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私の処世術 その2

私が思う、人との付き合い方

前回の記事はこちら↓

know who > know how

50年近く営業をしていますといろんな方々とお付き合いをする機会がありました。ここでは仕事を通してお付き合いが始まった方々との話を書こうと思っています。私のような小さな世界で生きて来た人間は自慢出来るほど多くの人とお付き合いはしていません。生まれつき人見知りで引っ込み思案の私は営業には不向きだと今でも思っています。そんな私に最初は仕事だから仕方がないと割り切ってお付き合いして頂いたお得意様の担当者や上長の方、前号でも書きましたが異業種の方などと仕事を離れてもお付き合いさせていただき、50年経た今でもお付き合いが続いています。公私共にと言うか、仕事と遊びの区別がつかないくらい年がら年中顔を突き合わしていた人達です。遠くの親戚より近くの他人と言う言葉がありますが、私にとって身内以上と思える人もたくさんいらっしゃいます。
転職を考え、悩み続けた日々、次の就職先も決めずに退職、結果的には浪人人生?を過ごした時期が一番きつかった時でした。私事で恐縮ですが、娘が小学校入学、父親の職業欄に無職と書いたときはさすがに落ち込みました。自分が勤めたいと思える会社を見つけるまでは何もすることがない日を過ごしていました。そんな私を気遣って毎日のように電話を下さったのは一人や二人ではありません。お客様、協力会社の社長、異業種の社長や営業仲間、そして退職した会社の上司や同僚から本当に多くの声掛けをしてもらいました。あの時に味わった人の優しさを生涯忘れてはいけないし、自分も見習って人に対しては優しさを忘れてはいけないと思って生きています。人間なら誰しも私と同じような経験をされて来ていると思います、そして人の優しさを身に染みて感じたことがあると思います。一例を挙げさせてもらいましたが、この転職を機に今の私があります。現勤務先土山印刷の先代社長や現社長、上司、先輩、同僚、お客様の担当者や上長の方々、新しく付き合いが始まった協力会社の方々、そして今では最も大切な友人と呼ばせてもらえる印刷上部団体で知り合った多くの方々と交遊が始まりました。若かりし頃に作れたお客様や友人、30代半ばに転職してから交遊が始まったお客様や会社の方々、そして50代からお付き合いが始まった上部団体の方々と数え上げたらきりがないくらい増えました。必ずしも人数が多ければ良いとは思いませんが、やっぱり多くいらっしゃることに越したことはないと思っています。
話を戻しますが、私の無理無茶を嫌な顔をせずに?聞いてもらった協力会社や外部スタッフの人達、そして忘れてはならない土山社長を筆頭に上司・先輩・同僚・後輩の人達と仕事だけの関係ではないお付き合いをしてもらっていると自分では思っています。しかし皆さんにとっては迷惑な人間だったかもしれません。読者の方々も親友と呼べる人や先輩や同僚が多くいらっしゃるでしょう、私と何ら変わらないと思っています。私にはかけがえのない人達ですが、もちろん皆さんにもかけがえのない人達が多くいらっしゃると思います。かけがえのない人たちとの関係は一生大事にしていきましょう。
この項で末筆になってしまいましたが、上部団体活動に参加させて頂いた社長には本当に感謝しています。特に京都単身赴任のなかで上部団体の方々との温かい交遊が出来たのも社長のおかげだと思っています。単身赴任生活から東京に戻りましたが、未だに団体会務担当として勤めさせてもらっています。顧問としての仕事と上部団体会務従事が私の健康の源です。
理論的な根拠は書けませんが、まとめますと営業の極意はKnow howよりはKnow whoだと思っています。

お客様と親しくなる

ここからは実にくだらない話となります。お客様と親しくなるコツは前にも書きましたが、サラリーマン5種競技や10種競技を下手でもいいから競う?ことは如何でしょうか。しかし声を掛けてもらわないと参加出来ません。先ずは私流の極意を披露致します。まったくバカみたいな話なので途中で読むのを止められるかもしれませんが、それはそれで結構です。営業なら誰でもとりあえずはお客様と接点を持てる機会はあります。しかし、接点作りが大変なのも承知しています。接点を作るのが難しいのは昔も今も変わりはないと思います。そこは皆さんの置かれている環境や、努力で難しさも変わってきます。ベストな接点作りは私には書けません、ケースバイケースだと逃げておきます。

