楽曲について

Hickory Wind / written by Gram Parson and Bob Buchanan
カントリー・ロックの祖……という言い方も古いな。アメリカーナの先駆者グラム・パーソンズ(以下GP)が、ごく短期間在籍したザ・バーズ1968年発表のアルバム「ロデオの恋人(Sweetheart of the Rodeo)」に残した楽曲。
ザ・バーズの同僚クリス・ヒルマンはじめ、GPを知る多くの音楽仲間が彼の代表曲と認める、美しいカントリー・ワルツです。共作のボブ・ブキャナンはザ・バーズの前にGPが在籍したインターナショナル・サブマリン・バンドのメンバー。

曲を聴く前にイメージしたいこと

おだやかな曲調とはウラハラに、GP激動の人生が凝縮されたような歌詞ですね。裕福な家庭に生まれたが12歳の時に父親が自殺、ハーバード大学に進学したもののロックにのめり込みドロップアウト、この人生三回転半みたいな深い歌詞を書いたのが既に大スターだったザ・バーズのメンバーに大抜擢された22歳の頃、というのには驚きです。
その後散々バンドをかき回した挙げ句半年で脱退、次のバンド(フライング・ブリトー・ブラザーズ)やソロで成功を夢見るも鳴かず飛ばずのままドラッグに溺れ26歳で死去。そんな人生を知った上で聴いたら尚更深く響く曲ですな……それでは、どうぞ!

歌詞と対訳

In South Carolina there are many tall PINES
サウスキャロライナには 背の高い巨樹がたくさんある
I remember the oak tree that we used to CLIMB
一緒にオークの樹に登った頃を 覚えてるかい
But now when I'm lonesome, I always PRETEND
近頃僕は孤独を感じる時 寂しさを紛らわすために
That I'm getting the feel of hickory WIND
思い出してるんだ ヒッコリーの樹の息吹を

I started out younger at most EVERYTHING
いろんなことに 早くから手を出しすぎた
All the riches and pleasures, what else could life BRING?
富と快楽以外に 僕の人生は何を得たのか
But it makes me feel better each time it BEGINS
でもそんな僕を いつも心地良くしてくれるのは
Callin' me home, hickory WIND
そろそろお家に帰ろうと呼びかける あのヒッコリーの息吹

It's a hard way to find out that trouble is REAL
困難と正面から向き合うのは とてもしんどい
In a far away city, with a far away FEEL
それも知らない街でだから 尚さら気が遠くなる
But it makes me feel better each time it BEGINS
でもそんな僕を いつも心地良くしてくれるのは
Callin' me home, hickory WIND
そろそろお家に帰ろうと呼びかける あのヒッコリーの息吹
Keeps callin' me home, hickory wind
お家に帰ろうと 僕を呼び続ける あのヒッコリーの息吹

  • 1行目の pines は松そのものではなくマツ科マツ属の樹木の総称。オークもヒッコリーも威厳ある姿で神聖な雰囲気ですよね。そう、樹木も生き物。だから wind は風ではなく「息吹」というわけで。

  • ザ・バーズというビッグネームに加入して東海岸から慣れないLAに拠点を移し(もともと破滅型人間ということもあり)さぞかし不安だった心象風景が 2ndヴァースに描かれています。GPは同じテーマで「Sin City」という曲も書いていて、いずれこれも訳さねば!

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