Willin' 歌詞と対訳
楽曲について
Willin' / written by Lowell George
ローウェル・ジョージ率いるリトル・フィートの楽曲。1971年のデビューアルバムに収録された弾き語り風のバージョンが初出ですが、翌年の2ndアルバム「Sailin' Shoes」でバンドサウンドでアレンジし直したバージョンが一般的には知られています。同バージョンを元にリンダ・ロンシュタット、ザ・バーズなどがカヴァーし、ボブ・ディランもライブで歌っているのを確認できます。
1968年頃、フランク・ザッパ率いるザ・マザーズ・オブ・インヴェンションにギタリストとして在籍していたローウェルは、この曲を書き下ろしマザーズで演ろうとザッパに持ち込んだものの、曲の内容がドラッグに関するもので、ドラッグ嫌いのザッパはこれを拒否。さらに「こんな曲を演るなら自分でバンドを組んで自分で演れ」とマザーズを解雇された、というのがローウェルの証言です。が、事の真相はローウェルの才能を見込んだザッパが親心から遠回しに独立を促した、というところかもしれません。そこからロック史に名を刻むリトル・フィート結成に繋がるのですから、運命とは不思議なものです。
曲を聴く前にイメージしたいこと
I'm willin’ は、居酒屋で店員が発する「はいよろこんで~」みたいな感じでしょうかね。雨にも雪にもめげず「ハイ喜んで」と頼み事を受け入れるのは、ドラッグと酒が好きで、積載量制限なんて無視、密輸だってお任せあれ、というなんとも無頼漢なトラックドライバーです。
ヒッチハイクの女の子を見つけると「葉っぱ(=マリファナ)、白いヤツ(=コカイン)、酒」と引き換えで乗せてやると交渉する。まるでイージー・ライダー(映画:1969年)さながらの、自由気ままな生き方を表現した3分間のロードムービーを見ているようです。アウトローはこの時代に失われつつあるアメリカ的自由の象徴。現代の価値観に見合うかはさておき、当時は多くのトラックドライバーが憧れを抱いたのだと思われます。
なお、この曲ではサビの「Weed, Whites, and Wine」のように随所にアリタレイションを多用しています。語頭を同じ音に揃えるアリタレイションと語尾を揃えるライミングの組み合わせで、一聴するとシンプルに思えても深掘りするとsongwritingの技巧が満載。そのあたりも、この曲をより深く楽しむポイントです……それではどうぞ!
歌詞と対訳
I've been warped by the rain, driven by the SNOW
雨に視界を阻まれ 吹雪にも見舞われる
I'm Drunk and Dirty, Don't you KNOW
俺は小汚い酔っ払い でもな、見知り置け
And I'm still willin'
頼みなら 喜んで受けるぜ
And I was out on the road, late at NIGHT
旅の途中の 深夜のことだ
I seen my pretty Alice in every HEADLIGHT
行き交う車のライトに照らされてるのは 愛しのアリスだ
Alice, Dallas Alice
アリスって あのダラスのアリスだよ
And I've been from Tucson to Tucumcari
ツーソンから トゥクムカリへ
Tehachapi to Tonopah
テハチャピから トノパーへ
Driven every kind of rig that's ever been MADE
今まで製造されたトレーラー 全部乗ったよ
Driven the back roads so I wouldn't get WEIGHED
裏道を行くから 積載量制限は無視だけどな
And if you give me Weed, Whites, and WINE
もしも俺に 葉っぱ 白いヤツ 酒をくれるなら
And you show me a SIGN
「合図」をよこしな
I'll be willin' to be movin'
喜んで受けるぜ 乗せてやるよ
Well, I've been kicked by the wind, robbed by the SLEET
風に煽られ みぞれに身ぐるみ剥がされ
Had my head stoved in, but I'm still on my FEET
頭蓋骨にヒビが入っても 両足は健在だ
And I'm still willin'
頼みなら 喜んで受けるぜ
I Smuggled Some Smokes and folks from Mexico
メキシコからタバコを密輸 ついでに密入国者もな
Baked by the sun every time I go to Mexico
お陰でメキシコに行くたびに 毎回日焼けするんだ
And I'm still...
それでも俺は…
And I've been from Tucson to Tucumcari
ツーソンから トゥクムカリへ
Tehachapi to Tonopah
テハチャピから トノパーへ
Driven every kind of rig that's ever been MADE
今まで製造されたトレーラー 全部乗ったよ
Driven the back roads so I wouldn't get WEIGHED
裏道を行くから 積載量制限は無視だけどな
And if you give me Weed, Whites, and WINE
もしも俺に 葉っぱ 白いヤツ 酒をくれるなら
And you show me a SIGN
「合図」をよこしな
I'll be willin' to be movin'
喜んで受けるぜ 乗せてやるよ
Dallas Alice……この曲と前後して、アメリカーナ系アーティストの複数の楽曲に同名の人物が登場します。1970年に発表したサー・ダグラス・クインテットの「Dallas Alice」、ガイ・クラークが1975年に発表した「Let Him Roll」など。架空の売春婦かグルーピーといった描かれ方ですが、語感もいいし同系統の仲間界隈で流行ったのかも?
ハイウェイを使わずに、ツーソン(アリゾナ州)、トゥクムカリ(ニューメキシコ州)、テハチャピ(カリフォルニア州)、トノパー(ネバダ州)と州をまたいで移動するのは、それぞれのエリアしか管轄しない州警察の追跡から巧みに逃れるためかもしれません。
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