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Amazonで同人誌が出せない理由

「BOOTHアカウントは持って無いので、Amazonで同人誌を出して~!」という声を、友人からよく聞きます。
確かにBOOTHと言うのはどちらかと言うとデザイナ向けのサービスですので、プログラマや一般の方々になじみが無いのは仕方の無い事でしょう。

「これ以上アカウントを増やして、パスワードを覚えるのも嫌だ!」という気持ちも良く分かります。会社の同僚からも「BOOTHのアカウントを作りたくないから、同人誌を買わない」とハッキリと言われるご時世です。

で、じゃあAmazonで同人誌を売ればいいじゃないか、という事になるのですが、そうは出来ない事情があるのですよね。

出店費用

Amazonで出品する為には、出品サービスに登録して商店を開く必要があります。
https://services.amazon.co.jp/services/sell-on-amazon/fee.html
出品サービスには小口出品と大口出品の2種類があり、同人の場合は小口出品が良さそうなのですが、同人誌は出来ません。

小口出品はいわばフリマみたいなもので、Amazon公式で既に扱っている、一般の市販商品を売る用途にしか使えないのですよね。
同人の場合は自作商品を新規登録して販売する事になりますので、残念ながら大口出品者としてしか登録できません。

この時点で、毎月4900円の出費が必ず発生するようになります。
BOOTHはここは0円です。

販売手数料

さらに売るたびに、販売手数料がAmazonに徴収されます。
商品の種類によって価格は異なるのですが、書籍の場合は15%+1冊につき80円です。
https://s3.amazonaws.com/JP_AM/amazon-jp-selling-fees.pdf
例えば1000円の本なら230円、1500円の本なら305円が徴収されます。
ここはBOOTHの場合は3.6%と決まっていますから、1000円の本なら36円、1500円の本なら54円ですね。

初期費用

さらにAmazonの場合、同人誌のような得体のしれないものを無制限で売る事は許してくれません。ちゃんとISBNやJANコードを取得したお墨付き商品しか売れない規則になっています。

このISBNコードを発行する手数料は、本1種類当たり8800円です。
https://myisbn.jp/info/2018/04/getisbn/

最初の一回だけとはいえ、例えばたった20冊しか刷らないような同人誌の場合、この出費は痛いです。
BOOTHではこのような制約はありませんので、0円です。

結局、毎月どれくらい売らなきゃ赤字なの?

色々費用を見て来ましたが、結局毎月どれくらい売らなきゃ赤字なの?というのは条件によって計算が変わりますので、
●1500円の本を
●1年売って
赤字にしないにはどうすればよいか? という前提で試算してみましょう。

これは結局
●初期費用 8800円
●年間出店料 5万8800円
合計6万7600円を、12か月で回収するという逆算に落ち着きます。

1500円の本を売るとAmazonに305円徴収されるので、1195円。
この本の印刷代を500円、制作費(デザイナ代等)を200円、梱包材代を50円とすると、1冊あたり445円の利益が残ります。

67600/445=151.91。
つまり、1年で152冊、1月あたり12.7冊以上売るとようやくプラマイゼロになるのがわかると思います。
もちろん自分の執筆労賃や電気代・輸送費は計算に入れないものとします。
(実はそっちの方が大きいのですが・・・)

1種類だと出店料の分だけ効率が悪いので、1500円の本を2種類出すとしましょう。そうするとここに初期費用ISBN代の8800円が増えるだけなので、
76400/445=171.68
という計算になります。
あれ? 1年で売らなきゃいけない本の総数が172冊に増えてしまいました。
1種類あたりだと年間86冊にまで減りますが、総合計では損益分岐点に必要な本の数が増えてしまっています。

ちなみに、土田ゲーム技研はこんなに売れてません。
2020年1月の1か月間に売れたのは、たったの5冊だけです。

結論

というわけで、結論です。
Amazonで同人誌を売って赤字にしない為には、少なくとも年間200冊くらいネットで売る自信があるサークルにしましょうね、という事になります。

最低でも毎月15冊以上。そしてそれをずっと続けられる場合のみ、ね。
それでもようやくプラマイゼロ。Amazonに出さないより出した方が良い状態になっただけ。手元には1円も残りません

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うわーい、在庫が一杯だー!(泣

さらにかかる費用

実はAmazonで必要な費用はこれだけではありません。
FBAという配送代行システムを頼むと、さらに追加で一杯お金が掛かります。
https://services.amazon.co.jp/services/fulfillment-by-amazon/fee.html

配送代行料、梱包材代、保管料、そして余った場合の返送料。
どう考えてもオオアカヤですが、これを頼まない場合、自分の住所も相手の住所も筒抜けで取引をしないといけませんので、利用せざるを得ないでしょう。
もうすでに赤字確定なので詳しく試算する気も起りませんが、どう考えても赤字が雪だるま式に増える図しか見えません。

その点、BOOTHの「あんしんBOOTHパック」は、この住所隠蔽機能を安価に提供してくれているので、助かりますね。

みんな嫌がらず、BOOTHで買って貰えればと思います。


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