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マイナンバーカードについて

河野デジタル相が2024年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えることを発表したそうだ。
ところが、デジタル庁が今夏に実施した調査では、マイナ保険証の申し込みをしない理由として、「メリット・必要性を感じない」(29%)のほか、「情報流出が怖い」が15%を占めるなど、一部で不安を感じる人もいるという。

これを読んで感じたことを2点述べたい。

第一。「メリット・必要性」についてだが、政府も保険証といった狭い範囲の便益を性急に追い求めるだけでなく、もっと広く、日常的にメリット・必要性を感じてもらう方法を考えるべきではないか。

役所でも銀行でも、はてはゴルフ場などの事業所でも、日常的に氏名、住所、生年月日、連絡先といった「個人情報」を「申請用紙」や「申込用紙」に手書きさせられる場面が非常に多い。

マイナンバーカードで登録された情報をAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース;意味はこれとかこれを参照してね)を通じて、端末が呼び出すことを可能にすれば、手書きの手間は一挙に省ける。

いまでも住民票、戸籍謄本を区役所(市町村役所)で取ろうとすると、申請用紙の手書きが必要だが、コンビニで取る場合はマイナンバーカードを読み取り窓に置き、後は画面上のボタンをポンポンと押すだけで手続が終わる。あの仕組みを公的証明や病院だけでなく民間企業(銀行、ゴルフ場等々)にも開放するのだ。

もちろん、「義務化」でないことを明らかにするために、「手書き」の手続きも当分は残すべきだろうが、そこはわれわれ日本人のことだ、「みなさん『手書き』なんてもうしてませんよ」となれば、「プライバシーを守るために手書きを通す」なんて人は、よほどの変人だけになるだろう。

「民間企業にまで個人情報のアクセスを許すのは抵抗がある」と感じる人はいるだろうが、ちょっと考えてほしい。あなたが銀行やゴルフ場等々の場で手書きで記入しているのは、個人情報そのものですよ?  そこで手書きした個人情報は確実に守られているのだろうか??

第二の感想は、この「情報流出が恐い」という見方についてだ。役所であれ、民間企業であれ、利用者が手書きした記入用紙は、後でシュレッダーか何かで裁断処分されることが個人情報保護法の体系で義務づけられているのかもしれない。

けれど、職場で「処分しといて」と命じられた担当者が「これ、情報として売れるじゃん?」と、良からぬ考えを起こすことはあり得ないだろうか?

きょうび区役所の窓口なんて、大抵非正規の人たちだ。いや、「非正規だと悪いことをするかもしれない」というのは偏見だ、いまや上級職の国家公務員が給付金詐欺を働くご時世だった。ゴルフ場なんかでも高齢者に対するゴルフ利用税の免税制度があるから、高齢者に絞った住所・電話番号などの情報がザクザクある。
…という訳で「良からぬ考えを起こす人間は必ずどこかに隠れている」ことを前提として制度設計しないといけないご時世なのではあるまいか。

皆さん、そういうリスクは心配せずに、気軽に個人情報を手書きであちこちに残しているのに、マイナンバーカードによる情報の流出ばかり心配するのは、こう申しては何ですが「間抜け」な印象だ。
むしろ、マイナンバーカードの読み取りで手書きを無くしていくことの方がよほど個人情報の総体的保護に繋がると思う(APIは仕様の定め方によってマイナンバーからアクセスできる情報の範囲を明確に限定できるし、電子的に保存されたデータベースをダウンロードしたりプリントアウトすることを制限・記録する仕組みだって簡単に作り込めるはずだ)。

最後にマスコミの取り上げ方について余計な一言。
「実質義務化」なんて煽り見出しはアナクロだと思う。「いや、投書やSNSにも『不安』や『政府への不信』の声が寄せられている」と仰るかもしれないが、きょうびの発信主は、マスコミがどういう投書やSNSに食いつくか、「傾向と対策」を研究して発信していることをお忘れなく。「権力に抵抗する市民や弱者に寄り添って」いるつもりでいると、どっこい、そういう「上から目線」を見透かされて逆手に取られてるのかも?ですよw。

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