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冬の俳句を1ダース+1(或る絵描きの壱日)

秋は句数も少なかったので1ダース俳句は出さなかったのだが、冬になって益々俳句を詠む機会が少なくなったので、少々危機感を感じて自主練。
とはいえ、制限時間一時間で1ダースの即興訓練である。全て新作。
時間制限を設けるにあたって、何かしらのテーマがあった方が良いかと思って一日の流れに沿って詠んでみた。が、こちらはフィクションなのであしからず(そもそも私は絵描きではない)。
実に九箇月ぶりの俳句幼稚園記事、よろしければおつきあいください。

壱、  玻璃を裂くやうに鶏冬深し

   (はりをさくやうににわとりふゆふかし)
   【季語】冬深し

弐、  狗鷲や筆伝ふ珈琲の熱

   (いぬわしやふでつたふこーひーのねつ)
   【季語】狗鷲

参、  バラバラの朝食メニュー鴨の陣

   (ばらばらのちょうしょくめにゅーかものじん)
   【季語】鴨の陣

四、  パソコンを睨みてふくら雀かな

   (ぱそこんをにらみてふくらすずめかな)
   【季語】ふくら雀

伍、  冬麗の絵よ鳥たちの物語

   (とうれいのえよとりたちのものがたり)
   【季語】冬麗

六、  グールドの指先なぞる午後ぞ鷹

   (ぐーるどのゆびさきなぞるごごぞたか)
   【季語】鷹

七、  気に入りのカフェは満席冬の鵙

   (きにいりのかふぇはまんせきふゆのもず)
   【季語】冬の鵙

八、  踏切は轟音のち「無」寒鴉

   (ふみきりはごうおんのちむかんがらす)
   【季語】寒鴉

九、  冬の雁できれば叫びたい夕べ

   (ふゆのかりできればさけびたいゆふべ)
   【季語】冬の雁

拾、  鳥影に鼻歌止んでおでんの香

   (とりかげにはなうたやんでおでんのか)
   【季語】おでん

拾壱、 熱燗やペンギンたちの長き旅

   (あつかんやぺんぎんたちのながきたび)
   【季語】熱燗

拾弐、 木菟の眼を小さき自分の小さき意地

   (ずくのめをちさきじぶんのちさきいじ)
   【季語】木菟


おまけ、 アルビノの鴉の影は黒く冴ゆ

   (あるびののからすのかげはくろくさゆ)
   【季語】冴ゆ

最後は俳句ポストの兼題「余寒」の自選ボツ句のリメイク。
冴ゆ、の方がいいなと思ってこちらに。
これは即興ではなくそれなりに練ったので、なんだかんだでこれが一番完成度が高いのかもしれない。

扉絵:『雪解け』イヌワシ Golden Eagle

穏やかな春が訪れますように

鳥たちのために使わせていただきます。