さて、見込み客や既存のお客様と対面するわけですが、営業はやはり顔を突き合わせて話をするのが一番です。その時のお客様の表情を読み取ることや相手先会社の雰囲気や対面時の場に流れる風を直接肌で感じることから営業活動が始まると思っています。自分に対して好意的なのか、信頼出来る会社と見てくれているのとかが直感的に感じることもあります。私も過去に何も説明もしていないのに拒否反応的な姿勢で応対されたことも度々ありました。ここで引き下がれば営業として失格です。せっかくお役に立とう、素晴らしい商品やサービスを提案しようと思って訪問して来ているのに、「まだ何も話していないではないですか、聞く前に追い返しかよ」と思ったものです。訪問前に訪問目的をきっちり説明出来ており、お客様も納得されていればこのような事はないのですが、そうとばかり言えないのが営業活動です。じゃ、どうして腰をあげさせないで話を聞いてもらえるかが営業力の第一歩だと私は思っています。

今の営業は企画提案が出来ないと営業ではないと言われています。その通りです。プレゼンをさせたら上手いものです。いきなりプレゼンになるかどうかは別ですが、とにかく話上手です。ただ、プレゼンが終わるとそこからが問題と言われる人が多いのも事実です。話せないのです。ネタがないのです。お客様も延々と堅い話ばかりではお疲れになられます。退屈もされます。さらにご自分のお考えを出さずに終えられることもあります。

プレゼンやお互いの紹介が終わった後が営業の勝負どころ、追い返されずに今度はお客様が話される番です。話させる術は言い換えれば聞き上手になることです。相槌の打ち方、質問の返し方、同意や反論などするタイミングや内容でどんどんお客様は乗って来ます。プレゼンで気に入ったところ、そこは少し違うと思われたところ、僕はこう思う等聞きたいこと、知りたいことが次から次に出て来ます。これはプレゼンの場だけでなく、どんな営業シーンでも共通して言えることです。なかなか難しいことですが、聞き上手になることは営業にとって必須です。ひとつの基準として仮に1時間の面談の中で、お客様40~50分、自分が話して良い持ち時間は10~20分が妥当ではないかと私は思っています。1時間も話せたら、もう一人前だと思います。もちろん仕事の話ばかりでなくてもいいのです。

仕事以外の話が出来るかどうかも営業の器量にかかっていると思います。必要かどうかの判断はお任せしますが、私は本音が聞けたり、お客様の人となりが見えたりするので、大事なことだと思っています。良好な関係を長く続けていく上で大切な要素ではないでしょうか。
それではどんな話をされて来たのですかと聞かれることがあります。これは私も教えられたことですが、営業はネタが詰まったタンスの引き出しを持っていなければならない、そして常に新しいネタを仕入れる努力?を、と言われました。大変な努力?と勉強が必要と思われるかもしれませんが、勉強は大変ですが、努力とは思えないこともあります。

例えば、必ず毎日、新聞各紙に目を通すこと。目の通し方は簡単です。まずは大事な情報源?であるスポーツ新聞を見ることです。全紙購入するのはお金もかかるしスタンドで買うのも恥ずかしいこと、そこで喫茶店で読むのです。営業だから一日一回以上はコーヒータイム、と言うより休息タイムをスポーツ新聞が置いてある喫茶店で取ります。

