楽曲について

Ghosts / written by Paul Weller
ポール・ウェラーを中心に1977年にデビューし、1982年12月の解散までイギリスで絶大な人気を誇ったロックバンド、ザ・ジャム(The Jam)の楽曲。1982年3月に発表した彼らの6作目にして最後のスタジオ・アルバム「ザ・ギフト(The Gift)」に収録されています。
パンクロックの文脈で語られることの多いザ・ジャムですが、この時期の彼らはソウル・R&Bの要素を意欲的に取り入れ、この曲もホーン・セクションを導入しつつ抑制の効いたアレンジが歌詞の内容を際立たせていて、バンドが音楽的成熟に向かっていることを感じさせます。が、同時にトリオバンドとしてのザ・ジャムの限界もポールは感じていたようです。

曲を聴く前にイメージしたいこと

イギリスの若者に圧倒的な指示を得ていたザ・ジャム。この曲の歌詞は、特に物語り仕立てにするわけでもなく、回りくどい隠喩を用いるわけでもなく、とにかく前向きに生きろ!と若者たちに向けた(そしてポール自身に向けた。当時23歳)まさに直球のメッセージとなっています。
ポール・ウェラーはその音楽と生き方が実にシンクロしていて、そのことが彼の音楽に魅了される所以です。前述の通り音楽的に成熟しきったザ・ジャムに限界を感じると、当時アルバムが全英1位を獲得し人気絶頂だったにも関わらず、1982年10月に突如解散を宣言。自分と真剣に向き合い答えを出す。一本筋が通っている彼の姿を投影しているような歌詞で、筆者のお気に入りということで選曲しました。
今でこそカントリー/アメリカンルーツ音楽に傾倒する筆者ですが、20歳頃初めて「音楽で心を揺さぶられた」という経験をしたのはこの曲でした。ザ・ジャム解散後のスタイル・カウンシル、不遇だったソロ・デビュー期を経て、今や英ロック界の重鎮。歳を取って枯れた味わいでこの曲を歌う現在のポールの姿もなかなか味わい深いです……それではどうぞ!

歌詞と対訳

Why are you frightened - can't you see that it's YOU
何を怯えているんだ それはお前だぜ
That ain't no ghost - it's a reflection of YOU
幽霊なんかじゃない 鏡に映った自分自身だ
Why do you turn away - an' keep it out of sight
なぜ正面から向き合わず 目を背けようとするのか
Oh - don't live up to your given ROLES
与えられた役割に沿って 生きるのはやめろ
There's more inside you that you won't SHOW
お前には 内に秘めた思いがあるんだろ?

But you keep it hidden just like everyone
でもお前は隠し続ける 皆がそうするように
You're scared to show you care - it'll make you vulnerable
心を開くことを恐れるから ますますお前は不安になる
So you wear that ghost around you for disguise
だからお前は 自分をごまかすために幽霊を身に纏うんだ
But there's no need just 'cos it's all we've KNOWN
でもそんな必要はない 俺達は知っているから
There's more inside you that you haven't SHOWN
お前には 内に秘めた思いがあることを

So keep on moving, moving, moving your FEET
だから自分の足で 歩け、歩け、歩き続けろ
Keep on shuf-shuf-shuffling to this ghost dance BEAT
幽霊ダンスのビートに合わせて 踊り続けろ
Just keep on walking down never ending STREETS
終わりのないこの道を 歩み続けるんだ
One day you'll walk right out of this LIFE
お前がこの人生に別れを告げる その日が来た時
And then you'll wonder why you didn't TRY
あの時なぜ挑まなかったのかと 後悔しないために

To spread some loving all AROUND
心を開いて 周りを愛そうとする時
Old fashioned causes like that still STAND
今までの古い考え方が そこに立ちはだかるだろう
Gotta rid this prejudice that ties you DOWN
お前を縛りつけるその思い込みを 取り除くんだ
How do you feel at the end of the DAY
今日一日を 終えた気分はどうだい
Just like you've walked over your own GRAVE
自分自身の墓の上を 歩いた気分だろう

So why are you frightened - can't you see that it's YOU
だから何を恐れている その幽霊はお前自身だ
At the moment there's nothing - so there's nothing to LOSE
今この瞬間何も持ってないなら 失うものも何も無い
Lift up your lonely heart and walk right on THROUGH
孤独な心を奮い立たせて 前のめりに突き進め

  • 筆者は1976年生まれなので、20歳前後にリアルタイムではなく後追いでザ・ジャムを知りました。ちょうどその同じ時期、ブリット・ポップの追い風を受けてポールはソロ・アーティストとして大復活。熱狂的なライブを赤坂ブリッツまで観に行ってモッシュしまくったのが良い思い出です。

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