政策の外注。
先日気になったこちらの記事につきまして。
基礎自治体には以前から「総合計画」というものがありまして、長期ビジョンを定めたものを基礎に、概ね5か年で行う計画をたてて、まちづくりの基本的なコンセンサスをもって動いています。学識経験者など知見のある方のほか、公募委員の方などにもお入りいただいて、条例設置の諮問会議(総合計画審議会等)でご意見を伺い、それ以外にも市民アンケートなども行い、まとまったらパブリックコメントも行い、という流れで住民の方のご意見も取り入れながら策定されることが多いです。
平成23年の法改正で策定はマストではなくなっていますが、現状も策定している自治体さんがほとんどのようです。
一方で、この10年ほどでしょうか、「地方創生」という単語がよく出てくると思いますけども、こちらは「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の閣議決定(平成26年12月)を受けて、各自治体が「地方版総合戦略」を策定することになりました。人口減少や地方の活性化など、いわゆる地方創生という部分に特化したものですが、被る部分もあり、別に作っても良いし一緒にしてもいいし、という状態で進んでいます。
一方で、総合計画にそれぞれ詳しいものを全部盛り込むことは不可能ですし、福祉や教育分野など、それぞれの法律に紐づいて計画立てが必要なものもあります。それを「総合計画」に対し「個別計画」と言います。「男女平等推進プラン」「教育基本振興計画」といったようなものです。
法律に基づいたものは国が向こう5年や10年の方針を立て、事業や施策のガイドラインを立て、都道府県も基礎自治体も、それぞれの現状分析や独自の政策論理に基づいて、そのガイドラインの中で強弱をつけたり、オリジナルの部分を作ったり、ということになっていきます。
強弱に関しては、ニーズ調査や統計分析などに応じる部分も大きいですが、強弱の付け具合やオリジナル施策の方向性などは、やはり政治的な判断がなされる部分です。
そういう、個別計画の部分にコンサルが・・・とは、お勤め時代は思っていませんでした。省庁に大きなコンサル企業が入り込んでらっしゃることは存じ上げていましたけども、なにせそういう計画を内製でやる自治体におりましたし、そのために統計分析もしておりましたし、という状況でしたので。
今こうして逆に、個別計画の策定のお仕事なんかをいただく側になって(雇い主様ともそういうお話をしますけども)それでも実は「私が内側にいたら絶対投げませんねー」と思っています。
現状を分析して、課題解決のための政策を立てて、できるだけコスパのいい事業を作って、予算引っ張ってきて(できれば外部の)なんぼが役人じゃないですか。
それを丸投げ・・・と自分の部下が言って来たら多分冷たい目で無言で見返したかもしれない。
「〇〇市さんが外注って聞いたので・・・」と言われたら、「よそはよそ、うちはうち!」のお母ちゃん理論でハネたかもしれない。
(いや業務委託だから、進捗管理はしっかりするはずなので、丸投げな訳ではない、というのも多分言い繕いでしかなく)
とはいえ人が減っていて、2040年を見据えてまだまだ減らしていかなくてはいけないなかで、計画策定の主務はだいたいもうすぐ係長~係長クラス、ということが多いと思うのですが、係長がプレイングマネージャーになっている昨今、5年に1度巡ってきたタイミングで更に負荷を載せるというのもまた酷な話と言えば酷かもしれない、それも分かります。
歳を取っているからできる訳でもないので、中途採用の方が40歳くらいだからって、いきなりポン、と投げられるものでもなし。
むしろ役人だからって、基礎自治体くらいだと、こういう仕事に巡り合わずに定年する人の方が多いですし。
なので、専門家に外注する、という選択肢は理解できなくもない。
とはいえ、コンサルと言うのは、多分既製服を作るお洋服屋さんであって、体にぴったり合ったオーダーの仕立て屋さんではないケースが多い、ということですね。
これはご契約先の1つのコンサルさんからもお伺いした話ですが、「契約したから丸投げ」もあれば「むっちゃ心配性」もあれば、「コンサル何するものぞ」的な上から目線もあれば、コンサルに対する態度はかなり幅が広いそうで。
多分私や元の上司群は最後のカテゴリに近くて、「だってあなた方現場ご存じないじゃなーい?」と言ってしまうであろうタイプ。
(まあでも、現場を知っていると、ステークホルダーに雁字搦めにされるリスクも上がるので、言い訳のための外注という方策もあったり・・・)
しかし丸投げのケース(悪気ではなく、多分忙しい)が少ない訳でもなく、そこに安直タイプのコンサルさんが入ってしまうと、似たり寄ったりの、そして何となく辻褄の合わないものが出来上がって、お金が吸い取られていくだけなのかもしれません。
最近で言うと、●●とか××のジャンルでよく見られるケースかも・・・と思ったり。
自分に置き換えれば、極力最終決定や必要な要素についてはきっちりご説明をして、必要なら上にも上げて、政策的な判断をしていただきたきながら進めたいなと思っています。
そうじゃないと、計画の中身が理解できなくて、履行ができなくなってしまうリスクも上がりますし、インフラや人件費が絡むものだと結構大金になりますので、そこにそんな金をかけるのかというのは、やはり政策的な判断になると思いますし。
住民でもない外部コンサルが勝手に決めちゃならん話だと思うのです。
ですので、今のところお会いしたことはないですが、「これとあれと、どうされます?」と聞いた時の答えをちゃんと出してくださる方とお仕事をしていきたいなと思う次第です。
たまに、「上の方と相談されなくていいですか?」みたいなことも言いますが、やっぱりネタが大きくなると、担当者ベースで決めちゃだめとか、誰までコンセンサスを取っておいた方がいいとかは、肌感覚で分かる部分がありますので、そこはアドバンテージかなと思っています。
確かに「どこかで売れた服」を持ってきて着せようとするコンサルさんは多いかもしれませんし、そうしないといけないほど忙しいコンサルさんも少なくないのだと思いますが、私はお受けできるだけ、極力オーダーメイドで現実味のある計画立てを続けていきたいと思います。(むしろエンドクライアント側にカスタムメイドを強要する可能性があるかも・・・)
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