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青年と金木犀

青年が仕事をしに家を出る、歩いていると金木犀の香りがした。

青年は金木犀が好きで、その香りが何故か少年時代によく走り回って遊んでた頃を思い出していた。

いつものように仕事に行き、懸命に働く、別に誰かに評価されるわけでもなく。

帰り道、風がふく、また金木犀の香りがした。

そしてまた昔を思い出す。戻りたいような、そうじゃないような気がしながら、なんとなくだが、気分がいい。

ただ空が夕暮れではなく、曇っていて雨が振りだしそうなのが少しがっかりな感じがする。
「夕焼けが綺麗なら最高なのにと」心の中で思う。


休日がやってくる、死んだ目をして、鍵をあけ家を出る。

1人でなにも目的なんか持たないまま向かう先は都心。

なにをするわけでもなく電車に乗る、人が大勢いる電車の中で、皆痛みや不安を抱えながら、友達と笑って話している。

下を向きながらぼーっとしていた。気が付いたら着いていた。

なにをするわけでもなく、都心のベンチに座って人混みの中を眺めている、大勢の人がいる。流行りの言葉、流行りの服、流行りの髪型をしていた。

まるでウォーリーを探せかのように見えた。

人間、唯一無二のはずなのにと、青年は少し暗い顔をした。

ぼーっと眺めている、背景は漆黒の暗闇で青年は1色を探している。

なにをどう思ったわけでもなく、若干憂鬱な気分になり家に帰る。


青年は流行ってもない詩を書き始めた。

ただもくもくと、毎日書いている。

誰かに見てもらえるわけでもないのに、楽しそうに書いている。

ろくに眠れず朝になり、いつものように仕事にいく。外はカンカンに晴れているが開かない目で働いていた。

当たり前のように休日がやってきた。

世界共通の秒数を無駄にし、また向かう先は都心。

こないだと同じ時間、同じ場所、同じベンチ座り人を眺める。

こないだと全く同じ風景を見てすこしがっかりする。

ぼーっとしながら3本目のたばこをふかし、灰が地面に落ちる。
風がふいて、灰が転がるのを見ながら、風の匂いを嗅ぐ。

色んなものが混ざった香りがした。
いい香りとは思えなかった。

また憂鬱な気分になり、何故時間を無駄にしてまで都心にいったのか、本人すらわからないまま、また詩を書く。

自分になにができるのか自問自答し。
あるのはがむしゃらな若さだけで。
世間の流れに葛藤し、このままでいいのかと言い聞かせながら書く。

気が付けば朝だ。憂鬱な顔をして家を出る。

外はこれ以上にない晴れ。心地いい風が吹く。
少年が横を通る。

何故だか懐かしい金木犀の香りがした。

憂鬱な顔が微笑みに変わり、今日も誰からも評価されることなく、ただ働きに行く。


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#初めて自分の出来事じゃないことを書いた
#いつかはもっと長い物語みたいなの
#書けるようになれたらいいな
#くそむずい
#自分の唯一お金かからない趣味
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