなアパート』がうまれました。

足を運んでくださった皆さま、応援してくださった皆さま、これから配信を見ようとしてくださってる皆さまも!ありがとうございました。
いつもいつも、私の脳みそにしかなかったものが役者を通して多くの人に一気に共有されていく様を見て不思議な気持ちになります。本当にありがたいことです。

配信あります!

まずはじめに!なんやかんやと長い文章になりそうなので、配信の宣伝を。

配信視聴期間は7/20〜27の1週間!何度でも見返せます。
見やすく編集された映像になっておりますので、見逃した方も、劇場でご覧になった方もぜひお家でキルアパしてください!

キルタという物語「この道を踏み鳴らせ!」

主人公・キルタ(江﨑七海)

キルタという何者でもなかった女の子が、自分の足で進み、自分の頭で考え、その先で自分のルーツに出会い、自分が歩いてきた道が自分より前から続いた歴史の先にあり、そしてこの先へと繋がっていることに気がつく。
…簡単に言えばそんな物語です。

過去にそういうことを書いた記事があるんですが、これを書いた日からまた自分で作品を書いて、人に渡していくことを繰り返すうちに考えたこともあります。

もちろん何もしなくたって、あなたはたった一人で特別な存在だけど。
結局人間は社会の中に在り、人間同士のコミュニケーションの中で生き、与えられたものを自分なりにこなして自分だけの道を作っていく。
人と人とは影響しあっていく。

思わぬものを貰ったり、傷つけあったり、また誰かがその傷を撫でてくれたり、誰かとの出会いや小さな決断が分岐点になったりする。まさに「袖振り合うも多生の縁」やっぱ日本語ってすごいな。笑

ようこそ、ぶきみなアパートへ…。

その他人の真心に気付けるか
誰かの思いやりを感じられるか
与えられたものの価値に気付けるか
…そういうことを感じた上で道を進んでいけたら…と思うんですよね。
もしかしたら誰かの愛情を見逃してるかもしれませんし!私は見逃したくない、誰かの愛情を。みんなに愛されたい強欲人間なので。全ての愛情に気付いて喜んでありがとうを言ってるんるんスキップしていたいです。笑

それらに気付くためには、思考を止めてはいけないなと思うのです。
以前は気付けていた他人の気持ちも、だんだんと気付けなくなったりするものですし。無自覚に変化している自分のことも、知ってあげたいしね。

…っていつものことですが、「これ作品の振り返りか?」という内容になって参りました。終演後に考えていることをまとめるためのnote、って感じなのでお許しください。笑

なげきうら街に込めたもの

M1「なげきの街角」より

そしてこの作品は搾取と特権、格差の物語でもありました。
なくならない差別問題、ガザで多くの命が失われていること。日本の政治だってこのままではいけないだろうという不信感に溢れています。
日々大きな苦しみが私たちを取り巻いています。

キルタの舞台である「アムリタ」という小国は、9年前に王が変わり、国の在り方が変わりました。ここは物語的かもしれませんが「シャガ」という国だったのが名前まですげ替わってしまったのです。
未来視の魔法を持つとされる王族たちが、国を表と裏に分けました。
貧しい国に客を呼ぶためです。
旅人たちが立ち寄り、お金を落としてくれるおもて街はシャガであった頃よりも裕福で華やかな暮らしになったことでしょう。そしてうら街の人々は、おもて街の宿屋の床を磨き荷を運び、商人たちにこき使われ奴隷のように働く日々を過ごしている。
こうして書いてるだけで他人事ではないセンシティブな問題を取り扱っているなと背筋が伸びる思いになってしまいます。

そんな「うら街」が舞台のミュージカルなのです。

♪低く落ちぶれ憂鬱の奴隷 魔法をください(「なげきの街角」より歌詞引用)

それでも極楽、ぶきみなアパート

そんな環境の中でも強く生きる…なんて、難しすぎるほど難しいことです。
だけど魔法を持たない私たちは、なんとか生きていくしかない。
そんなうら街で奇妙に愉快に生きている「極楽アパート」の住人たちはこの作品の希望といっても過言ではありません。もちろん彼らもうら街の住人です。事情も性質も抱えて、彼らは自分たちの運命を「それでもこれも自分だけの歩んだ道だ」と俯瞰しているのです。

M3「ここは極楽アパート」より

「逃げ場はないさ しかしここなら 極楽アパート」
私にとって劇作は、極楽アパートなのかもしれません。

そんな彼らに出会うキルタ。
思考する余裕も、季節を感じる余裕もなかったキルタが、
出会い、驚き、思考し、受け入れ、決断する。
そうして変わりゆくキルタに出会い、また同じように変化していく人たち。

「はじめて少しだけ、自分が愛おしく思えます」
演劇とは自分と見つめ合い、他人を想う芸術だと私は思います。

きみと出会い きみを想い きみに触れるよ
肩寄せあい  励ましあい 笑いあえるよ
魔法使えなくても 未来が見えなくても
紅く燃える瞳が 春を呼ぶ 魔法になれるよ

『キルタとぶきみなアパート』テーマソング「魔法になれるよ」より歌詞引用

皆さんにどううつったか、何が響いたか、はたまた何も響かなかったか。笑
どれでも嬉しいです。そういうものです、物語って。
長々書いてみたけれど、そんなことは関係なく皆さんそれぞれが思うことがあっても私は全然嬉しいです。
今回「脚本家の主張が強すぎる!」と紙にゴリゴリっと書かれたアンケートがあったのも大変嬉しかったです。そうなんです!主張したいことをたっぷり詰め込んでしまいました!とむしろ心が通じたような気持ちに…見当違いだったらすみません、きっとお互い様だよね。
嬉しい感想もたくさんたくさん頂けました。
ありがとうございました。

来年は新作トライアウト公演の予定はございません。
だけどS&D Projectは歩みを続けて参ります。

意志が意味を生み出す 瞳輝く魔法
歩いた道 選んだ道 誰よりも愛して さあ進め!

M10「私の意志はここにある」より歌詞引用

と自分で歌詞を書きましたから。
一応全員踊れるクリエイティブチームですから笑
この道を踏み鳴らして参ります!

今後とも応援のほど、よろしくお願いいたします。

『キルタとぶきみなアパート』 作・演出/ひらたあや …でした!

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