楽曲について

Runaway / written by Jon Bon Jovi, George Karak
1982年、音楽での成功を夢見ていたニュージャージー出身の20歳ジョン・ボン・ジョヴィは、レコーディング・エンジニアのいとこトニーを頼って、スタジオに出入りしていたミュージシャンを集めて自作曲のデモ・テープを制作。それを新興のローカルラジオ曲WAPPに売り込んだところ気に入られ、ソロではなくバンドとして売り出したほうが良いというアドバイスを受けます。それで結成されたのがボン・ジョヴィで、バンドとして再録したこの曲で1983年にデビュー、その後の活躍は言わずもがなですが、楽曲がきっかけになってバンドが生まれたというちょっと珍しいパターンです。
ジョン自身が作者としてクレジットされています(ジョージ・カラクとの共作)。ボン・ジョヴィはどの曲もキャッチーでよくできているので、てっきり外部のソングライターから提供を受けているのかと思ったら、実はほとんどのヒット曲をジョン自身が書いていて、2009年にはソングライターの殿堂入りも果たしている大変な実力者なのですね。バンドのフロントマンとしての華々しさ、映画俳優ばりのルックスとスター性もさることながら、この曲の巧みな心理描写とライミングでもわかる通り、この人の本質はソングライターなのかもしれません。

曲を聴く前にイメージしたいこと

2人の少女が登場します。父親の操り人形のような扱いで育てられるうちに誰にも本音を言えなくなり、結局家出してネオンサインに導かれるように夜の街に繰り出すShe=「あいつ」。父親から疎まれ家ではいつもひとりぼっち、寂しさを紛らわそうと夜の街で危ない遊びに手を出すyou=「お前」。
「あいつ」の末路を知っている語り手は、父親と和解するにしても縁を切るにしても、目の前の問題に「あいつは逃げた。お前は向き合え」と促したいのだと、筆者は解釈しています。
過干渉、ネグレクトなど親ガチャ条件は色々ありますが、思春期の女子の心理というのはいつの時代も悩ましいものです。とはいえ、逃げるな向き合えとあのジョン様に言われたら、どんな不良少女も更生するんじゃないですかね……それではどうぞ!

歌詞と対訳

On the street where you live girls talk about their social LIVES
お前の地元のストリートでは 女子同士で世間話さ
They're made of lipstick, plastic and paint, a touch of sable in their EYES
口紅や整形にお化粧の話題 高級毛皮にも目がないって
All your life all you've asked when's your daddy gonna talk to YOU
今までパパの言うことにどう応えてきたか その結果が今のお前だ
But you was living in another world trying to get your message THROUGH
でも何か伝えたいことを伝えるには 場違いな世界にいないか

No one heard a single word you SAID
たった一言の言いたいことが 誰にも届かない
They should have seen it in your eyes what was going around your HEAD
お前の目に書いてるのにな お前の頭の中でうずまく思いが

Ooh, she's a little RUNAWAY
そう、あいつは結局 逃げているんだ
Daddy's girl learned fast all those things she couldn't SAY
パパのお人形さんは 言いたいことを言えないと悟ってる
Ooh, she's a little RUNAWAY
そうして結局 逃げているんだ

Take a line every night guaranteed to blow your MIND
意識がぶっ飛ぶのは保証済の クスリを毎晩キメて
I see you out on the streets, calling for a wild TIME
ストリートに立って刺激を求める お前の姿を見たぜ
So you sit home alone cause there's nothing left that you can DO
でも家ではすることがなくて 独り寂しく座ってるだけだろ
There's only pictures hung in the shadows left there to look at YOU
部屋の陰にある写真だけが お前を見つめてる

You know she likes the lights at night on the neon Broadway SIGNS
夜の灯り ブロードウェイのネオンサインに 魅せられるあいつ
She don't really mind, it's only love she hoped to FIND
自分では認めないが あいつが本当に欲しいのは愛だけなんだ

Ooh, she's a little RUNAWAY
そう、あいつは結局 逃げているんだ
Daddy's girl learned fast all those things she couldn't SAY
パパのお人形さんは 言いたいことを言えないと悟ってる
Ooh, she's a little RUNAWAY
そうして結局 逃げているんだ

No one heard a single word you SAID
たった一言の言いたいことが 誰にも届かない
They should have seen it in your eyes what was going around your HEAD
お前の目に書いてるのにな お前の頭の中でうずまく思いが

Ooh, she's a little RUNAWAY
そう、あいつは結局 逃げているんだ
Daddy's girl learned fast all those things she couldn't SAY
パパのお人形さんは 言いたいことを言えないと悟ってる
Ooh, she's a little RUNAWAY
そう、あいつは結局 逃げているんだ
Daddy’s girl learned fast, now she works the night AWAY
パパのお人形さんは全てを悟って 夜の闇へと消えていく

  • run awayだと「逃げる」という動詞ですがrunawayとくっつけると「逃亡者」になります。ですが「彼女は家出少女」と訳してしまうと、抱えている問題から逃げている感じが希薄になる気がして、あえて動詞のように訳しました。

  • take a lineは映画とかでよく見ますが、粉末コカインを鼻からストローで一気に吸うために机の上に丁寧に一直線に整える行為。guaranteed to blow your mindはどこかで聞いたことがあると思ったら、クイーンの「Killer Queen」に全く同じフレーズが出てきます。上質な麻薬を示す常套句なのかもしれません。

  • SheのことをわざわざDaddy’s girlと言い換えている点に、Sheが置かれている状況が見え隠れします。筆者はこれに「お人形さん」「操り人形」のように父親の言いなりになり自分の心を閉ざす少女のイメージを持ちました。また同じラインのshe couldn't sayは一部資料ではhe couldn’t sayになって、その場合は「パパの口からはとても言えない危ないアレコレを覚えちまっている」という意味に転じる、と解釈しています。

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