野球から始まり芸能記事まで全て見出しだけは目を通します。見出しだけではダメかなと思える記事は読み通します。読みさえすれば、どのようなお客様に対しても大抵、話を合わすことが出来ます。どのスポーツでも古い話から昨日の結果やエピソードまで話が出来ます。種目によっては昔、活躍した選手の名前もすぐ出すことが出来ます。野球・サッカー・バスケ・バレー・水泳・体操・ラグビー・陸上競技・マラソン・スキーアルペン・ジャンプ・スケートなどスポーツ好きのお客様は必ずいらっしゃいました。これで会話を最低30分は持たせました。ギャンブル好きのお客様も多かったですね。競馬・競輪・競艇、とくに競馬好きの方はひいきの馬の話や馬券を当てたレースの話になると時の経つのを忘れて話される方多かったです。自慢話は誰にでもいいから話したいのは、皆、同じですね。

ドラマや音楽の好きな方も多かったです。私が担当したお客様の中に女性の方も多く、彼女等とはドラマや映画の話で盛り上がりました。スポーツ新聞には必ずそれらの記事が載りました。私は視聴率の高い人気ドラマは必ず最終回は見るようにしていました。放映、の翌日に会話を合わすことが大事なのです。ヒットしている映画も見るようにしていましたが、見られないこともよくありました。そんな時は新聞や雑誌のお世話になるのです。音楽もそうです。音楽は昔のヒット曲や歌手の話から、たった今流行っている曲や歌手についても新聞のお世話になりました。

ついでに書きますと趣味についても同じです。5種競技から始まり、旅行・読書・釣り・カメラ・ゴルフ、果ては庭いじりと「何でもござれ」を演じました。実際、何にでも手を出しました。道具が必要な趣味はお金がかかりましたが、何でもすることが好きでしたし、自分への投資でもありました。趣味の話で盛り上がったことなど数えられないくらいありました。

じゃ、遊びばかりの人間と思われるかと思いますが、決してそうではないと言っておかないと格好がつきません。一般紙、経済紙は必読、書籍は政治・経済専門書、テレビのニュースはもちろん、ニュース解説や討論会・座談会、教養番組まで見るようにしていました。お客様と会話を成立させる為でした。録画した番組は休日か時には麻雀で遅くなって帰った夜に見ました。こう書くと大変な努力家とか仕事第一人間と思われるかもしれませんがそんなことはありません。根が不真面目な人間です、どれもこれも中途半端で終わらせています。続けているのは、ゴルフくらいですかね、本を読むと最近はすぐに眠くなり、旅行は手配が面倒だし、カメラはアンチデジカメで興味半減、麻雀出来る人が身近にいない等で実際には仕事には繋がらなくなっています。書き忘れました、ギャンブルは一人でも出来るので、相変わらず続けています。高尚な趣味や難しい話題では、お客様の中で詳しい人に出くわすと直ぐに化けの皮が剥がれてしまいます。そこは反省の繰り返しです。

私の部下だったS君、彼は忠実に私の教えを実行してくれました。同行すると必ず喫茶店、それもスポーツ新聞が置いてない店には行かない、彼のカバンの中には夕刊紙か漫画週刊誌しか入っていない、そんな営業でしたが営業力は素晴らしいものを持ち合わせていました。現在は退職し中堅の広告代理店に勤めていますが、そこでは部下も持ち、私と同じようなことを教えているのかと期待?しています。ある時、二人でお客様を訪問した時、話が盛り上がり経済から始まりギャンブルから趣味の話になり、最後は印刷業界のトレンドについてまで延々と会話が続きました。最後に彼がお客様にひと言、「中嶋の言っていることの7・8割は出鱈目か嘘ですから」と冗談交じりに言いました。あながち外れていないと自分でも思いましたが、それだけ会話が続けられる、風呂敷を拡げられる能力には自分ながら感心しました。決して出鱈目を言ってないですから、信じてください。面白くはしているかもです。どうもスミマセン。

いい加減な営業だとお思いでしょが、決してそんなことはありません。如何にしてお客様を自分の世界に引っ張り込もうか、そして心を開いてお付き合いをして欲しいの、一心でした。そんな私に未だにお付き合いをしてくださっている方々、騙したつもりはありません。どうかご理解ください。そして今まで同様 お付き合いの程 よろしくお願い申し上げます。

                    土山印刷株式会社  中嶋恒雄


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