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『蝶々と灰色のやらかい悪魔』

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デリヘルで働きながら、自分の夢を叶えようと奮闘しながら、恋愛を交えた一人の少女の日常を描いた作品です。この作品はぼくにとって、初の長編小説で、デリヘルで働くとある女性に実際に取材…
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2020年12月の記事一覧

『蝶々と灰色のやらかい悪魔』 6

 その日の夕方、予報通り雨になり、ゲリラ豪雨のような夕立に打たれた。カッパなど最早役には立たず、ずぶ濡れになりながら出勤すると、店長がわたしの顔を見るなり、 「ちょ、ちょっとぉ〜、ななこちゃん!」と、とつぜん呼び止めてきた。  とつぜん呼び止められ、「へ?」と、玄関先にあるタイムカードを押しながら、気の抜けた返事をすると、ずぶ濡れのまま突っ立っているわたしを見て、「って……、あんた、ず、ずぶ濡れじゃない!」と、店長が絵に描いたような、ドン引きの仕方をする。 「あぁ、まあ