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2023/04/09 リサ・ラーソンとコミュ障のホスト

お酒をたくさん飲んでそのまま寝てしまった。

友達とリサ・ラーソン展に行き、ホストのキャッチに捕まって、お酒を飲んだ。リサ・ラーソン展の話からしようかな。

嬉しい! 私はリサ・ラーソンが大好きなので、好きなアーティストの展覧会が近くで開催されるのはかなり嬉しい。九州内開催でも行ってたかも。
いつ行こうかな……と思っていたら、同じ県内に住む高校の友人が一緒に行こうと誘ってくれたので二つ返事で行くことになった。聞けば彼女の母親がリサ・ラーソンのファンらしい。

良い天気だった。

リサ・ラーソンはスウェーデンのアーティストだ。ネコの「マイキー」というキャラクターが有名だが、彼女は本来陶芸作家。この展覧会では彼女のルーツとなる作品を展示しているとのことで、ワクワクしていた。

良かった。リサといえば「マイキー」やサムネイルのハリネズミなどの動物たちが有名だが、実際に陶芸作家としての作品を見れば、かわいさだけでない「動物」としての面白さや不思議さに惹かれたのだと分かる。たとえば人間の赤ちゃんの陶芸作品があったとして、その動きや表情、体のフォルムなど様々な角度からそのユニークさを描いている。私たちはリサの作品を見て「可愛い!」と言うが、リサは動物たちの可愛さのみを見ているわけではないのだ。

特に良かったのは「未知の動物」シリーズ。名前の通り、リサが生み出した未知の動物たちがずらりと並んでいる。リスっぽかったり、クマっぽかったり、犬っぽかったり、皆目見当もつかなかったり。リサの頭の中の世界に生きているのであろうその生き物たちは、やっぱりどこかユーモラスで、決して手放しに可愛いと言える見た目をしているわけではない。しかしどこか愛嬌があり、リサの動物に向けるまなざしを少し知ることができるようにも思えた。

写真撮影はできなかったので写真はないけれど、良かった。私は動物が好きなので、いろんな可愛い動物を見れてめちゃくちゃ幸せだった。リサの動物はみな極端に丸い。最高だ。丸い動物は可愛い。

せっかくなので常設展も観ることにした。鹿児島市立美術館の常設展は学生200円で見れる。本当に好きな場所だ。鹿児島に来てから何度も何度も訪れている。
シスレーも、モネも、ピカソも、ダリも、マティスも、全部200円で観れてしまう。鹿児島ってすごい! と一番最初に思ったのはこの美術館に来た日のことだった。都会になると、こんな凄い絵画を一度に観ることができるのか……! と感動したのだが、さまざまな場所の美術館を訪れた今考えてみれば、都会・田舎関係なく鹿児島市立美術館が良い美術館であるだけなのだと分かる。鹿児島市出身の画家・黒田清輝のコレクションを展示しているとのことで、そのどれもが著名な画家のものばかり。パワーを感じる。
収蔵作品がかなり多く、季節ごとに展示作品も変えているところも素敵だ。今は春にちなんだ作品を多く展示している。

友人はあまり美術館に来たことが無いとのことで、内心ドキドキしながら館内を歩いていた。美術館の良さが分からないとか、何も感じないし「絵だな」で終わってしまうからつまらない、という人はかなり多い。多いし、私もその気持ちは分かる。周りの人々が皆神妙な顔つきで美術品を見ていたら緊張してしまうし、いつも「絵が上手いなー」「これは絵が上手いのか分からんなー」みたいなことばかり考えてしまう。絵を見て「面白い!」と思うようになったのはごく最近のことだ。
友達は「美術館ってなんか良いね」と言ってくれた。もうそれでじゅうぶんだと思った。
よく分かんないけどこれが好き! とかでいいんだよね、と言っていた。それでいいよ、と返した。それでいいです。



美術館を出て、公園で開かれていたフリーマーケットを見ながらクレープを食べて、さつま揚げを買って別の公園で食べていた時。ベンチに座ってお喋りしていたら、明らかに見た目がホストな男性2人に話しかけられた。
「すみません、これナンパなんですけどお姉さんたちお喋りしませんか?」

ナンパじゃなくてキャッチだろこれ!!
やーべ、っと思った頃には時すでに遅し、逃げるタイミングを完璧に逃してしまった。友人はある程度男性と喋ることに慣れているけど、私は基本的に男性が苦手。この春休みの間、面接官と父親以外の男性と喋った記憶が無いくらいには苦手だ。助けて!!!!

