All the Young Dudes 歌詞と対訳

楽曲について

All the Young Dudes / written by David Bowie
1969年にデビューした英国のロックバンド、モット・ザ・フープル。しかしヒットに恵まれず失意のうちに1972年に入って解散を決意しますが、彼らの大ファンだったデヴィッド・ボウイがその報を聞きつけ、解散を思い止めさせるべく楽曲提供を申し出ます。そうして1972年7月にシングル曲としてリリースされたのが本曲。
結果、見事に大ヒットしバンド解散の危機を救っただけでなく、ロックの殿堂のスタッフや音楽評論家たちが選出した「ロックンロールを形作った楽曲」の500曲の中にも含まれるスタンダード・ナンバーとして認知されることとなりました。ボウイによるセルフカヴァーはじめ、カヴァーバージョン多数ですが、THE YELLOW MONKEY、布袋寅泰など日本のロック・アーティストにも非常に人気が高いようです。

曲を聴く前にイメージしたいこと

創作の経緯をウィキペディアなど様々な資料で確認できますが、ボウイのアルバム「ジギー・スターダスト」収録の楽曲「Five Years」に関連付けて書いたとのことで、同曲の歌詞に登場するニュースキャスターが本曲にも出てきます。それを踏まえ、筆者は以下のプロットを設定しました。
地球滅亡まであと僅か5年。さながら北斗の拳かデビルマンさながらの黙示録の世界で、残された時間で非行や悪事をはたらく若者たち。それを「非行少年の末路」と罵るニュースキャスターに対し、それなら本物の悪事のニュース原稿をたっぷり用意してやろうじゃないか!と「すべての若き野郎ども」に呼びかける。
ロックが産業化して大味になっていく1972年にロック本来の不良っぽさ・反逆性を表現したこの曲のメッセージが、クラッシュ(「All The Young Punks」というアンサー・ソングを作っている)、オアシスへと受け継がれる英国不良ロックの精神的支柱になっている気がします。
それにしてもこの「すべての若き野郎ども」という邦題、他の翻訳が思いつかないくらい強烈ですね。本曲を扱う他の様々な和訳ブログ記事を拝見しましたが、サビの部分はどの記事も例外なくこの邦題を踏襲しておりました。私的・洋楽邦題のベスト5に入ります……それではどうぞ!

歌詞と対訳

Well, Billy rapped all night about his SUICIDE
ビリーが夜通し語るのは 自殺のことばかり
How he'd kick it in the head when he was twenty-FIVE
25歳になったらどうやって死ぬか その方法を
Speed JIVE, don't want to stay ALIVE when you're twenty-FIVE
まくしたてるのさ お前は25歳以上生き延びれるかな
And Wendy's stealing clothes from Marks & SPARKS
エム・アンド・エスで 服を万引きするウェンディ
And Freddy's got spots from ripping off the STARS
フレディは 星を剥ぎ取って痕ジミができた
from his FACE funky little boat RACE
ファンキーなボートレースならぬ「ボート・フェイス」

Television man is crazy saying we're juvenile delinquent WRECKS
狂ったニュースキャスターが あの野郎ども 非行少年の末路だと言う
Oh, Man, I need TV when I've got T.REX
じゃあ俺がテレビを観るのは T・レックスが出る時だけにするぜ
Oh brother, you guessed I'm a dude, dad
お前の言う”あの野郎”とは まさに俺のことだ

All the young DUDES, Carry the NEWS
すべての若き野郎ども ニュースを持って来い
Boogaloo DUDES, Carry the NEWS
ブーガルーの野郎ども ニュースを持って来い
All the young DUDES, Carry the NEWS
すべての若き野郎ども ニュースを持って来い
Boogaloo DUDES, Carry the NEWS
ブーガルーの野郎ども ニュースを持って来い

Now Lucy looks sweet cause he dresses like a QUEEN
ルーシーは女王のようにめかしこんで とても綺麗だが
But he can kick like a mule, it's a real mean TEAM
その”彼”の歩き方はラバみたいで 実にちぐはぐだ
But we can love, Oh yes, we can love
でも俺は愛せる 彼となら愛し合えるさ
And my brother's back at home with his Beatles and his Stones
兄貴は ビートルズとストーンズのレコードを買って帰るけど
We never got it off on that revolution stuff
あいつらの何が革命的なのか 俺達にはわからない
What a DRAG, too many SNAGS
問題だらけで かったるいだけだ

Now I've drunk a lot of WINE and I'm feeling FINE
今や俺は ワインをしこたま飲んで上機嫌
Got to race some cat to BED
猫を寝床につれていく為に 追いかけまわす
Oh is that concrete all around or is it in my HEAD?
でもここは監獄の中か それともただの妄想か?
Yeah, I'm a dude, DAD
”あの野郎”とは まさに俺のことだ

All the young DUDES, Carry the NEWS
すべての若き野郎ども ニュースを持って来い
Boogaloo DUDES, Carry the NEWS
ブーガルーの野郎ども ニュースを持って来い
All the young DUDES, Carry the NEWS
すべての若き野郎ども ニュースを持って来い
Boogaloo DUDES, Carry the NEWS
ブーガルーの野郎ども ニュースを持って来い

  • レコードでは、コーラスの部分でボーカルのイアン・ハンターが「Hey dudes, Where are You? Stand up!」とかアドリブで叫んでいますが、ライブの度にセリフが違うようですし、歌詞とも言えないので翻訳の対象にはしませんでした。

  • イギリスの衣料ブランド Marks & Spencer(略称M&S)というのがありますが、そのまま使うとクレームになるので Marks & Sparks にしたそうです。

  • spots from ripping off the stars というのがよくわからないのですが、顔に稲妻を描いているジギー・スターダストのように、顔に奇抜なメイクをすることでしょうかね? his face funky little boat race は face と race で韻を踏む、単なるイギリスの言葉遊びで特に意味はありません。

  • Boogaloo dudes の Boogaloo はラテン音楽の1ジャンルの名称ですが、これ自体に意味はなく、単にAll - Boogaloo - Carry - Dude とABCD全部使いたかっただけ、と推測しています。

  • 女装のルーシーは実は男、要はドラァグクイーンなのですが、自殺、盗み、同性愛……タブーの幕の内弁当みたいな内容は、当時の世の中では相当インパクトがあったのでは。まさにヴェルヴェット・アンダーグラウンドとセックス・ピストルズをつなぐミッシング・リンク!

  • 少し上の世代のビートルズとストーンズを「What a drag(面倒くさい)」とコケにするとは、ボウイ様たいした度胸です。この前世代にNOを突きつけるポリシーは、まもなく花開くロンドン・パンクの萌芽だったのではなかろうかと思ってしまいます。

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