ホストのうち1人はめちゃくちゃお喋りで、もう1人はあまりお喋りが得意じゃなさそうだった。お喋りなホストは友人に目をつけ、もう1人は私の隣に座った。青空ホストクラブかよ!! と思いながら、私は必死にTwitterをスクロールしていた。Twitterは安寧をもたらすので……。
私がTwitterをしている間、ホストは黙ってmtbi診断をしていた。なんなんだこの時間! 友人とお喋りなホストは会話が盛り上がっている。助けてくれ!!!!! Twitterのタイムラインを必死に遡っていると、隣のホストが口を開いた。

「……なんか、向こうめっちゃ盛り上がってるっすね」
「あっ、はい。すごいですね」

マジでお前ホストなんか?
当然そこで会話が途切れた。彼はmtbi診断を途中で諦め、息を吐いて言った。

「俺あんま人と喋るの得意じゃなくて、なんかすいませんホント」
「え、いやこっちこそ、ハイ」
「なんかね、ハイ」

ホストってこういうもんなの?
完全にコミュ障の会話なのに、見た目はSNSでよく見るホストなので頭がバグってしまう。ホストってこんなんだっけ?
ちょっと興味が湧いた。このnoteでも何度か話している通り私は小説を書くことが好きなので、こうして普段滅多にかかわらない人間と話すことで何かアイデアを得られるかもしれないと思ったのだ。あと純粋に私の人生に「ホスト」という人間がレアキャラすぎた。

「……今、ホストを初めてだいたいどのくらいですか?」
「えっ!? えー、今4ヶ月目ですね。まだ全然ペーぺーです」
「そうなんですね。ホストの前って何のお仕事されてたんですか?」
「普通に昼職やってました。全然普通の」
「そうなんですか。なんでまたホストになろうと?」
「なんか俺、あんま人と喋るの得意じゃなくて。……え〜こう、なんて言うんすか、自分を変えるじゃないけど、こう、社会、社会……」
「社会勉強?」
「そうそう、社会を知ろうと思って、それで」
「それでホストになろうって、すごいバイタリティですね」
「バイタ? 何?」
「実行力めっちゃありますね」
「え〜? ありがとうございます」


現在私は就職活動中だが、新聞記者を目指している。新聞社も何社か受けており、いろんな場所や人に取材して、それを記事として広く知らせる仕事に魅力を感じている。


「どうですか? 4ヶ月やってみて」
「え〜……ヤバいですよ、周りみんなめっちゃビジュいいし。なんか全然だし。でもやっぱ変わったかなーってのは思いますね」
「変わったって、どういう感じですか?」
「だってホストじゃなかったら、こうやって街中で女の子に声掛けるとか絶対しませんもんね」
「そうですよね。やっぱりこれもお仕事で?」
「お仕事ですねー。こんなお仕事あるんだって感じですけど」
「でも顧客獲得のために大事なことですしね」
「大概逃げられますけどね。こうやって喋ってくれる人ってあんまりいないんですよ」
「そうですね。いきなり話しかけられるって怖いですもんね」
「そうですよね〜! 俺たちも気まずい相手も気まずいし、あっ……て感じで最悪ですよ」


面白いな……!
普段、全く接点を持たない人間の話を聞くのは面白い。今やホストや夜職をテーマにした作品は世に溢れていて私もそれらのいくつかは読んだことがあるが、こうして「生」の声を聞く機会は中々ない。


「やっぱり担当のお客さんがついたりするんですか?」
「えー? ああ、まあ2回くらいリピートしてくれる女の子はいますね」
「凄いですね!ドリンクとか入るんですか?」
「たまにって感じですね。俺はまだまだなんで。あんまお金使ってほしくないし」
「そうなんですか?」
「そうですよ。無理してほしくないし、どうせなら楽しんで欲しいし。なんか東京とかホストが刺されたみたいなのあって怖すぎるし、刺されたくないんで」
「たしかにそうですね。刺されるのは嫌ですね」
「無理してお金使われると悪いなって思うし」
「はあなるほど」
「お姉さんはお仕事何されてるんですか? っていうかインスタ交換しませんか?」

ヤッッッッベ!!!!
ずっと質問し続けて自分のこと聞かれないようにしてたのにこっちにターンが来た!!!!

その後も躱すように質問を繰り返した。インスタの交換だけは躱しきれず、フォローされた。

ホストが立ち去った後、「ウチらの貴重な時間返せ!!」と怒る友人と一緒にアニメイトに行った。SideMの山下次郎さんのアクスタを見て、「やっぱり山下次郎さんだな……」と思うと安心した。二次元は無害だ。

その後友人とご飯を食べて、友人の推しているアイドルグループの動画や写真を見て、2件目に行って帰った。

インスタを見てみると、DMに「さっきはありがとうございました! 明日は学校ですか?」とさっきのホストからメッセージが届いていた。
すまん、と言ってフォロワーを削除しフォローも解除した。


きっともう二度と会うことはない。

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